監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

性病にはクラミジアや淋病、梅毒、HIVなど様々な種類があります。
ここでは、主な性病の種類一覧と各性病の症状や原因、検査、治療法についてお伝えします。

性病の主な分類

性病は、その原因となる病原体によって主に以下のように分類されます。

性病の主な分類

細菌性・細胞内寄生菌による感染症

細菌性・細胞内寄生菌による感染症は、以下の通りです。

クラミジア感染症、淋菌感染症、梅毒、細菌性膣炎、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症などがこれに含まれます。

多くは抗生物質による治療が可能です。

ウイルス性感染症

ウイルス性感染症は、ウイルスが原因で起こる性病です。

性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIV感染症(エイズ)、B型肝炎、C型肝炎などがあります。

ウイルスの種類によっては完治が難しく、症状を抑える治療が中心となることもあります。

真菌性感染症

真菌性感染症は、真菌(カビ)の一種が原因で起こる性病です。

カンジダ症が代表的で、抗真菌薬による治療が行われます。

寄生虫・原虫性感染症

寄生虫・原虫性感染症は、寄生虫や原虫が原因で起こる性病です。

トリコモナス症などがこれにあたります。駆虫薬による治療が必要です。

性病の種類一覧

ここでは、代表的な性病について、それぞれの特徴や症状などを詳しく見ていきましょう。

クラミジア

クラミジアは、クラミジア・トラコマティスという細菌が引き起こす、日本で最も感染者数が多い性感染症です。
性器だけでなく、オーラルセックスによって咽頭(のど)にも感染します(咽頭クラミジア)。

クラミジア

症状

男性の場合、尿道のかゆみや軽い排尿痛、少量の透明な分泌物などが見られますが、約半数は無症状とされています。

女性も、おりものの増加や不正出血、下腹部痛といった症状が出ることがあるものの、約8割は自覚症状がありません。

のどに感染した場合も、痛みや腫れといった症状が出ることは稀で、ほとんどが無症状です。

放置すると

気づかないまま放置してしまうと、男性は精巣上体炎、女性は卵管炎や骨盤内炎症性疾患といった深刻な病気を引き起こし、不妊の原因になることがあります。

検査・治療

尿や性器からの分泌物、うがい液などを用いたPCR検査で診断します。
治療には、主に抗生物質の内服薬が用いられます。

淋病(淋菌感染症)

淋病、正確には淋菌感染症は、淋菌という細菌が原因の性感染症で、クラミジアと並んで感染者が多い病気です。
性器のほか、咽頭(のど)や直腸、眼などにも感染が広がることがあります。

淋病(淋菌感染症)

症状

男性の場合、感染から数日で強い排尿痛と共に、黄色く粘り気のある膿が尿道から出てくるのが典型的な症状です。
一方、女性は症状が出にくく、おりものの増加や不正出血といった軽い症状に留まるか、全く気づかないことも少なくありません。

のどに感染した場合も、風邪のような症状が出ることもありますが、無症状であることがほとんどです。

放置すると

治療しないままでいると、男性は精巣上体炎や尿道狭窄、女性は卵管炎や骨盤内炎症性疾患などを引き起こし、不妊の原因となる可能性があります。

近年、薬が効きにくい薬剤耐性菌が増えているため、早期発見と確実な治療が非常に重要です。

検査・治療

尿や分泌物、うがい液などを用いたPCR検査や培養検査で診断します。
治療は、主に抗生物質の注射または内服で行われます。

咽頭淋病

咽頭淋病は、オーラルセックスによって、淋菌が咽頭(のど)に感染した状態のことです。

咽頭淋病

症状

のどの痛みや腫れ、咳、声のかすれなど、風邪や扁桃炎に似た症状が見られることがありますが、自覚症状が全くないケースが非常に多いのが、この病気の厄介な点です。

放置すると

無症状のままパートナーに感染を広げてしまう「感染源」となるリスクがあります。

検査・治療

うがい液や、のどの粘膜を綿棒でぬぐって検査します。
のどは薬の成分が届きにくい部位であるため、より確実な治療が求められます。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

マイコプラズマやウレアプラズマといった特殊な細菌によって引き起こされる感染症です。
「クラミジアや淋病の検査では陰性だったのに、症状が治まらない」という場合に、この感染症が原因かもしれません。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

