性病が疑われる女性の症状とは
女性の性病(性感染症)は、自覚症状が乏しい場合が多く、知らないうちに病気が進行してしまうことがあります。
また、放置すると将来の不妊症や重い後遺症の原因になることもあります。
性病が自然治癒することはほとんどありません。
性器に感染した場合は、おりものの量に異常が出たり、下腹部の痛みや性交痛、性器の水ぶくれなどが生じることがあります。
自分の症状にあてはまるものがあれば、医療機関を受診することが必要です。
以下に、代表的な性病の症状と病名を紹介していきますので、思い当たる症状がある方は必ず医療機関を受診するようにしましょう。
女性器周辺にあらわれる症状

女性が性病感染にいつ気づくかのタイミングとして、以下のような女性器まわりの異常が見られた場合は性病の可能性があります。
- おりものの異常(量が多い・色が変化・悪臭がある)
クラミジア感染症、淋菌感染症(淋病)、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症、トリコモナス感染症 - 下腹部の痛みや違和感
クラミジア感染症、淋菌感染症(淋病)、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症、トリコモナス感染症 - 性交時に痛い、性行為の時に痛い
クラミジア感染症、淋菌感染症(淋病)、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症、トリコモナス感染症、性器ヘルペス、梅毒 - 排尿する時に痛い・かゆい
クラミジア感染症、淋病、性器マイコプラズマ、マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症、トリコモナス感染症 - 性器に水ぶくれ、ブツブツができた
性器ヘルペス - 性器にしこりやいぼができた
梅毒、尖圭コンジローマ - 性器や性器のまわりがかゆい
性器ヘルペス、梅毒
全身の症状

性病になると、性器だけでなく別の場所に症状が現れることもあります。
- 喉が痛い
クラミジア感染症、淋病、咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマ - 発熱、だるさが続く
性器ヘルペス、梅毒、HIV/AIDS - 脚の付け根が腫れた、あざや発疹が出た
梅毒
上記のような症状が出ていなくても安心はできません。
ただ、性病に感染しても「自覚症状がない」ことも多いです。
気づいたら重症に…という事態を避けたければ、定期的な性病検査をおすすめします。
とくに不特定多数の人とセックスしている人は、必ず定期的にチェックしておきましょう。
感染者数が多い性病はなに?
男女どちらも感染者数が多い性病は「クラミジア感染症」と「淋菌感染症(淋病)」ですが、最近は「梅毒」の感染者数の増加が社会問題になっています。
また、「性器ヘルペス」は不顕性感染と言って気づかずに感染している方が成人の20%いるとも言われています。
それぞれどんな病気なのかみていきましょう。
クラミジア感染症

クラミジア感染症は、日本で最も感染者数が多い性病です。
特に若年層に多く、報告数の約6割が女性で10〜30代に集中しています。
感染から1〜3週間の潜伏期間を経て、おりものの異常(量が増える、黄緑色になる、悪臭がする)、下腹部の痛みや不快感、排尿時の痛みやかゆみ、性交時の痛みや出血、のどの痛み(オーラルセックスによる咽頭感染)などの症状が現れることがあります。
ただし、クラミジア感染症の約80%の女性は無症状のまま進行するといわれています。
そのため、気づかないうちに感染が広がり、不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。
特に妊娠中に感染すると、赤ちゃんに感染するリスクがあるため注意が必要です。
淋病

淋病(淋菌感染症)は、クラミジアに次いで感染者数が多い性病です。
潜伏期間は2〜7日程度で、クラミジアと同様に、おりものの異常(黄緑色の膿のような分泌物が出る)、性交時の痛みや不正出血、下腹部の痛み、のどの痛みや腫れ(オーラルセックスによる咽頭感染)などを認めます。
淋病も無症状のまま進行することがあり、約50〜70%の女性は症状に気づかないとされています。
放置すると子宮や卵管に感染が広がり、不妊や骨盤内感染症(PID)を引き起こす可能性があります。
性器ヘルペス

