HIV/AIDSについて

HIV/AIDSとは
HIV(正式名称:ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、病気が進行すると免疫力が著しく低下し、様々な疾患を引き起こした状態をエイズ(AIDS, 正式名称:後天性免疫不全症候群)と呼びます。
※そのため、HIV=エイズ(AIDS)ではありません。
違いとしてはHIVに感染して、その後に疾患を発症するとエイズになります。
HIV/AIDS(エイズ)は治るのか
近年、治療薬の開発が飛躍的に進み、早期に治療を開始できれば免疫力を落とすことなく、通常の生活を送ることが可能です。
かつての「不治の病」というイメージは薄れてきたものの、世界規模でみれば年間100万人の死亡者が発生している深刻な感染症なので注意が必要です。
HIVの感染経路・原因

HIV/AIDSの感染経路・原因は、
- 性行為
- 母子感染
- 血液感染(注射器のうち回しなど)
です。
HIV(エイズウイルス)感染者の血液、精液、膣分泌液に含まれるウイルスが、相手の粘膜部分(口の中、ペニス、尿道、膣、直腸など)や傷口などから感染します。
特に男性同士間性的接触(アナルセックス)は、ハイリスクといわれています。
唾液、涙、尿などの体液にはヒトに感染させるだけのウイルス量は分泌されないため、日常的な接触での感染や空気感染、食物からの感染は基本的にありません。
HIVの感染確率

HIV/AIDSの感染確率は、コンドームを使わない挿入性行為(膣性交、アナルセックス)で0.1%〜1%程度といわれています。
他の性病に比べると感染確率は相対的に低い病気ですが、クラミジアや梅毒など他の性病に感染していると粘膜に炎症が生じ、HIV/AIDSの感染確率が上がってしまいます。
<参考>
https://www.hivkensa.com/knowledge/whatis
HIVは心当たりなく感染するのか
全く心当たりがなく感染することはあるのでしょうか?
唾液、涙、尿などの体液からはHIVをヒトに感染させるだけのウイルス量は分泌されないため、日常生活で感染することは基本的にはありません。
偏見や差別をなくすためにも正確な情報を知ることが大切です。
<参考>
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/400-aids-intro.html
HIV/AIDS(エイズ)の症状

HIV/AIDSの症状は、
- 感染初期
- 無症候期
- 感染期
に分けられます。
HIV/AIDS感染の初期症状

HIVに感染後2~6週間の間に初期症状として、風邪やインフルエンザに似た何らかの症状を認めます。
以下のような具体的な症状が現れることがあります。
- 発熱(96%):高熱が出ることが多く、寒気や倦怠感を伴うこともあります。
- リンパ節の腫れ(74%):首や脇の下、鼠径部などのリンパ節が腫れ、触ると痛みを感じることがあります。
- 咽頭炎(70%):のどの痛みや腫れ、飲み込みにくさが現れることがあります。
- 皮疹(70%):体や手足に発疹が出ることがあり、かゆみを伴う場合もあります。
- 筋肉痛・関節痛(54%):全身の筋肉や関節に痛みを感じ、動かしにくくなることがあります。
- 頭痛(32%):ズキズキとした頭痛が起こることがあります。
- 下痢(32%):水っぽい便が出ることがあり、腹痛を伴うこともあります。
- 嘔気・嘔吐(27%):吐き気や実際に嘔吐することがあり、食欲が低下することもあります。
これらの症状は個人によって異なりますが、複数の症状が同時に現れることが多いです。
<参考>
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/11/106_2320/_pdf
HIV/AIDS感染後の無症候期

無症候期では、初期症状が消失し感染期まで数年から十数年の期間があります。
HIV/AIDS感染期
HIVに感染しても、すぐに症状が出るわけではなく、長い間無症状のまま経過することが多いです。
しかし、免疫力が低下すると、さまざまな症状が現れ、「AIDS(後天性免疫不全症候群)」の発症に気づくことがあります。
特に、「いきなりエイズ」と呼ばれるケースでは、HIV感染に気づかないまま進行し、初めての症状がAIDSの兆候であることもあります。
AIDS発症のサインとなる症状
以下のような症状が見られた場合、HIV感染が進行している可能性があります。
- 日常的な感染症が治りにくい
・肺炎、帯状疱疹、カンジダ症(口や喉の白いカビ)などが繰り返し発症
・長引く下痢や発熱が続く - リンパ節の腫れ
・首や脇の下、鼠径部のリンパ節が腫れ、なかなか治らない - 原因不明の体重減少
・食事量が変わらないのに体重が減少し、全身の倦怠感が続く - 口内や皮膚の異常
・口の中のただれや白い膜(カンジダ症)
・紫色や赤黒い皮膚のしこり(カポジ肉腫) - 長期間続く発熱や夜間の寝汗
・風邪とは異なり、微熱が続き寝汗をかく - 脳や神経の異常
・意識障害やしびれ、歩行障害など(進行した神経障害)
HIV/AIDS(エイズ)を放置するとどうなるか
HIV/AIDSは感染初期に風邪のような症状を認めることもありますが、その後は何事もなく数年から十数年無症状で経過をします。
感染初期に早期発見し、治療介入ができれば重症化を予防し、通常の生活を送ることが可能です。
大切なのでは疑わしい性行為があった場合は、適宜検査を実施することがとても大切です。
HIV/AIDS(エイズ)の潜伏期間

