女性の淋病(淋菌)発症時に起こる症状

女性が淋病(淋菌)に感染すると以下のような症状を引き起こすことがあります。
<膣、子宮頸管部>
- おりものが増える
- おりものが臭う
- 不正出血
- 性行為痛(性交痛)
- 下腹部の痛み
- 陰部のかゆみ など
<腹部上行感染>
- 腹痛
- 発熱 など
<咽頭(ノド)>
- 喉の違和感・痛み
- 発熱 など
<直腸>
- 肛門周囲の痛み・違和感など
- 出血
<眼>
- 目の充血・目やに
- 目の痒み など
女性が淋病(淋菌)感染に気づくタイミング
- 生理前後以外でもおりものの性状がいつもと異なる。
- 性器に違和感や痛み・かゆみがある
- 下腹部痛がある
- 不正出血がある
- 性行為痛があつ
- 性器が臭う
- 不特定の方と性的な接触があった。
- パートナーに症状がある、パートナーが検査をして陽性だった。
- 風俗店で勤務しており、体液(唾液を含む)の接触があった。
- 新しいパートナーができて念の為検査をしたら陽性だった。
などで気付かれる方がいらっしゃいます。
ただし、感染していても発症しないで何年も気づかずに放置されてしまうことがあります。
自覚症状がなくても心当たりがあればまずは医療機関を受診しましょう。
女性の淋病(淋菌)膣・性器・おりものにあらわれるの症状

女性が淋病(淋菌)に感染するとおりものの量が増えたり、生臭いにおいが強くなったりすることがあります。
おりものの性状には個人差があり、乳白色でドロドロしていることが多い傾向にありますが、緑色であったり透明でサラサラすることもあります。
また、陰部の痒みや痛み、不正出血や下腹部痛などを認める場合もあります。
淋病(淋菌)は放置していると不妊症の原因にもなるので、疑わしい場合は検査・治療を行うことが大切です。
淋病(淋菌)感染時の膣・性器・おりものの症状写真・画像

淋病感染時の白色のおりもの

淋病に感染していた時のおりもの
<参照>
https://stdcenterny.com/gonorrhea-vs-bv.html
膣・性器への淋病(淋菌)感染経路

セックス・オーラルセックス(フェラ・クンニ)など、あらゆる性行為が女性が淋病(淋菌)に感染する原因の可能性になります。
心当たりなく感染するのか
全く心当たりがなく感染することはある?
日常生活での感染は基本的にはほとんどないといえます。
(文献によっては極めて稀にトイレやバスタオル、お風呂や湯船の共有など、感染するとの記載もあります)
女性の膣・性器淋病(淋菌)の潜伏期間

女性において、淋病(淋菌)の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)は、数日〜1週間程度といわれています。
健康状態によっては即発症することもあり得るので、上記の期間は絶対的なものではなく目安とお考えください。
女性は無症状でも相手に感染させるのか
淋病(淋菌)は無症状であっても他人に感染させてしまう可能性があります。
無症状でも菌を保有しているため、知らず知らずのうちに感染を蔓延させることがあります。
妊婦が淋病(淋菌)に感染していると

妊婦が淋病(淋菌)に感染した経膣分娩をすると赤ちゃんにも感染して結膜炎や肺炎を来す可能性があります。
このような母子感染を予防するためには妊活前の予防的検査が大切です。
万が一、妊婦健診で陽性が確認された場合は妊娠中でも治療を行います。
女性が膣・性器淋病(淋菌)感染を予防するためには
女性が淋病(淋菌)感染を予防するにはコンドームを使用することがとても大切です。
また、不特定の方との性交渉を避ける、疑わしい心当たりがある場合は定期的に検査を行うことを心がけましょう。
女性の膣・性器淋病(淋菌)と似た症状の病気

淋病(淋菌)に似た症状の性感染症の原因菌として
といった病原体があります。
全て淋病(淋菌)と共通していて無症状のことも多いことが特徴です。
「淋病(淋菌)とクラミジア」
「淋病(淋菌)とウレアプラズマ」など
重複して感染していることも多く、重複感染を念頭に検査や治療を行うことも大切です。
当院では重複感染を考慮した治療・処方を行っています。
お気軽にご相談ください。
女性における咽頭淋病(淋菌)の症状

