性病とは
性病(性感染症)とは、主に性行為によって感染する感染症の総称です。
喉や性器に感染し、色々な症状を認めることが特徴ですが、性病は感染していても無症状のことも多く、気づかずに他人に感染してしまうことがあります。

基本的に自然治癒することはなく、治療が必要です。
早期に治療すればほとんどの場合治癒しますが、放置していると症状が重くなったり、男女ともに不妊や流産・早産の原因にもなります。正しい知識を身につけて予防をすることが大切です。
性病の種類一覧
性病は、以下のような病気に大別されます。
- クラミジア
- 淋病(淋菌)
- 咽頭クラミジア
- 咽頭淋病(淋菌)
- マイコプラズマ・ウレアプラズマ(性器・のど)
- トリコモナス
- 梅毒
- HIV/AIDS
- カンジダ
- ヘルペス
- 一般細菌
- B型肝炎/C型肝炎
- 尖圭コンジローマ
クラミジア

クラミジアは、「クラミジア・トラコマティス」という病原体が原因の性病です。
特に、若年層で多く見られます。感染者の多くは無症状ですが、男性は尿道炎、女性はおりものの増加や下腹部痛を伴うことがあります。
治療しないと不妊症や骨盤内炎症性疾患を引き起こす恐れがあります。感染は性行為を介して広がり、抗菌薬で治療可能です。
淋病(淋菌)

淋病は、淋菌という細菌による感染症で、性行為を通じて感染します。
男性は尿道からの膿や排尿時の痛み、女性はおりものの異常や不正出血が特徴です。
症状が現れない場合も多く、放置すると男性では精巣上体炎、女性では骨盤内炎症を引き起こし、不妊につながることがあります。
抗菌薬で治療可能ですが、近年は耐性菌が問題視されています。
咽頭クラミジア

咽頭クラミジアは、「クラミジア・トラコマティス」がオーラルセックスを通じて咽頭に感染する病気です。
多くは無症状ですが、喉の痛みや違和感、軽い腫れを引き起こすことがあります。
通常の喉の感染症と区別がつきにくく、感染に気づかないことが多いため、パートナー間で感染が広がることに注意してください。
咽頭淋菌

咽頭淋病は、淋菌がオーラルセックスを介して咽頭に感染する病気です。
喉の痛みや腫れが見られることが多いですが、無症状のまま感染が進行することもあります。風邪や扁桃炎と類似の症状を呈するため、見逃されやすい感染症です。
放置すると他者に感染を広げるリスクが高まります。
マイコプラズマ・ウレアプラズマ(性器・のど)

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、クラミジアに類似した病原体で、性行為を通じて感染します。
男性は尿道炎、女性は膣炎や子宮頸管炎を引き起こすことがあり、クラミジアや淋病同様に咽頭にも感染します。症状が軽い場合や無症状のことが多いです。
特に、若年層での感染率が高く、症状が軽いため放置されることがありますが、長期的に放置すると生殖器に影響を及ぼす可能性があります。
トリコモナス

トリコモナスは、寄生虫トリコモナス・ヴァジナリスによる感染症で、主に性行為を介して感染します。
女性は泡立った黄緑色のおりものや外陰部のかゆみ、痛みが特徴的です。男性は無症状の場合が多いですが、軽い尿道炎を引き起こすことがあります。
感染を放置すると不妊症のリスクが高まるため、早期発見と治療が重要です。抗寄生虫薬で治療が可能です。
梅毒

梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌による性感染症で、主に性行為を介して感染します。
初期段階では、性器や口に無痛性の潰瘍(硬性下疳)が現れます。
進行すると全身に発疹やリンパ節の腫れが見られ、最終的には神経や心臓などにも深刻な影響を及ぼします。
治療にはペニシリンが有効で、早期に治療することで合併症を防ぐことが可能です。
HIV /AIDS

HIVは、ヒト免疫不全ウイルスの感染によって引き起こされる病気で、免疫機能が徐々に低下します。
進行するとエイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起こし、通常の感染症やがんに対する抵抗力が失われます。
性行為や血液を介して感染し、母子感染もあります。
カンジダ

カンジダは、カビの一種であるカンジダ菌による感染症で、免疫力の低下や抗生物質の使用が原因となることが多いです。
女性は白いおりものや外陰部の強いかゆみが特徴で、男性もかゆみや赤みを感じることがあります。
性行為による感染は少ないですが、パートナー間での再感染も報告されています。
抗真菌薬で簡単に治療でき、再発防止には生活習慣の改善が重要です。
ヘルペス

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症で、性器や口周りに水疱や潰瘍が現れます。
初感染時には強い痛みと発熱を伴うことが多く、再発しやすいのが特徴です。症状が消えてもウイルスは体内に潜伏し、免疫力が低下すると再発します。
治療には抗ウイルス薬が用いられますが、完全な根治は難しく、症状のコントロールが中心となります。
一般細菌

女性の細菌性膣炎、男性の亀頭包皮炎の原因となります。
細菌性膣炎は、膣内の細菌バランスが崩れ、異常なおりものや臭いが発生する病気です。性交や衛生環境の変化が原因となることが多いです。
亀頭包皮炎は、亀頭や包皮の炎症で、かゆみや赤み、腫れを伴います。
B型肝炎/C型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液を介して感染する病気です。感染すると急性肝炎を引き起こし、放置すると慢性化して肝硬変や肝がんに進行することがあります。ワクチン接種で予防可能です。
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が主に血液を介して感染します。慢性肝炎に進行しやすく、肝硬変や肝がんのリスクが高いです。治療は抗ウイルス薬が効果的ですが、予防ワクチンは存在しません。
尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる性感染症で、性器や肛門周辺にいぼ状の隆起物が現れます。
これらのいぼは痛みを伴わないことが多いですが、増殖することがあります。
治療は外用薬の塗布、難治症例では外科的切除が行われ、再発することもあります。
HPVワクチンで予防可能であり、性行為時にコンドームの使用も予防策となります。
性病の症状
性病の症状は、性器の痛みやかゆみ、膿や分泌物の増加などの陰部症状であり、
- 皮疹・発疹などの皮膚症状
- ノドの痛みや違和感などの咽頭症状
- 頭痛や発熱などの全身症状
に大別されます。

