監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

性器ヘルペスについて

性器ヘルペスとは

性器ヘルペスとは?

性器ヘルペス(以下:ヘルペス)とは単純ヘルペスウイルスの1型(HSV-1)または2型(HSV-2)
と呼ばれる病原体が陰部に感染することにより引き起こされる感染症です。

男性では3番目、女性では2番目に多い性病といわれています。

性器に痛みや排尿時痛を伴う水疱や潰瘍を形成します。

あまりの激痛で歩くことができない方もいらっしゃいます。

また、初感染の際には頭痛や発熱を引き起こすことが多いといわれています。

ヘルペスウイルスが口周りに感染すると「口唇ヘルペス」を引き起こします。

残念ながらヘルペスを完治させる治療法は確立されておらず、体調を崩したり、ストレスが溜まって免疫機能が低下すると再発します。

ヘルペスについては多くの誤解もあるため正しい知識を身につけることが大切です。

<参考>cdc 電子顕微鏡で見たヘルペスウイルス
https://phil.cdc.gov/details.aspx?pid=10231

ヘルペスの感染経路・原因

ヘルペスの感染経路・原因

ヘルペスの感染経路・原因は、セックス・オーラルセックス・アナルセックス・キスなどあらゆる性行為で感染します。

また、非常に感染力が強いため、タオルやコップの共有などでも感染する可能性があります

基本的に発症していない時には他人に感染させるリスクは限りなくゼロに近いものですが、ヘルペスウイルスとの接触が原因となるため、コンドームを使用していても完全に予防することが出来ません。

ヘルペス特有の水疱症状が認められているときはウイルス量が多く、感染させてしまう可能性が高いので性交渉自体を控えるようにしましょう。

ヘルペスは心当たりなく感染するのか

ヘルペスは心当たりなく感染するのか

全く心当たりがなく感染することはあるのでしょうか?

ヘルペスは性行為なしで、心当たりがない場合でも感染し、発症することがあります。

ヘルペスはタオルやお風呂などでも感染する可能性があります。

また、感染していても発症していない(不顕性感染)方も非常に多く、成人の半分以上はヘルペスウイルスに感染しているともいわれています。

小さい頃に感染したものが成人になってから発症することもあり得るため、心当たりがなく感染することも発症することもどちらもあるのです。

<参考>国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ta/5th-disease/392-encyclopedia/424-genital-hsv-intro.html

ヘルペスの症状

ヘルペスの症状

ヘルペスは感染していても生涯一度も発症しないことも多くあります(不顕性感染)。

症状が出現する場合は、

①急性型:感染してすぐ(数日から3週間程度)に発症する場合

②誘発型・再発型:感染してすぐは症状が無く、しばらく経過して免疫力が低下した時または2回目以降の発症

で症状の強さが異なります。

急性型

急性型は最も症状が重く、発熱や頭痛が先行し、感染部位に特徴的な水疱を激痛を伴って認めます。

排尿時痛、痛みを伴う鼠径のリンパ節腫脹、歩行困難なども認められ、まれに髄膜炎など命に関わる病気に移行することもあります。

誘発型・再発型

誘発型、再発型は、疲れやストレス、体調不良などで免疫力が低下した際にやはり特徴的な痛みを伴う水疱を認めます

急性型よりも症状が軽いことは多いものの、症状の範囲や痛みの程度の個人差も大きいので一概には言えない部分もあります。

<参考>
https://www.mymed.com/diseases-conditions/herpes-simplex-virus-type-2-genital-herpes/genital-herpes-symptoms

男性のヘルペスの症状

男のヘルペスの症状

感染してすぐ発症する急性型の場合

感染してすぐ(数日から3週間程度)に発症する急性型の場合、下記のような症状が見られます。

  • 発症すると全身に強い痛みや倦怠感がでる
  • 性器(外陰部、膣)の腫れ、痛み、かゆみ
  • 排尿時痛、歩行も困難となる
  • 発熱や頭痛などを伴うことがある
  • 水ぶくれが陰部に多発する
  • 太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴って腫れることがある

