監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

マイコプラズマ・ウレアプラズマとは

マイコプラズマ・ウレアプラズマって何?

マイコプラズマ・ウレアプラズマとは性感染症を引き起こす病原体の一種です。

あまり馴染みのない性病ですが、クラミジアと似た微生物で、症状などもクラミジアとほぼ同じです。

「性病の症状があるのでクラミジアと淋病を検査したけれど陰性だった」という際に高い確率で陽性であることが多い印象です。

クラミジア同様に、無症状のことも多く、不妊症の原因になりうるため、心当たりのある方は適切に検査・治療を行うことが大切です。

マイコプラズマは

  • マイコプラズマ・ホミニス
  • マイコプラズマ・ジェネタリウム

ウレアプラズマは

  • ウレアプラズマ・パルバム
  • ウレアプラズマ・ウレアリチカム

という2種類ずつの病原菌に細分化されます。

肺炎を引き起こすマイコプラズマは「マイコプラズマ・ニューモニアエ」というまた別の種類です。

マイコプラズマ肺炎に感染しても性病のマイコプラズマは発症しません。

マイコプラズマ・ウレアプラズマの感染経路・原因

感染経路・原因

マイコプラズマ・ウレアプラズマがクラミジアと似た病原菌であることを考慮すると、感染経路・原因はセックス・オーラルセックス・アナルセックスなどあらゆる性行為で感染し、ディープキスなどでも感染する可能性は否定できません。

また、マイコプラズマ・ウレアプラズマとも「常在菌」といって性交渉とは無関係に健常な人でも保菌しているという報告もあり、性病の原因菌か否か白黒はっきりしていない部分もあります

しかし、実際に診療をしていると尿道やおりものの症状があってマイコプラズマだけが陽性、ウレアプラズマだけが陽性ということも多く、性病として取り扱って対応しています。

マイコプラズマ・ウレアプラズマは心当たりなく感染するのか

全く心当たりがなく感染することはあるのでしょうか?

マイコプラズマ・ウレアプラズマについてはまだわかっていない事も多々あるのが現状ですが、常在菌である可能性も考慮すると性交渉とは無関係に保菌している可能性はあり得ます

マイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

マイコプラズマ・ウレアプラズマは男性・女性ともに無症状のことも多々ありますが、クラミジア同様に陰部や咽頭(ノド)に感染して症状を引き起こします。

男性のマイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

男性のマイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

男性のマイコプラズマ・ウレアプラズマの症状は、比較的軽い尿道炎症状であることが多いといえます。

ただし、無症状で感染しているケースも少なくありません。

男性におけるマイコプラズマやウレアプラズマ感染時の症状としては、

  • 排尿時に痛む、しみる
  • 尿道のかゆみや不快感
  • 透明、または乳白色の膿が出る
  • 睾丸が腫れる
  • 睾丸・股間に痛みがある

などを認めます。

男性がマイコプラズマ・ウレアプラズマ感染に気づくタイミング

  • 風俗店に行って体液(唾液を含む)の接触があった
  • パートナーに症状がある、パートナーが検査をして陽性だった
  • 不特定の方と性的な接触があった
  • 新しいパートナーができて念の為検査をしたら陽性だった

などで気付かれる方がいらっしゃいます。

女性のマイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

女性のマイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

女性のマイコプラズマ・ウレアプラズマは、感染者の大部分が無症状といわれています。

女性がマイコプラズマやウレアプラズマに感染した際には、

  • 有症状の場合、
  • 陰部の違和感や痛み・性行為痛・不正出血・おりものの量が増えた、おりものの臭いが強くなる
  • 腹部まで感染が及ぶ場合は腹痛・下腹部痛
  • 咽頭(ノド)の違和感や痛み

などを認めます。

女性がマイコプラズマ・ウレアプラズマ感染に気づくタイミング

  • 不特定の方と性的な接触があった
  • 生理前後以外でもおりものの性状がいつもと異なる
  • パートナーに症状がある、パートナーが検査をして陽性だった
  • 風俗店で勤務しており、体液(唾液を含む)の接触があった
  • 新しいパートナーができて念の為検査をしたら陽性だった

などで気付かれる方がいらっしゃいます。

咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマの症状

オーラルセックスでノドに感染している場合、ノドに違和感や痛みを認めます。

咽頭マイコプラズマ・ウレアプラズマに気づくタイミング

  • 不特定の方との性交渉から数日〜1週間くらい後に喉の症状が出現した
  • 喉の違和感が通常の風邪よりも長引いて続いている

といったタイミングで喉への感染に気づく方が多いです。

マイコプラズマ・ウレアプラズマに似た症状の性感染症

マイコプラズマ・ウレアプラズマに似た症状の性感染症

マイコプラズマ・ウレアプラズマに似た症状の性感染症の原因菌として

  • クラミジア
  • 淋病(淋菌)
  • トリコモナス

といった病原体があります。

男性の尿道炎症状、女性の陰部・おりものの症状、咽頭(ノド)の症状も概ね共通していて、無症状のケースも多い傾向があります。
性感染症の多くが不妊の原因になるので放置は厳禁です。

