監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

咽頭クラミジアとは

咽頭クラミジアとは

Chlamydia trachomatisの電子顕微鏡像
<参考>国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/423-chlamydia-std-intro.html

クラミジアとは性病を引き起こす病原体の一種で、ノドに感染することにより「咽頭クラミジア感染症」という性病を引き起こします。

咽頭クラミジアは無症状のことが多く、オーラルセックスでコンドームを着用する習慣がない方が多いため、クラミジアの感染拡大の原因とも考えられています。


自然治癒はしないので医療機関での治療が必須となります。

目立った症状を認めないことが多く心当たりのある方は注意が必要です。

無症状でも有症状でも、適切に治療を行えばほとんどが完治するため、適切に治療を行うことが大切です。

(※1参考)国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/423-chlamydia-std-intro.html

咽頭クラミジアの感染経路・原因

咽頭クラミジアの感染経路・原因

咽頭クラミジアの感染経路・原因

咽頭クラミジアの感染経路・原因は、オーラルセックス・ディープキスなど、口を使用した粘膜接触で感染します。

また、クラミジアを含む体液が手についた状態で目を擦ると、目に感染することもあります。

ストレスが原因かと気にされる方もいらっしゃいますが、ストレスが直接的な原因となることはありません。

妊婦の方が感染している時には、出産時に赤ちゃんにも感染することもあります。

咽頭クラミジアは心当たりなく感染するのか

全く心当たりがなく感染することはある?

日常生活での感染は基本的にはほとんどないといえます。

(文献によっては極めて稀にトイレやバスタオル、お風呂や湯船の共有など、感染するとの記載もあります)

フレンチキスでもクラミジアに感染する?

可能性はゼロではありませんが、粘膜接触がなければ感染の可能性は非常に低いと考えられます。

咽頭クラミジアの症状

咽頭クラミジアの症状

咽頭クラミジアの症状は、無症状であることが非常に多く症状がないから大丈夫とはいえません。 

有症状の場合

  • ノドの違和感、痛み
  • イガイガがずっと続く
  • 喉風邪のような症状
  • 発熱
  • 咽頭、扁桃の赤み、腫れ

などを認めます。

咽頭クラミジアに気づくタイミング

  • 不特定の方との性交渉から数日〜1週間くらい後に喉の症状が出現した
  • 喉の違和感が通常の風邪よりも長引いて続いている。
  • 風邪の症状と区別は付きにくいですが鼻水症状は認めにくい傾向にあります。

などといった症状が見られれば、咽頭クラミジアの可能性があります。

咽頭クラミジア感染による扁桃咽頭炎

<参考>
Chlamydia Trachomatis Tonsillopharyngitis
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1155/2012/736107

咽頭クラミジアに似た症状の性病

咽頭クラミジアに似た症状の性病

クラミジアに似た症状の性感染症の原因菌として

といった病原体があります。

咽頭クラミジアと共通していて無症状のことも多いことが特徴です。

「クラミジアと淋病」
「クラミジアとウレアプラズマ」など
重複して感染していることも多く、重複感染を念頭に検査や治療を行うことも大切です。

当院では重複感染を考慮した治療・処方を行っています。
お気軽にご相談ください

咽頭クラミジアを放置するとどうなるのか

咽頭クラミジアを放置するとどうなるのか

無症状の場合気づかずにパートナーに感染させてしまう可能性があります。
また、稀ではありますが重度の扁桃炎・咽頭炎を引き起こし、入院加療が必要になる場合もあります。

何よりもオーラルセックスでパートナーの性器に感染させてしまうリスクを、常に持ち続けている状態になることが問題です。
性器クラミジア感染症は不妊の原因になります。

クラミジアは自然免疫で排除はされないので必ず抗菌薬での治療が必要になります

心当たりがある際は必ず検査や治療を行うことが大切です。

咽頭クラミジアの潜伏期間

咽頭クラミジアの潜伏期間

クラミジアの潜伏期間はどれくらいか

咽頭クラミジアの症状がいつから現れるかですが、クラミジアの潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)は、1〜3週間程度といわれています。

健康状態によっては数日間で即発症することもあり得るので、上記の期間は絶対的なものではなく目安とお考えください。

無症状でも相手に感染させるのか

咽頭クラミジアは無症状であっても他人に感染させてしまう可能性があります

無症状でも菌を保有しているため、知らず知らずのうちに感染を蔓延させることがあります。

咽頭クラミジアの検査方法と検査ができる時期

咽頭クラミジアの検査方法と検査ができる時期

クラミジアの検査は感染が疑われるタイミングからすぐに行うことができます

検査方法は

① 精度の高い核酸増幅法(1-2営業日で結果判定)

の1種類があります。

核酸増幅法

精度の高い検査で郵送検査でもこの方法で検査を行っています。

メリット無症状、心当たりの性行為直後から高い精度の検査を行うことができます。
即日検査のイムノクロマト法よりも検査費用が抑えられます。
デメリット結果判定まで1~2営業日かかります。

検査別の検体採取の方法

【来院】
生理食塩水でうがいをしてうがい液で検査または咽頭粘膜を擦って検体を採取します。
【郵送】
長い綿棒で咽頭粘膜を擦って検体を採取します。

咽頭クラミジアの治療方法・お薬について

咽頭クラミジアの治療方法・お薬について

咽頭クラミジアは薬で治療できる

クラミジアは薬で治療できます

マクロライド系の抗菌薬(アジスロマイシン)を内服します。
アジスロマイシンは1度内服すると1週間効果が継続するため、飲み忘れの心配がない点に大きなメリットがあります。
通常は1回の内服でほとんどが完治しますが、再検査で陽性が認められた場合は他の抗菌薬で再治療します。