しばらくしてから発症する誘致型・再発型の場合

誘発型、再発型(感染してすぐは症状が無く、しばらく経過して免疫力が低下した時、または2回目以降の発症)の場合は、下記のような症状が見られます。

  • 急性型症状よりも比較的軽い症状
  • 再発の数日前に、腰痛が起こることがある

男性のヘルペスの症状写真

<参考>STD CENTER
https://stdcenterny.com/herpes/herpes-photos/different-stages.html

女性のヘルペス症状

女性のヘルペスの症状

感染してすぐ発症する急性型の場合

感染してすぐ(数日から3週間程度)に発症する急性型の場合、下記のような症状が見られます。

  • 発症すると全身に強い痛みや倦怠感がでる
  • 性器(外陰部、膣)の腫れ、痛み、かゆみ
  • 排尿時痛、歩行も困難となる
  • 発熱や頭痛などを伴うことがある
  • 水ぶくれが陰部に多発する
  • 太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴って腫れることがある

しばらくしてから発症する誘致型・再発型の場合

誘発型、再発型(感染してすぐは症状が無く、しばらく経過して免疫力が低下した時、または2回目以降の発症)の場合は、下記のような症状が見られます。

  • 急性型症状よりも比較的軽い症状
  • 再発の数日前に、腰痛が起こることがある

女性ヘルペスの症状写真

当院撮影資料

性器ヘルペスに似た症状の性病

性器ヘルペスに似た症状の性病

性器ヘルペスに似た症状の性病として以下のような病気があります。

①性器周辺にブツブツが見られる病気

性器周辺にブツブツが見られる病気としては

  • 梅毒
  • 尖圭コンジローマ

といった性病があります。

尖圭コンジローマとはブツブツの形状が異なるので見た目で判別可能ですが、梅毒は似たような見た目であることもあるので判別が難しいこともあります。

» 皮疹症状を引き起こす性病の比較・違いについて

②排尿時痛を引き起こす病気

排尿時痛を引き起こす病気としては

  • クラミジア
  • 淋病(淋菌)
  • マイコプラズマ・ウレアプラズマ
  • トリコモナス

といった性病があります。

ただし、ヘルペスの場合は特徴的な皮疹を伴うため、皮疹を伴わない他の病気と判別することは比較的容易です。

ヘルペスを放置するとどうなるか

ヘルペスを放置するとどうなる

症状を認めた場合は治療が必要です。

特に急性型は髄膜炎という重篤な病気に移行する可能性もあるので必ず医療機関を受診しましょう。

誘発型、再発型でも早めに治療を始めることで重症化を防ぎ、早めに改善することが期待されます。

ヘルペスで大切なのは「症状があるとき」にすぐ医療機関を受診する、ということです。

ヘルペスの潜伏期間

ヘルペスの潜伏期間

ヘルペスの潜伏期間はどれくらいか

急性型の場合、感染から数日~3週間ほどで発症します。

誘発型、再発型の場合、潜伏期間は数年、数十年と長期間にわたることもあり得ます。

したがってヘルペスに「いつ感染したか」というのはどのような状況でも確定的には分からないといえます。

無症状でも相手に感染させるのか

基本的には、症状がない時に他人に感染させる可能性はゼロに近いといわれています。

パートナーがヘルペスに感染しておらず、自分に感染歴がある場合、感染していないパートナーの100%完全な予防手段はありません。

理論的には抗ウイルス薬を内服していればより感染リスクを下げられるので、性交渉のタイミングで予防的にお薬の使用を希望される方もいらっしゃいますが、どの程度の効果があるのかエビデンスはありません。