女性における咽頭淋病(淋菌)の症状
咽頭淋病(淋菌)の症状は、無症状であることが非常に多く、症状がないから大丈夫とはいえません。
有症状の場合
- ノドの違和感、痛み
- イガイガがずっと続く
- 喉風邪のような症状
- 発熱
- 咽頭、扁桃の赤み、腫れ
などを認めます。
女性にあらわれた咽頭淋病(淋菌)の症状写真・画像
ほとんど所見がないことも多く、見た目だけで淋病(淋菌)感染を判断するのは困難です。
【写真】咽頭淋病(淋菌)感染による扁桃咽頭炎

<参考>
https://stdcenterny.com/articles/std-sore-throat.html
女性における咽頭淋病(淋菌)の感染経路
オーラルセックス(フェラチオ・クンニ)などで感染します。
ディープキスでも多量に病原体との接触があれば感染する可能性はあります。
このような行為をした後に先述の症状の疑いがあると感じたら、咽頭淋病(淋菌)の検査を受けましょう。
女性における目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)の症状

淋病(淋菌)が目・眼・結膜に感染すると充血したり目やにが出てくることがあります。
成人型の淋病(淋菌)性結膜炎は感染から1週間ほどで発症します。
進行すると角膜の損傷や視力の低下、失明を招く可能性がありますが、日本では近年ほとんど新規患者は確認されていません。
女性における目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)の症状写真・画像
【写真】結膜の充血を認めます。※写真は男性の症例

女性における目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)の感染経路
成人の場合は性行為(性交渉中に体液が目に入った、目を擦ったなど)による接触が原因になります。
女性における直腸淋病(淋菌)(肛門淋病(淋菌))の症状

軽い下痢、肛門周囲の痛み、出血を認めることがありますが、70%は無症状といわれています。
女性における直腸淋病(淋菌)の感染経路
オーラルセックス、アナルセックスのほか、尿や膣からの分泌液が自身の身体をつたって肛門・直腸へ流入することでも感染(自己感染)する可能性があります。
女性の淋病(淋菌)感染で引き起こされる病気

女性が淋病(淋菌)の感染に気づかず放置してしまうと、子宮頸管からお腹の上に感染が拡がっていきます。
これを「上行感染」と呼び、下腹部・上腹部と炎症を起こすことで腹部の痛みを引き起こし、最終的には肝臓周囲にまで感染が及ぶことがあります。
子宮頸管炎
膣の奥、子宮の入口部分である子宮頸管に炎症を起こす病気です。ありものが増える、不正出血、性行為痛などの症状を認めます。
子宮内膜炎、卵管炎、卵巣炎、骨盤腹膜炎
膣から子宮、そして卵巣、お腹の中まで淋病(淋菌)の感染が上っていくと腹痛などの症状が目立つようになります。特に卵巣部まで炎症が波及することが不妊の原因になり得るので注意が必要です。
肝周囲炎
さらに上行まで淋病(淋菌)が感染を拡大することで肝臓周囲まで炎症が広がります。専門用語でフィッツヒューカーティス症候群と呼びます。
直腸炎
淋病(淋菌)がアナルセックスなどで肛門から直腸粘膜に感染すると直腸炎を引き起こします。症状がないことが多いですが、肛門痛や下血などの症状を認めることがあります。
咽頭炎・扁桃炎
淋病(淋菌)が喉の粘膜に感染すると咽頭炎や扁桃炎を引き起こします。有症状の場合は、風邪のような症状が続くことが多い傾向にあります。
女性の淋病(淋菌) 検査方法

淋病(淋菌)の検査は感染が疑われるタイミングからすぐに行うことができます。
検査方法は
① 精度の高い核酸増幅法(1-2営業日で結果判定)
② 30分以内に結果の出るイムノクロマト法検査(当日中に結果判定)
の2種類があります。
核酸増幅法
精度の高い検査で郵送検査でもこの方法で検査を行っています。
メリット | 無症状、心当たりの性行為直後から高い精度の検査を行うことができます。 即日検査のイムノクロマト法よりも検査費用が抑えられます。 |
デメリット | 結果判定まで1~2営業日かかります。 |
イムノクロマト法
ご来院いただき30分で即日結果が確認できます。
メリット | 当日ご来院いただければ即日30分以内で結果をお伝えできます。 |
デメリット | 核酸増幅法に比べて検査精度が低く、特に陰性判定を目的で行う場合には推奨していません。 |
部位別の検体採取の方法
【女性】
膣内に細長い綿棒を挿入して膣内を擦って検体を採取します。
【ノド】
生理食塩水でうがいをしてうがい液で検査または咽頭粘膜をし擦って検体を採取します。
いずれも採取に痛みは伴いません。
女性の淋病(淋菌)治療方法