また、性病のほとんどが無症状のことも多いため、適切な予防と正しい知識を身につけることが大切です。
性病の治療方法
性病の治療は抗菌薬(抗生物質)や抗ウイルス薬を使用します。
性病は自然治癒しないので感染していた場合は適切に治療を行うことが大切です。
使用する薬剤や量・期間などは性病の種類や症状によって異なります。
自己判断ではなく、必ず医療機関を受診されるようにしてください。
性病の感染経路
性病はあらゆる性行為で感染します。
また、性行為以外でも接触や公衆トイレ・公衆浴場などで感染してしまうこともありえます。
性病の種類によって、理論的にはサウナやラブホなどの思いがけない場所での感染もあり得ます。
性病に対する知識を深めることで適切な予防方法を学びましょう。
膣性交による感染
いわゆる「本番行為」です。
全ての性病の感染経路になります。
- クラミジア
- 淋病(淋菌)
- 咽頭クラミジア
- 咽頭淋病(淋菌)
- マイコプラズマ・ウレアプラズマ
- トリコモナス
- 梅毒
- HIV/AIDS
- カンジダ
- ヘルペス
- 一般細菌
- B型肝炎/C型肝炎
- 尖圭コンジローマ
口腔性交(オーラルセックス)による感染
口腔性交(オーラルセックス)とはいわゆる「クンニ」や「フェラ」などの口を用いて行う性交類似行為です。
- 咽頭クラミジア
- 咽頭淋病
- 咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマ
- 梅毒
- ヘルペス
が感染する可能性があります。
キスによる感染
- 咽頭クラミジア
- 咽頭淋病
- 咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマ
- 梅毒
- ヘルペス
がキスにより感染する可能性があります。
性行為がなくても感染する性病・性病関連疾患
公衆トイレや公衆浴場、風呂などでの感染
- トリコモナス
- ヘルペス
は極めて稀ですが性行為以外でも、病原体との接触で感染することがあります。
性行為をしなくても発症する性病関連疾患
カンジダ
- (男性)包皮炎
- (女性)カンジダ性膣症(カンジダ性膣炎)
一般細菌
- (男性)包皮炎
- (女性)細菌性膣症(細菌性膣炎)
ストレスや体調不良など免疫が低下した際に常在菌が繁殖することで症状が出ることがあります。
血液・体液による感染
輸血や針刺しなどで
- 梅毒
- HIV/AIDS
- B型肝炎・C型肝炎
が感染する可能性があります。
母子感染
- クラミジア
- 淋病(淋菌)
- 梅毒
- HIV/AIDS
- B型肝炎・C型肝炎
性病の潜伏期間
性病の潜伏期間とは、感染してから症状が現れるまでの期間のことを言います。
ただし、多くの性病は感染しても症状が出ないこともあるので、心当たりがある場合は症状の有無に関わらず検査することが大切です。
性病は何科を受診すれば良いのか
性病が疑われる場合、泌尿器科・皮膚科・婦人科・性感染症内科などが対応可能です。
男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診するのが一般的ですが、専門の性感染症内科であればより適切な診察を受けられます。
また、オンライン診療を活用すれば、自宅から検査や治療の相談が可能です。
症状がある場合は早めの受診が重要です。
性病に関するよくある質問
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無症状でも性病に感染している可能性はありますか?
はい、多くの性病は無症状のまま進行することがあります。
特にクラミジアや淋病は無症状のことが多く、放置すると合併症のリスクが高まるため、定期的な検査が重要です。
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性病の検査や治療は保険適用されますか?
性病の検査や治療は、有症状である場合、基本的には保険診療を受けることが可能です。
ただし、保険診療の中だと検査項目や治療の融通が効かず、検査結果を知るのに再受診を求められるケースもあり、制約が多いことは意外と知られていません。
性病(性感染症内科)を取り扱う医療機関で自由診療が多いのは、上記のような制約がなく、無症状でも治療や検査をニーズに合わせて行うことができるためです。
ただし、過度に不安を煽って不要な検査を押し売りしてくるような悪徳な医療機関も散見されるので事前によく調べてから受診されるようにしてください。
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コンドームを使用すれば性病を完全に防げますか?
コンドームは多くの性病予防に有効ですが、100%防ぐことはできません。皮膚接触やオーラルセックスで感染する病気もあるためです。
オンライン診療で性病の検査や治療は受けられますか?
はい、オンライン診療では一部の性病の検査キットの手配や薬の処方が可能です。ただし、確定診断や一部の検査は来院が必要になることもあるのでまずはご相談ください。
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パートナーが性病に感染していた場合、どうすればよいですか?
性病の種類によって対応が異なりますが、原則ご自身も感染しているものとして検査や治療を行うことが基本です。
ただし、性病の種類によっては例外的なものもあるので、まずは医療機関を受診されるようにしてください。 -
性病に関する相談はどこでできますか?
医療機関(泌尿器科・婦人科・皮膚科・性感染症内科)や、オンライン診療で相談が可能です。
また、保健所でも無料相談や無料の検査を実施している場合があります。