※ご希望あればご相談ください。

性器ヘルペスの検査方法と検査ができる時期

性器ヘルペスの検査方法と検査ができる時期

性器ヘルペスの検査は誤解が多く、少しややこしいので正しい知識を学ぶことが大切です。

ヘルペスの検査は原則症状がある時に行うことを推奨しており、検査結果に関わらず臨床判断で総合的に治療を進めることが大切です。

検査方法は

  • 30分以内に結果の出るイムノクロマト法検査(当日中に結果判定、郵送検査不可)
  • 血液検査

の2種類があります。

イムノクロマト法

水疱部分から綿棒で検体を採取してヘルペスウイルスの存在を確認します。

メリット

陽性であれば、水疱症状がヘルペスによるものであると確定します。

デメリット

精度がPCRなどの検査に比べて劣るため、陰性でも「偽陰性」の可能性が否定できません。

→「その水疱がヘルペスによるものである」と確定するときに有用です。

血液検査

医療機関で採血を行います。

メリット

体の中のどこかにヘルペスウイルスがいることが分かる。

→陰性であればヘルペスに感染したことがない、感染していないと確定します。

デメリット

陽性だった場合、体のどこにヘルペスがいるのか分からない。口唇ヘルペスでも陽性になる。

成人の半数以上は不顕性感染者なので、症状があっても無くても成人の半数以上は陽性になる。

→今ある症状がヘルペスによりものかどうか確定できない。

ヘルペスは「症状が出ている時に検査をする」ことが大切で、検査結果よりも臨床的な判断で治療を行うことが最も重要です。

パートナーが性器ヘルペスを発症したので検査をしたい

パートナーが性器ヘルペスを発症したので検査をしたいというご相談をいただきますが、上記理由から自身が発症していない状態では検査を行うメリットがあまりありません

たとえパートナーが陽性、ご自身が血液検査で陰性だとしても、パートナーがいつ感染したか分からず、今後完全に予防する手段もないため建設的な情報にならないのです。

ヘルペスの治療方法・お薬について

ヘルペスの治療方法・お薬について

ヘルペスは薬で治療できる

ヘルペスは薬での治療ができます。
ただし、症状は改善してもヘルペスウイルスを完全に取り除くことはできません

発症の都度治療する必要があります。

ヘルペスの治療には、抗ウイルス薬のアシクロビルを使用します。

内服薬と外用薬があり、原則的に内服薬で加療を行います。

また、抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑えることで症状の改善が期待できますが、直接的に痛みを緩和する作用はないため、疼痛症状が強い場合は別に消炎鎮痛薬を併用します。

ご注意

ヘルペスのお薬は、市販されていません。
ヘルペスの治療で使われる「抗ウイルス薬)」の処方は、医師の判断が必要です。

インターネットの通販で、「ヘルペスの治療薬」としてアシクロビルが販売される様子が散見されますが、お身体への安全性が不明であったり、治りきらないままになってしまう、ということも考えられます。自己判断での服用はお控えください。

<参考>
国立感染研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/424-genital-hsv-intro.html

ヘルペスの薬は何日で効くか

ヘルペスの薬は何日で効くか

治療を開始して1週間以内には症状が軽快することがほとんどです。

症状の程度で追加でお薬を使用する場合もありますが、改善が思わしくない場合は自己判断ではなく、まずは我々医師にご相談ください。

性器ヘルペスの治療中に性行為はできるか

性器ヘルペスの治療中は他人に感染させてしまう可能性があるので性行為は控えてください

症状が改善して全ての水疱が瘡蓋になってから再開するようにしてください。

治療後の検査

性器ヘルペスは治療後に検査をする必要はありません。

症状で治療の効果判定を行います。

性器ヘルペスの予防方法

性器ヘルペスの予防方法

性器ヘルペスを予防するためのポイント

性器ヘルペスはコンドームを使用していても完全に予防することは困難です。

症状が出ているときは性交渉を控えるようにしてください。

また、性器ヘルペスの再発を繰り返す方だと発症の数日前から「ピリピリ」したヘルペスが出来そうな感覚を感じられるようになることがあります。

水疱ができる前から早めにお薬を使用することで、より早く症状が改善するので、「出来そうだな」という早め早めの対策もポイントです。

性器ヘルペスに関するよくある質問

ヘルペス患者数の推移

ヘルペス患者数の推移

性感染症定点医療機関数は2007年以降1,000弱でほぼ横ばいです。

男性では2021年は20代後半から40代前半が多狗、定点当たり報告数としては多くないものの、2015年以降20代前半で、2018年以降50代前半で増加傾向でした。

女性の年齢階級別定点当たり報告数は、2012年以降継続して20代後半が最も多く、定点当たり報告数としては多くないものの、40代から50代前半は増加傾向でした。

<国立感染症研究所>
https://www.niid.go.jp/niid/ja/genital-hsv-m/genital-hsv-idwrs/12087-genital-herpes-16jun.html