症状

男性は尿道の痛みやかゆみ、女性はおりものの異常や下腹部痛などが現れることがありますが、クラミジア同様、無症状のことも多いのが特徴です。

放置すると

男性は精巣上体炎、女性は骨盤内炎症性疾患や不妊、早産のリスクを高める可能性が指摘されています。

検査・治療

尿や分泌物、うがい液を用いたPCR検査で診断します。
治療には抗生物質の内服薬が用いられますが、薬が効かない耐性菌も報告されているため、慎重な治療が必要です。

HIV/エイズ

HIV/AIDSは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することで、体の免疫力が徐々に低下していく病気です。
免疫力が著しく低下し、特定の病気を発症した状態を「エイズ」と呼びます。

HIV-エイズ

症状の経過

感染初期に、インフルエンザのような発熱やのどの痛み、だるさが現れることがありますが、その後は数年から十数年という長い間、無症状の期間が続きます。

この間にもウイルスは体内で増え続け、免疫細胞を破壊していきます。
そして最終的にエイズを発症すると、健康な人なら問題にならないような弱い菌にも感染しやすくなってしまいます(日和見感染症)。

近年の治療

治療薬の目覚ましい進歩により、早期に発見し治療を始めれば、ウイルスの増殖を抑え、免疫力を維持することが可能になりました。
これにより、エイズの発症を防ぎ、感染していない人と変わらない生活を送ることも期待できます。

ただし、現在の医療ではウイルスを体内から完全になくす「完治」はできません。

検査・治療

血液検査で感染の有無を調べます。
治療は、複数の抗HIV薬を組み合わせて服用する多剤併用療法が基本となります。

梅毒

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因の性感染症です。

近年、若い世代を中心に感染者が急増し、社会的な問題にもなっています。
感染後の時間の経過とともに、様々な症状が現れるのが特徴です。

梅毒

症状の経過

  • 第1期(感染後 約3週間〜): 感染した場所(性器、口、肛門など)に、痛みのないしこりや潰瘍ができます。治療しなくても自然に消えるため、治ったと勘違いしがちですが、病気は体内で静かに進行しています
  • 第2期(感染後 約3ヶ月〜): 全身の皮膚や粘膜に「バラ疹」と呼ばれるピンク色の発疹などが出現します。これも治療をしなくても消えたり現れたりを繰り返します
  • 潜伏期・晩期: 症状がなくても感染している潜伏期間を経て、数年後には脳や心臓、血管などに深刻な障害を引き起こすことがあります

放置すると

上記のように病状が進行し、深刻な合併症につながる恐れがあります。

特に、妊婦さんが感染すると、お腹の赤ちゃんに感染し、重い障がい(先天梅毒)を引き起こす危険性があります。

検査・治療

血液検査で診断します。
治療は、主にペニシリン系の抗生物質を長期間にわたって服用または注射します。

ヘルペス(性器ヘルペス)

性器にできるヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが原因で、性器やその周りに痛みを伴う水ぶくれができる病気です。

ヘルペス(性器ヘルペス)

症状

初めての感染では症状が強く出ることが多く、強い痛みを伴う水ぶくれが多数でき、発熱などの全身症状が出ることもあります。

一度感染すると、ウイルスは体内の神経に潜んでしまい、風邪や疲労などで免疫力が落ちた時に再発を繰り返すのが特徴です。

完治は難しい

残念ながら、このウイルスを体内から完全に除去する方法はまだなく、症状を和らげたり、再発を抑えたりする対症療法が中心となります。

検査・治療

主に患部の状態を見て診断しますが、水ぶくれの中の液体などからウイルスを検出する検査も行います。
治療には、抗ウイルス薬の内服や塗り薬が用いられます。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の一種が原因で、性器や肛門のまわりにイボができる病気です。

尖圭コンジローマ

症状

感染から数週間〜数ヶ月後、ニワトリのトサカやカリフラワーのような、特徴的な形のイボが現れます
通常、痛みやかゆみはありません。

放置すると

自然に治ることも稀にありますが、基本的にはイボの数が増えたり、大きくなったりすることが多いため、治療が推奨されます。

なお、子宮頸がんの原因となるHPVとは型が違うため、このイボが直接がんになることはありません

検査・治療

主に医師による視診で診断します。

治療法は、塗り薬のほか、液体窒素で凍らせる治療や、電気メス・レーザーによる切除など、いくつかの選択肢があります。
治療後も再発しやすいため、根気強い通院が必要です。