性器ヘルペスはヘルペスウイルスが陰部に感染することで特徴的な痛みを伴う水ぶくれができる病気です。
一度感染すると完全に身体から排除することはできず、繰り返し再発することが多いことで知られています。
また「不顕性感染」と言って、感染はしているけれど発症してない方が非常に多く、アメリカの研究では成人の20%程度が不顕性感染者というデータもあります。
梅毒

梅毒は、20〜40代の女性に感染が広まっている性病です。
感染すると「しこり」や「いぼ」ができたり、足の付け根が腫れたりします。
この段階で気づく人は少数で、3ヶ月〜3年ほど経った後に、手足にあざや発疹があらわれて気づく人が多いです。
江戸時代には「不治の病」ともいわれた危険な病気で、放置すれば死に至る可能性があります。
女性が性病と勘違いしやすい病気
性病の症状に似た見た目の変化が現れても、実際には全く別の原因によるものであることがあります。
「膣カンジダ(女性のカンジダ症)」と「細菌性膣炎」は、カビや細菌が原因で起こる炎症で、性病というよりも免疫力が低下した時などに発症する自己感染による疾患です。
フォアダイスと呼ばれる白いブツブツは、病気ではなく、生理的なものなので心配いりません。
また、女性には膣前庭乳頭腫症という白っぽい突起ができることがありますが、これも病気ではありません。

膣カンジダ(女性のカンジダ症)
膣カンジダは、免疫低下やホルモンバランスの乱れで膣内の常在菌が増殖し、かゆみやカッテージチーズ状のおりものを起こす病気です。
性病ではなく、性行為以外も原因となるため、誰にでも起こりうる疾患です。

<参考>
https://stdcenterny.com/chlamydia-vs-vaginal-yeast-infection.html
細菌性膣炎・細菌性膣症
細菌性膣炎・腟症は、膣内の常在菌が増殖し、生臭いおりものやかゆみを起こす病気です。
性行為だけでなく、ストレスや下着の締めつけ、ホルモンバランスの乱れなど、誰でも発症し得ます。
ただし、クラミジアや淋病と症状での判別は困難で、『全く性交渉の心当たりがない』状態で発症していれば、細菌性膣炎を強く疑います。

<参考>
https://www.mdedge.com/familymedicine/article/88643/womens-health/malodorous-vaginal-discharge
フォアダイス
フォアダイスは皮脂腺の正常な隆起で、性器だけでなく口唇周囲などにも見られることがあります。
これは生理的なもので治療の必要はありませんが、性病との区別がつかなければ医療機関で相談しましょう。

<参考>
https://en.wikipedia.org/wiki/Fordyce_spots
膣前庭乳頭腫症
膣前庭乳頭腫症は膣の入り口付近に無害な小さな隆起ができる状態で、炎症や感染によるものではありません。
こちらも治療の必要はありませんが、尖圭コンジローマとの見分けがつきにくいので心配であれば医療機関を受診しましょう。

<参考>
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm076056
女性が感染予防のためにできること
性感染症から身を守るためには、日頃から予防策を徹底することが重要です。
以下に感染リスクを減らすためにできることを紹介します。

コンドームを使用すること
コンドーム着用は性感染症予防に非常に有効です。
性行為(膣性交だけでなくオーラルやアナルを含む)ごとに、新しいコンドームを最初から最後まで確実に装着しましょう。
100%の防御ではありませんが、粘膜同士の直接接触を避けることで感染リスクを大幅に下げてくれます。
なお、コンドームなしでの性行為を行った場合、1回での性病感染率は30%になります。
不特定多数との性交渉は控える
性交渉の相手の人数が増えるほど感染リスクは高まります。
信頼できるパートナーとのみ性的関係を持つことでリスクを抑えられます。
また、新しいパートナーと関係を持つ前にお互いに検査を受けておくと安心です。
定期的な検査を受けること
症状がなくても、性的活動がある限り定期的に性病検査を受けることを習慣にしましょう。
年に一度はもちろん、パートナーが変わった際や妊娠を計画する前にも検査を受けておくことをおすすめします。
不安に感じたら早期に検査を受けることで、仮に感染していても重症化する前に発見・治療できます。
ワクチンを活用すること
性感染症の中にはワクチンで予防できるものもあります。
代表例がヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンで、子宮頸がんや尖圭コンジローマの原因となるHPV感染を予防できます。
日本でも定期接種化されており、適齢期の女性は積極的な接種が推奨されています。
またB型肝炎ワクチンも性感染予防に有効です。
衛生面で清潔さを心がけること
性行為前後のシャワーや、性器を清潔に保つことも基本的な予防策となります。
ただしデリケートゾーンを洗いすぎないよう注意しましょう(石鹸の使い過ぎは膣内の常在菌バランスを崩し、かえって感染しやすくなることがあります)。
また、アルコールや薬物の影響下での避妊なしの性交渉はリスクが高いため避けるのが賢明です。
女性が性病に感染するタイミング
性行為の方法によって性病の感染リスクや感染しやすい性病は変わってきます。
特に粘膜の接触がある行為では、クラミジアや淋病、梅毒、HIVなどの感染リスクが高まります。
ここでは、性行為の方法別にどのような病気が感染しやすいのかを詳しく解説します。

