監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

HIV/AIDSとは

HIV-AIDSって何?

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、病状が進むと免疫力が大きく低下し、さまざまな合併症を引き起こした状態をエイズ(AIDS: 後天性免疫不全症候群)と呼びます

かつては男性が中心の病気と考えられていましたが、近年では女性の感染率が増えてきています
本記事では、女性に特化したHIV/AIDSの特徴や感染経路、予防法などを解説します。

HIVの感染経路と女性特有のリスク要因

HIVの感染経路と女性特有のリスク要因

HIVは感染者の血液、精液、膣分泌液、母乳などを介して他者に伝染します。
特に性行為や母子感染が、女性が感染する場合の主要な経路です。

以下に、女性特有のリスク要因を説明します。

性的接触

異性との性交渉は、女性におけるHIV感染の最も一般的な経路です。

膣の粘膜はHIVが侵入しやすく、ほかの性病に感染していると粘膜が炎症を起こしてリスクがさらに高まります
特に若年層の女性は粘膜が敏感なため、男性よりも感染しやすい傾向があります。

血液を介した感染

HIVは血液を通じて感染する場合もあり、注射器の共有や、適切に消毒されていない器具を使ったタトゥーやピアスなどがリスクになります。

麻薬などを注射器で使用する男性やパートナーがいる場合は要注意です。

その他の感染経路

母子感染(出産や授乳時の感染)や医療行為による感染は対策が進んでおり、先進国では比較的少なくなっています。

しかし可能性がゼロではないため、妊娠中や授乳中の女性は特に注意が必要です。

女性に特徴的なHIV/AIDSの症状

女性に現れやすい症状

HIV/AIDS自体の症状は男女に大きな差はありませんが、女性の場合は以下のような婦人科系の症状や月経異常が現れやすい点に特徴があります。

婦人科系の症状

免疫力が低下すると、膣カンジダ症や細菌性膣炎などの感染症が繰り返し起こることがあります。
また、HIV陽性の女性は子宮頸がんのリスクが高まるとされているため、定期的な婦人科検診(子宮頸がん検診など)がとても大切です。

月経異常

HIVに感染すると、月経不順や経血量の変化、無月経などの月経異常を起こすこともあります。
これは免疫低下や体内のホルモンバランスが崩れる影響と考えられています。

男女共通に認める症状

男女共通に認める症状

HIV/AIDSの経過は大きく「感染初期」「無症候期」「感染期」の3段階に分かれます。

  • 感染初期(急性期)
    感染から2〜6週間後に、風邪やインフルエンザに似た症状(発熱、リンパ節の腫れ、咽頭炎、皮疹、筋肉痛、関節痛など)が出ることがあります。
  • 無症候期
    初期症状が落ち着いた後、数年〜十数年にわたって自覚症状がほとんどない時期が続きます。
  • 感染期(エイズ発症期)
    免疫機能が著しく低下し、日和見感染と呼ばれる弱い病原体にも感染しやすくなります。
    さまざまな合併症が現れ、命に関わる状態へ進行するリスクがあります。

HIV/AIDSの検査方法と検査ができる時期

HIV-AIDSの検査方法と検査ができる時期

HIV/AIDSは、感染機会から少なくとも1か月、できれば2か月以上経ってから検査を行うのが望ましいとされています。

理由としては、ウィンドウ期間と呼ばれる時期があり、感染していても検査で陰性に出てしまう可能性があるためです。
早期に陽性を確認したい場合や、不安が強い場合はウィンドウ期間中でも検査はできますが、確実な結果のためには時期に注意が必要です。

  • 医療機関での精密検査(CLIA法)
    1〜2営業日で判定可能
  • 医療機関での即日検査(イムノクロマト法)
    30分ほどで結果が出る
  • 郵送検査(CLEIA法)
    自宅で採血し検体を郵送、到着後1〜2営業日で判定

どの検査方法も、スクリーニングとしてはほぼ同等の精度です。

いずれの検査も第一段階のスクリーニング目的なので、スクリーニング検査で陽性判定だった場合は、再検査またはエイズ拠点病院での精査を行います。

ご来院いただける場合は早めに検査結果がわかることがメリットですが、ご来院が難しい場合でも同程度の精度で郵送検査の実施が可能です。
疑わしい場合はまず検査を実施するようにしましょう。

女性に有用なHIVの予防方法

女性に有用なHIVの予防方法

女性のHIV感染を防ぐための具体的な予防策を挙げます。

コンドームの使用

コンドームは、性的接触を通じたHIV感染を防ぐ最も有効な方法の一つです。

特に、異性間性交渉においては、男性用または女性用のコンドームを正しく使用することで感染リスクを大幅に低減させることができます。

PrEP(HIV感染予防薬)の使用

PrEP(プレップ、Pre-Exposure Prophylaxis)は、HIVに感染していない人が定期的に薬を服用することで、感染リスクを予防する方法です。

特に、HIV陽性のパートナーがいる女性や、複数のパートナーと性的関係がある場合には有効です。
PrEPは、医師の指導の下で使用されるべきであり、定期的なHIV検査と併用することが推奨されます。

母子感染の予防

妊娠中にHIVに感染していることが判明した場合、母子感染を防ぐために適切な治療を受けることが重要です。

抗HIV薬を使用し、分娩方法や授乳の選択肢を慎重に考慮することで、子供への感染リスクを大幅に低減できます。
医療従事者の指導を受けながら、妊娠・出産計画を立てることが求められます。

エイズの女性割合はどれくらいか

近年、日本では男性の感染が依然として多いものの、女性の新規報告数も増加傾向が確認されています。
特に若年層は感染リスクが高いため、複数のパートナーとの性行為がある場合は定期検査を心がけるなど、十分な注意が必要です。

2022年の新規報告数は, HIV感染者632(男性609, 女性23), AIDS患者252(男性237, 女性15)でした。

日本国籍女性について, 2022年のHIV感染者年間新規報告数, AIDS患者年間新規報告数ともに前年より増加しています。

<国立感染症研究所>
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2606-related-articles/related-articles-515/12325-524r01.html