カンジダ

カンジダという真菌(カビの一種)によって起こる感染症です。
この菌自体は、健康な人の体にもともと存在する常在菌です。

カンジダ

原因

風邪や疲労、抗生物質の使用、ホルモンバランスの乱れなど、何らかの理由で免疫力が落ちると、カンジダ菌が異常に増殖して症状を引き起こします。
性行為でも感染しますが、必ずしも性病とは限りません

症状

女性では、強いかゆみと共に、ヨーグルトやカッテージチーズのようなポロポロした白いおりものが増えるのが特徴です。
男性では、亀頭にかゆみや赤み、白いカスなどが見られます。

検査・治療

おりものや患部のカスを顕微鏡で調べて診断します。
治療には、抗真菌薬の膣錠やクリーム、内服薬などが用いられます。

細菌性膣炎

健康な女性の膣内は、善玉菌の働きで酸性に保たれ、雑菌の繁殖が抑えられています。
このバランスが崩れ、悪玉菌が増えることで起こるのが細菌性膣炎です。

細菌性膣炎

原因

ストレスや疲労、膣の洗いすぎなどが原因となります。
性行為がきっかけになることもあります。

症状

魚が腐ったような独特の生臭いニオイのある、灰色がかった水っぽいおりものが特徴です。

放置すると

骨盤内炎症性疾患のリスクを高めたり、妊娠中の場合は早産の原因になったりすることがあるため、注意が必要です。

検査・治療

おりものの状態やpH検査、顕微鏡検査などで診断します。
治療は、主に抗生物質の膣錠や内服薬が用いられます。

亀頭包皮炎

亀頭やそれを覆う包皮に炎症が起こる、男性によく見られる疾患です。

亀頭包皮炎

原因

細菌やカンジダ菌の感染、石鹸などによるかぶれ、下着との摩擦など、原因は様々です。
不衛生な状態や包茎が誘因となることもあります。

症状

亀頭や包皮に、赤み、腫れ、かゆみ、痛み、ただれ、膿などが見られます。
排尿時にしみることもあります。

検査・治療

多くは視診で診断しますが、原因菌を特定するために検査をすることもあります。
原因に応じて、抗生物質や抗真菌薬の塗り薬などで治療します。

日頃から清潔を保つことが、予防や再発防止につながります。

B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで起こる肝臓の病気です。
血液や体液(精液など)を介して感染するため、性行為も主要な感染経路の一つです。

B型肝炎

症状

感染後、数ヶ月の潜伏期間を経て、だるさ、食欲不振、黄疸といった急性肝炎の症状が出ることがありますが、多くは無症状のまま経過します。

放置すると

成人の感染では多くが一過性で治癒しますが、一部は感染が慢性化し、将来的に肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあります。

予防・検査・治療

B型肝炎はワクチンで予防することが可能です。
検査は血液検査で行い、治療には抗ウイルス薬などが用いられます。

C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が血液を介して感染することで起こる肝臓の病気です。
性行為による感染の可能性は、B型肝炎に比べると低いとされています。

C型肝炎

症状・特徴

感染しても自覚症状がないことがほとんどで、気づかないうちに慢性化しやすいのが特徴です。
慢性化すると、肝硬変や肝がんへと進行するリスクが高まります。

近年の治療

近年、画期的な治療薬が登場し、副作用の少ない飲み薬だけで、多くの場合、ウイルスを体内から排除し、完治が期待できるようになりました。

検査・治療

血液検査で感染の有無を調べます。
治療は、主にこの直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の内服が中心となります。

性病が疑われるときは

性病が疑われるような症状が現れた場合や、感染の可能性がある行為に心当たりがあり不安を感じる場合は、自己判断で放置したりせず、速やかに医師に相談することが何よりも大切です。

性病が疑われるときは

そのような時は、ぜひプライベートクリニック高田馬場にご相談ください。

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オンライン診療では、医師の診察から検査キットの郵送、お薬の処方までを一貫して行うことが可能です。

プライバシーにも最大限配慮した体制を整えておりますので、「病院に行くのは少し勇気がいる…」と感じる方でも、安心してご相談いただけます。

早期発見と早期治療が、ご自身の健康を守り、そして大切なパートナーへの感染拡大を防ぐために最も重要な対策です。
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