挿入を伴うセックス(膣性交)
膣性交では、クラミジア、淋病、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、トリコモナス、梅毒、HIV、性器ヘルペス、尖圭コンジローマの感染リスクが高くなります。
コンドームを使用することでリスクを下げることができますが、完全に防ぐことはできません。
特に、女性は膣の粘膜が広く、傷がつきやすいため、感染しやすい傾向があります。
オーラルセックス(フェラチオ・クンニリングス)
オーラルセックスでもクラミジア、淋病、マイコプラズマ・ウレアプラズマなどが感染します。
咽頭クラミジアや咽頭淋病、咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマは、喉に感染しても症状が出ないことが多く、知らないうちにパートナーへ感染させるリスクがあります。
口内炎や傷があると、梅毒の感染リスクも高まります。
アナルセックス
アナルセックスは、HIV、淋病、クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、トリコモナス、梅毒、尖圭コンジローマの感染リスクが非常に高い行為です。
肛門の粘膜は膣よりも薄く傷つきやすいため、ウイルスや細菌が侵入しやすくなります。
コンドームと潤滑剤を併用することで感染リスクを減らすことができます。
ディープキス
ディープキスでも、梅毒、咽頭クラミジア、咽頭淋病が感染する可能性があります。
特に口内炎や歯茎の出血がある場合、梅毒のリスクが高まります。
生理中の性行為
生理中は粘膜がデリケートになり、傷ができやすいため、通常よりも感染リスクが高まります。
特にHIVの感染率が上昇するといわれており、梅毒やクラミジア、淋病などの感染リスクも高くなります。
性具(ディルド・バイブレーターなど)の使用
性具を共有すると、クラミジア、淋病、HPV、ヘルペスなどの感染リスクがあります。
使用後の適切な洗浄や、性具ごとにコンドームを使用することで感染を防ぐことができます。
素股・手マン・指入れ
素股や指を使った愛撫(手マン)でも、梅毒やヘルペス、尖圭コンジローマは感染する可能性があります。
手に傷がある場合や、分泌液が付着した状態で粘膜に触れると感染のリスクが高まります。
リスクが高い行為のランキング
性病に感染しやすい性行為のリスクを高い順に並べると、以下のようになります。
1.アナルセックス(HIV・梅毒・クラミジア・淋病など)
2.膣性交(クラミジア・淋病・梅毒・HIV・尖圭コンジローマなど)
3.オーラルセックス(咽頭クラミジア・咽頭淋病・マイコプラズマ/ウレアプラズマなど)
4.ディープキス(咽頭クラミジア・咽頭淋病・梅毒など)
5.素股・指入れ(ヘルペス・梅毒・尖圭コンジローマなど)
リスクが高い行為ほど、コンドームの使用や定期的な検査が重要になります。
性病検査はどこで受ければいい?
性病の多くは抗生物質の飲み薬や注射などで治療できますが、慢性化すればそれだけ治るのも遅くなってしまいます。
慢性化を防ぐためにも、できるだけ早く検査を受けるようにしましょう。