ご注意

咽頭クラミジアのお薬は、市販されていません。

咽頭クラミジアの治療で使われる「抗菌薬(抗生物質)」の処方は、医師の判断が必要です。

インターネットの通販で、「クラミジアの治療薬」として抗菌薬が販売される様子が散見されますが、お身体への安全性が不明であったり、治りきらないままになってしまう、ということも考えられます。自己判断での服用はお控えください。

咽頭クラミジアの薬は何日で効くか

薬を服用してから1週間以内にほとんど症状は改善します

咽頭クラミジア治療中に性行為はできるか

治療中の性行為は厳禁です

オーラルセックスをしなければ大丈夫かもしれないと考えられる方もいらっしゃいますが、万が一のリスクを考慮して自粛しましょう。
性行為再開は原則的に再検査で陰性が確認できてからとなります

治療後の検査

お薬を内服後2週間以上経過してから治療の効果判定の検査を推奨しています。

2週間以内に検査するとクラミジアの死骸に反応することで「偽陽性」となってしまうことがあります。

咽頭クラミジアの予防方法

咽頭クラミジアの予防方法

咽頭クラミジアを予防するためのポイント

咽頭クラミジアにかからないための予防方法として、

  • コンドームを使用すること(オーラルセックスの時も)
  • 定期的に検査を受けること
  • 不特定多数との性行為を避けること

が挙げられます。粘膜の接触機会をもたないことがポイントです。

咽頭クラミジア予防薬について

ドキシペップ(ドキシプレップ)という予防法が注目されています。

行為後72時間以内に抗菌薬を服用することで、一定割合で予防できるといわれています。
ドキシペップ(ドキシプレップ)の予防投与法については、以下で解説しています。

咽頭クラミジアに関するよくある質問

  • 咽頭クラミジアは何科を受診すればいいですか?

    咽頭クラミジアをはじめとする性感染症は、性感染症内科(性病科)や婦人科で検査・治療が受けられます。
    咽頭クラミジアの症状(咳や発熱など)は風邪とよく似ていることから、内科や耳鼻科を受診される方は多いです。
    しかしながら、内科や耳鼻科で咽頭クラミジアの検査をすることはほぼありません。

  • 自分またはパートナーが陽性だった場合どうしたらいいですか?

    いずれの場合もまずは治療することを優先します。
    パートナーが陽性・ご自身が無症状で検査を行い陰性だった場合、「偽陰性」である可能性が否定できないため治療する方が無難です。

  • お薬だけ欲しいのですが可能でしょうか?

    はい、可能です。
    適切な治療を行えばほとんどの場合完治するため、治療前後で検査を行わずにお薬だけの処方を希望される場合には、お薬処方だけの対応もしております。
    ただし、
    本当に感染しているのか?
    本当に治っているのか?
    など不確定要素が増えてしまう点については予めご了承ください。

  • 咽頭クラミジアは自然治癒しますか?

    咽頭クラミジアは自然治癒しません。
    必ず治療が必要になります。

  • クラミジアはキスでも感染しますか?

    キスでも感染する可能性は否定できません。

  • 性行為をした後に喉が痛い。これは咽頭クラミジアですか?

    検査をしないと確定的なことはいえません。
    感染リスクの高い風俗店を利用した後に発症した、など状況証拠から相対的に可能性が高そう・低そうという推測はできますが、咽頭クラミジアであるか否かの判断には検査が必要になります。
    疑わしいケースでご希望あれば検査なしでお薬の処方には対応しております。

  • リスクのある感染機会からどれくらい期間が経つと検査できますか?

    核酸増幅法であれば、心当たりの性行為直後から検査が可能です。

  • 治療期間はどれくらいかかりますか?

    概ね1度治療薬を内服すれば治癒します。
    内服2週間後以降に検査を行い、陰性であれば完治の判定になります。
    内服2週間以内で検査を行うことも可能ですが、死骸に反応して陽性判定となる「偽陽性」になる可能性もあるため、偽陽性が起こり得ない十分な期間を空けてからの検査を推奨しています。

患者数の推移・トピックス

患者数の推移・トピックス

クラミジアの感染者は年々増加しています

クラミジアは非常にポピュラーな病気で、世界中で年間120万人が感染しているといわれています。
日本でも2002年に一度ピークアウトしましたが、2016年から再び増加に転じています

<国立感染症研究所>
https://www.niid.go.jp/niid/ja/chlamydia-std-m/chlamydia-std-idwrs

クラミジアの若年層感染者が増えています

2007年には、女子高校生の13.1%男子高校生では6.7%が感染しているとの報告があり、10代の若者への感染の蔓延が懸念されています。

更に、2013年10月から2014年3月までに、全国の産科施設を受診した妊婦32万5771例を対象とした検査によれば、2.4%が感染していたと報告されています。

<参考>
高校生のクラミジア感染症の蔓延状況と予防対策
(日本化学療法学会雑誌ホームページより参照)
http://journal.chemotherapy.or.jp/detail.php?-DB=jsc&-recid=4700&-action=browse