HIV/AIDSの潜伏期間はどれくらいか

感染機会から2~6週間の間で初期症状として風邪やインフルエンザのような症状を認めることがあります。
もし、疑わしい性行為から1ヶ月前後で風邪症状があった場合は検査を行うことが重要です。
無症状でも相手に感染させるのか
HIV/AIDSは、自覚症状なくパートナーやお相手に感染させてしまう可能性があります。
他の性病に比べて感染確率は低いものの、ゼロではないので症状で判断せずに、疑わしい場合は検査を行いましょう。
HIVの検査方法と検査ができる時期
HIV/AIDSは感染機会から最低でも1ヶ月、できれば2ヶ月以上空けて検査を行うことを推奨しています。
感染機会から2ヶ月以内の検査だと、ウィンドウ期間といって本当は感染しているのに結果に現れないという可能性があります。
※積極的に陽性であることを確認したい場合はウィンドウ期間中の検査も制限されるものではありません。
検査方法は
- 医療機関での精密検査(CLIA法) →1-2営業日で結果判定
- 医療機関での即日検査(イムノクロマト法) →30分ほどで結果判定
- 郵送検査(CLEIA法)→ご自宅で検体採取、検体を郵送いただき到着後1-2営業日で結果判定
の3種類があります。
検査精度にほとんど優劣はありません。
いずれの検査も第一段階のスクリーニング目的なので、スクリーニング検査で陽性判定だった場合は再検査またはエイズ拠点病院での精査を行います。
ご来院いただける場合は早めに検査結果がわかることがメリットですが、ご来院が難しい場合でも同程度の精度で郵送検査の実施が可能です。
疑わしい場合はまず検査を実施するようにしましょう。
HIV/AIDS(エイズ)の治療方法・お薬について

HIV/AIDSの治療は、抗HIV薬を早期から使用することで進行を抑制することが可能です。
HIV/AIDSの治療は、各都道府県の「エイズ拠点病院」で実施します。
スクリーニング検査で陽性判定が確認された場合は、出来るだけ早く『エイズ拠点病院』を受診するようにしましょう。
当院ではスクリーニング検査で陽性だった場合は無料で紹介状を作成しております。
【エイズ拠点病院リンク】
https://hiv-hospital.jp
<参考>
https://www.acc.ncgm.go.jp/medics/treatment/handbook/part3/sec01.html
HIV/AIDS(エイズ)を予防するためのポイント
HIV/AIDSの予防には、コンドームを使用することが最も有効で簡単な方法です。
また、近年ではPrEPというお薬を使った新しい予防方法も提唱されています。
HIV治療薬を毎日または性行為の前後に服用することでHIV/AIDSの感染リスクを99%下げる効果があるといわれています。
さらには、定期的なHIV検査は早期発見と治療開始に繋がります。
特に、複数の性的パートナーを持つ場合や、安全でない性行為がある場合には、年に1回以上の検査が推奨されます。
HIV/AIDS(エイズ)に関するよくある質問
-
感染からどのくらいで症状が認められますか?
感染して数週間で風邪のような症状を認めることがあります。
性行為の後にそのような症状が見られてご心配される方が多いようですが、当然他の疾患でも風邪のような症状は見られます。
ご安心いただくためにもまずは検査していただくことが大切です。 -
検査はいつごろからできますか?
検査方法にもよりますが、基本的には心当たりから2ヶ月後から検査が可能です。
-
自然に治ることはないのでしょうか?
無治療で自然治癒することはありません。
また、現在のところHIV/AIDSを完治させる治療はなく、発症を抑えるお薬を使用することとなります。
-
検査はどのように行いますか?
男性、女性とも血液検査を行います。
-
検査結果を知るために再度来院する必要はありますか?
Webからお知らせいたしますので、ご来院していただく必要はございません。
HIV/AIDS(エイズ)感染者数の推移
男性同性間性的接触での新規患者が70%以上
HIV感染者2022年の報告において, 男性同性間性的接触(両性間性的接触を含む)が全体の70.1%(443/632)〔日本国籍男性HIV感染者の中での同性間性的接触の割合は74.8%(385/515)〕で,その大多数は20~40代でした。
これに対し男性の異性間性的接触による感染は全体の12.8%(81/632), 日本国籍男性HIV感染者の中での異性間性的接触の割合は12.4%(64/515)であった。
日本国籍女性HIV感染者12のうち, 全例が異性間性的接触であった。