性病検査は、保健所や性病科、泌尿器科などの医療機関で受けられますし、それほど時間がかかるものではありません。
ただ、病院に行く時間がない人や病院に行くのに抵抗がある人もいると思います。
お忙しい方や医療機関に足を運ぶことに抵抗のある方は、オンライン診療や郵送の検査キットで検査もすることも可能です。
ただし、すでに性病の症状を認めている場合は、医療機関で検査と治療を並行して進めていくことを推奨します。こちらもオンライン診療は心強い味方です。
症状が出ないこともある性病。少しでも不安があれば検査を受けて
性病の症状は性器だけでなく体のさまざまな部分に出る可能性があり、なかには症状が出ないものもあります。
放置すれば重症化して治療が長引くこともあり、女性不妊の原因にもなり得ます。
性病で病院を受診することに抵抗があるかもしれませんが、自分のためにも、パートナーのためにも、思い当たる症状がある人はできるだけ早く検査・治療を受けるようにしてください。
また、パートナーを頻繁に変えている人や不特定多数の人とセックスしている人は、定期的に検査を受けるようにしましょう。
女性の性病の症状に関してよくある質問
-
性病に感染すると必ず症状が出ますか?
いいえ、多くの性病は無症状のまま進行することがあります。
特にクラミジアは症状がないことが多く、気づかないまま感染を広げるリスクがあります。 -
性病の症状がなくても検査を受けたほうがいいですか?
はい、症状がなくても感染している可能性があります。
無症状のまま放置すると、重症化やパートナーへの感染リスクが高まるため、リスクがある場合は検査を受けましょう。 -
クラミジアや淋病は自然治癒しますか?
いいえ、自然治癒しません。
放置すると炎症が悪化し、不妊症や骨盤内感染症(PID)の原因になります。 -
性病検査はどこで受けられますか?
クリニック、オンライン診療、郵送検査キットなどで受けられます。
早期発見・早期治療が重要です。
匿名で検査可能な郵送検査も対応しているのでお気軽にご相談ください。 -
性病の検査はどのくらいの時間がかかりますか?
検査方法によりますが、即日結果が出るものから、数日〜1週間ほどかかるものまであります。
PCR検査などの高精度な検査は、結果まで数日かかります。 -
性病に感染すると、どのくらいの期間で症状が出ますか?
性病の種類によりますが、淋病やクラミジアは2〜10日、梅毒は3週間〜3ヶ月、HIVは数週間〜数ヶ月と幅があります。
潜伏期間が長いものもあり、無症状のことも多いです。 -
性病を放置するとどうなりますか?
放置すると炎症が悪化し、不妊症や骨盤内感染症、子宮頸がん(HPV感染)などのリスクが高まります。
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性病に感染すると、不妊症になることはありますか?
はい、クラミジアや淋病は子宮や卵管に炎症を引き起こし、不妊の原因になることがあります。
症状がなくても感染している可能性があるため、心当たりがあれば検査を受けましょう。 -
コンドームを使っていれば性病に感染しませんか?
コンドームは高い予防効果がありますが、完全には防げません。
皮膚接触で感染する性病(梅毒・尖圭コンジローマ・ヘルペス)は注意が必要です。 -
オーラルセックスでも性病に感染することはありますか?
はい、クラミジアや淋病、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、梅毒などはオーラルセックスでも感染する可能性があります。
フェラやクンニなら大丈夫と誤解されている方も多いので注意が必要です。 -
性病を一度治療すれば、もう感染することはありませんか?
いいえ、治療後も再感染のリスクがあります。
性病は何度でも感染するため、予防策(コンドーム使用・ワクチン接種・定期検査)を徹底し、感染リスクを減らしましょう。 -
性病に感染したら、パートナーにも検査を受けてもらうべきですか?
はい、性病はパートナー間で感染しやすいため、両者が検査を受け、必要なら治療を行うことが重要です。
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性病に感染したことをパートナーに伝えるべきですか?
はい、感染拡大を防ぎ、適切な治療を受けるためにも伝えることが重要です。
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オンライン診療で性病の検査や治療はできますか?
ほとんどの性病はオンライン診療で検査や薬の処方が可能です。
症状や状況にもよるので詳しくは診察の際にご相談ください。