また、「クラミジアと淋病」「淋病とウレアプラズマ」など重複して感染しているケースも多く、重複感染を念頭に検査や治療を行うことも大切です。
当院では重複感染を考慮した治療・処方を行っています。お気軽にご相談ください。

マイコプラズマ・ウレアプラズマを放置するとどうなるか

マイコプラズマ・ウレアプラズマを放置するとどうなるか

マイコプラズマ・ウレアプラズマについては明確に分かっていないことも多いのが現状ですが、不妊の原因になり得るとの報告もあることから、クラミジアに類似した性病として取り扱うことが無難です。

女性では細菌性腟症、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、不妊症、妊婦では流早産を起こすとされています。

帯下(おりもの)異常、腟の痒み、不正性器出血、下腹部痛などの症状が起きることがありますが、クラミジアと同様、無症状の方も多く、将来の不妊症に繋がる可能性があります。妊婦では流早産の原因となることもあります。

男性の場合、炎症が慢性化すると生殖機能に影響を与え、精子の質や運動率が低下し、不妊の原因となる可能性があります。

適切に治療を行うことで陰性化することが可能です。

<参考>
日本性感染症学会
https://jssti.jp/pdf/guideline2008/02-11.pdf

<参考>
Taylor-Robinson D, Jensen JS. Mycoplasma genitalium: from Chrysalis to multicolored butterfly. Clin Microbiol Rev 2011; 24:498.

マイコプラズマ・ウレアプラズマの潜伏期間

マイコプラズマ・ウレアプラズマの潜伏期間

マイコプラズマ・ウレアプラズマの潜伏期間はどれくらいか

マイコプラズマ・ウレアプラズマの潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)は数日〜5週間程度といわれています。

健康状態によってはさらに早く即発症することもあり得るので上記の期間は絶対的なものではなく目安とお考えください。

無症状でも相手に感染させるのか

マイコプラズマ・ウレアプラズマは無症状であっても他人に感染させてしまう可能性があります

無症状でも菌を保有しているため、知らず知らずのうちに感染を蔓延させることがあるので責任感をもった行動が求められます。

マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査方法と検査ができる時期

マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査方法

マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査は、感染が疑われるタイミングからすぐに行うことができます

検査方法は精度の高い核酸増幅法(1-2営業日で結果判定)が用いられます。
来院検査でも郵送検査でも同程度の精度で検査可能です。

核酸増幅法は精度の高い検査で、郵送検査でもこの方法で検査を行っています。

メリットとしては、無症状、心当たりの性行為直後から高い精度の検査を行うことができます。
即日検査のイムノクロマト法よりも検査費用が抑えられます。
また、デメリットとしては、結果判定まで2~4営業日かかります。

部位別の検体採取の方法

【男性】
(核酸増幅法)尿を採取して検査を行います。

【女性】
膣内に細長い綿棒を挿入して膣内を擦って検体を採取します。

【ノド】
咽頭内に細長い綿棒を挿入して咽頭粘膜を擦って検体を採取します。

マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療方法・お薬について

マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療方法・お薬について

マイコプラズマ・ウレアプラズマは薬で治療できる

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、薬での治療ができます。


ただし、耐性菌が非常に多いため、使用するお薬の種類・容量について経験値のある医療機関で処方してもらう必要があります

当院ではマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)・テトラサイクリン系抗菌薬(ビブラマイシン)の内服などで治療を行っています。

アジスロマイシン・ビブラマイシンを併用することで治る確率は向上しますが、上述の通り耐性菌だと治療が長期化するケースもあります。

ご注意

マイコプラズマ・ウレアプラズマのお薬は、市販されていません。
マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療で使われる「抗菌薬(抗生物質)」の処方は、医師の判断が必要です。

インターネットの通販で、「淋病の治療薬」として抗菌薬が販売される様子が散見されますが、お身体への安全性が不明であったり、治りきらないままになってしまう、ということも考えられます。自己判断での服用はお控えください。

<参考>
サンフォード感染症治療ガイド
https://lsp-sanford.jp/sguide/aaindex2.php

マイコプラズマ・ウレアプラズマの薬は何日で効くか

お薬に対する耐性がない場合、治療後1週間以内にほとんど症状は改善します。

一方で、お薬に対して耐性化が進んでいた場合は治療が長引く場合があります。

マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療中に性行為はできるか

治療中の性行為は厳禁です。
オーラルセックスもお相手の喉に感染させる場合があるので、粘膜同士の接触を控えてください。


性行為再開は原則的に再検査で陰性が確認できてからとなります。


治療後の検査

治療後の検査と予防するためのポイント

お薬を内服後2週間以上経過してから治療の効果判定の検査を推奨しています。

2週間以内に検査するとマイコプラズマ・ウレアプラズマの死骸に反応することで「偽陽性」となってしまうことがあります。

マイコプラズマ・ウレアプラズマを予防するためのポイント

マイコプラズマ・ウレアプラズマにかからないための予防方法として、

  • コンドームを使用すること(オーラルセックスの時も)
  • 定期的に検査を受けること
  • 不特定多数との性行為を避けること

が挙げられます。粘膜の接触機会をもたないことがポイントです。

マイコプラズマ・ウレアプラズマに関するよくある質問