腟カンジダ症は、おりものが白くぽろぽろした形状になったり、陰部に強いかゆみが出たりする疾患です。これらはいずれも陰部に起こる異変のため、ついつい性行為によって感染する性病だと思いがちですが、腟カンジダ症は性病ではないというのは本当なのでしょうか?性行為によって発症する疾患ではないのでしょうか?
腟カンジダ症ってセックスしなくてもなるの?
腟カンジダ症とは、「カンジダ」という腟内の常在菌が異常に増殖することにより、陰部のかゆみやおりものの変化を引き起こす疾患です。通常、腟内は「デーデルライン桿菌」という乳酸菌の働きによって弱酸性に保たれており、カンジダ菌などの常在菌が異常に繁殖しすぎることのないよう、また、外部から入ってくる雑菌を繁殖させないようになっています。
カンジダ菌が異常に増殖してしまうのは、このデーデルライン桿菌の働きが弱まることによります。つまり、
腟カンジダ症の発症に性行為はあまり関係ないことが多く、性行為の有無に関わらず女性の約5人に1人は経験する非常にポピュラーな疾患です。
デーデルライン桿菌の働きが弱まってしまう原因はさまざまですが、主に以下のようなことが原因と考えられています。
- 風邪や過労、睡眠不足などによる免疫力の低下
- 抗生物質の投与
- 陰部の洗いすぎ
- 糖尿病や全身感染症などの疾患
- 妊娠・出産
- 抗がん剤・ステロイド剤などの投与
腟カンジダ症の発症の一番の原因は、免疫力の低下とされていて、風邪や過労、睡眠不足などによる体調不良は最もストレートに免疫力に打撃を与えるため、腟内の常在菌の存在バランスを崩してしまうので注意しましょう。
また、抗生物質の投与によってデーデルライン桿菌も同時に影響を受けてしまうと、これもやはり常在菌の存在バランスを崩し、腟カンジダ症を発症しやすくなります。
そして腟にはデーデルライン桿菌の酸性環境を始めとした自浄作用があるため、陰部を必要以上に洗いすぎてしまったり、必要のない腟洗浄をしすぎることが、腟内の常在菌のバランスを崩し腟カンジダ症を引き起こす原因となってしまうこともあります。
陰部を清潔にしておくことは腟カンジダ症を始めとする細菌性の腟炎を防ぐために重要ですが、やりすぎは禁物です。
このように、腟カンジダ症はちょっとした体調の変化によって発症してしまう疾患ですので、再発することも少なくありません。
腟カンジダ症は女性であれば誰にでも起こりうる極めて自然なものであり、特別に体が弱いわけでも、性行為が原因なわけでもありませんので、なってしまったからといって落ち込まないようにしてくださいね。
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腟カンジダ症は病院に行かなくちゃだめ?
腟カンジダ症の主な症状は、「外陰部の強いかゆみ」「白くカッテージチーズ状のおりもの」の2種類です。
かゆみが非常に強い場合は、ずきずきとした痛みを感じるようになることもあります。
そして、おりものは白く濁った状態になり、カッテージチーズの他、酒かすやヨーグルト状と表現されることもある独特の状態になります。
腟カンジダ症は再発の場合は自分で判断できることもありますが、初めての場合は特に似たような疾患と区別がつきにくいこともありますので、病院で検査を受けるのがおすすめです。
腟カンジダ症と似たような病気を以下でまとめましたので、基礎知識として参考にしてください。
疾患名 |
陰部症状 |
おりもの症状 |
腟カンジダ症 |
強いかゆみ、まれに疼痛
灼熱感、刺激感、性交疼痛など |
白く濁り、ボロボロとした酒かすやカッテージチーズ状
量が多くなる |
トリコモナス腟炎 |
強いかゆみ、灼熱感・刺激感など |
泡沫状で黄緑・異常な黄色など
強い悪臭を放ち、量が多くなる |
細菌性腟炎 |
軽度〜強いかゆみ、刺激感 |
灰色がかった色で水っぽく、量が多い
魚の腐ったような匂いがする |
性器ヘルペス |
痛がゆい、水疱やびらん(ただれ)ができるなど |
変化なし |
病院での検査は、おりものや腟内容物を採取してカンジダ菌が原因かどうか調べることができます。適切な治療を受けるためにも、自分自身の状態を知るためにも病院で検査してもらうようにしてくださいね。
腟カンジダ症は病院でどうやって治療するの?
腟カンジダ症になったときでも、症状が軽い場合は経過観察をして自然治癒するかどうか様子見することもありますが、基本的には
抗真菌薬や腟錠、軟膏、クリーム、内服薬などによって治療を行います。
一般的には、腟洗浄を行ったのち腟錠を腟深部に挿入する治療法が多いです。腟錠の挿入頻度は連日あるいは一週間ごとで、症状の度合いなどによって異なります。
治療中は陰部の清潔を保ち、通気性の良い下着を着用して湿気を好むカンジダ菌の繁殖を防ぎましょう。また、腟内の自浄作用を回復するためにも、腟内を頻繁に洗浄したり刺激性の石鹸を使うのは避けてください。
まれにパートナーに感染することもありますので、治療中の性交渉もしないようにしましょう。
もし、妊娠中に腟カンジダ症を発症すると羊水感染や産道感染を引き起こし、新生児の口腔粘膜に感染して鵞口瘡の原因となります。
鵞口瘡とは歯茎が赤く腫れて痛みが生じ、白い乳かすのようなものが歯茎や口の表面についてしまった状態です。
新生児のこうした症状を防ぐため、妊娠中に腟カンジダ症を発症した場合は速やかな治療が必要です。
何れにしても、性器周辺の異常に気づいたときや、おりものの様子がいつもと違うと感じたときは、念のため病院で検査してもらいましょう。
予防対策としてどんなことをすればいいの?
腟カンジダ症は日常的に起こりうる疾患です。ということは、逆に言えば
日常生活の中で予防対策をとることで、腟カンジダ症にかかりにくい状態にすることができるということです。
具体的には、以下のようなことに気をつけましょう。
- 免疫力の低下を防ぐ方法
-
- バランスのとれた食事と充分な睡眠をとる
- 疲労やストレスをためすぎない(適度に発散する)
- 清潔な環境を保つ方法
-
- トイレの後は前から後ろへ拭く
- 下着やタオルなど、菌がつきやすいものは毎日取り替えて清潔に保つ
- 腟内の常在菌のバランスを崩さない対策
-
- 腟内を頻繁に洗浄しないようにする
- 外陰部を石鹸などの刺激性の洗浄成分で洗いすぎない
- カンジダ菌の好む環境を作らない対策
-
- 通気性のよい下着を選ぶ
- タイツやストッキングはできるだけ避ける
- 体を締めつけるような密着タイプの衣類を避ける
- 濡れた下着や水着など、湿った衣類は使用後なるべく早く着替える
- 入浴や水泳の後は、外陰部をしっかり乾かす
- おりものシートやナプキンなどの交換はこまめに行う
おわりに:腟カンジダ症は性行為の有無ではなく、体調によって発症する
腟カンジダ症は性器の疾患なので、どうしても性病のイメージを持ちやすいですが、実際はいわゆる性病のように性行為から感染する細菌ではありません。そのため、腟カンジダ症の発症の原因は性行為ではなく、免疫力の低下などが主な原因と考えられます。
予防策としては、普段からバランスのとれた食事や充分な睡眠を心がけましょう。また、清潔を気にしすぎて陰部を洗いすぎるのも逆効果になります。やりすぎにも注意しましょう。
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