淋病(淋菌)は薬で治療できる
ただし、耐性菌が多いため、使用するお薬の種類・容量について、経験値のある医療機関で処方してもらう必要があります。
特に日本ではニューキノロン系の「クラビット」が尿道炎症状に対して乱用されており、治療効果が期待できにくい状況です。
当院では、主にセフェム系抗菌薬の筋肉注射・点滴、またはマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)テトラサイクリン系抗菌薬(ビブラマイシン)の内服などで治療を行っています。
セフェム系抗菌薬の筋肉注射は淋病に対して高い治療効果が期待できるメリットがある反面、淋病以外の性病には効果が期待できず、実際にご来院いただく必要があることがデメリットです。
アジスロマイシンは1度内服すると1週間効果が継続するため、飲み忘れの心配がない点に大きなメリットがあり、クラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマなどの性病にも効果が期待できます。
ただし、淋病治療に必要な容量を間違えると効果が得られないため注意が必要です。
ご注意
咽頭淋病のお薬は、市販されていません。
咽頭淋病の治療で使われる「抗菌薬(抗生物質)」の処方は、医師の判断が必要です。
インターネットの通販で、「淋病の治療薬」として抗菌薬が販売される様子が散見されますが、お身体への安全性が不明であったり、治りきらないままになってしまう、ということも考えられます。自己判断での服用はお控えください。
淋病(淋菌)の薬は何日で効くか

お薬で治療してから1週間以内に概ね症状は改善します。
一方で、感染していることに気づかず放置してしまっていた場合、淋病(淋菌)がお腹の中に広がってしまっている時には治療が長引く場合があります。
淋病(淋菌)治療中に性行為はできるか
治療中の性行為は厳禁です。
性行為再開は原則的に再検査で陰性が確認できてからとなります。
治療後の検査
お薬で治療後2週間以上経過してから治療の効果判定の検査を推奨しています。
2週間以内に検査すると淋病(淋菌)の死骸に反応することで「偽陽性」となってしまうことがあります。
女性の淋病(淋菌)患者数の推移・トピックス

若い女性で淋病(淋菌)の感染者数は増えている
女性の年齢階級別定点当たり報告数は2010年以降、20代前半が最多でした。
また、多くの年齢階級で横ばいから減少傾向でしたが、2017年から20代前半で、2021年から全ての年齢階級で増加してきていいます。


<国立感染症研究所>
https://www.niid.go.jp/niid/ja/gonorrhea-m/gonorrhea-idwrs/12089-gonorrhoeae-16jun.html
女性から淋病(淋菌)の症状に関してよくある質問
-
旦那(夫)としか性行為をしていないのに淋病(淋菌)に感染しました、旦那(夫)は不倫・浮気をしているのでしょうか?
トイレやタオルの共有など日常生活で淋病(淋菌)に感染する可能性は極めて低く、パートナーの不貞は否定できません。
ただし、ご自身が自覚症状なく長期間感染している(以前のパートナーからうつされていた)可能性もあり得るので事実確認は慎重に行いましょう。 -
淋病(淋菌)はストレスが原因で発症することはありますか?
ストレスが直接的な原因で淋病(淋菌)を発症することはありませんが、ストレスで免疫力が低下することで淋病(淋菌)に感染しやすい状況にはなり得ます。
基本的にはコンドームの使用が最善の予防策ですが、ストレスを含めて体調がすぐれない時の性行為は控えるようにしましょう。 -
感染からどのくらいで症状が認められますか?
通常発症には数日~1週間程度かかりますが、女性では無症状のことが多いのも淋病(淋菌)の特徴です。
-
検査はいつごろからできますか?
感染の機会からすぐに調べられます。
-
自然治癒することはないのでしょうか?
淋病(淋菌)は自然治癒しないため、必ずお薬で治療する必要があります。
-
治療中に性交渉はできますか?
感染を拡げる可能性があるため、淋病(淋菌)の治療中は性交渉はお控えください。
-
コンドームを使用すれば、治療中でも性交渉しても大丈夫ですか?
治療中の性交渉は感染リスクがあるので推奨できません。
できるだけ治療の効果判定の検査を実施して陰性が確認されてからの性交渉は再開してください。 -
治療中、キスだけであれば問題ありませんか?
キスや飲み回しなどの唾液を介した感染リスクは極めて低いですが、感染のリスクが全くないわけではないので治療の効果判定の検査で陰性が確認されるまでは控えていただいた方が無難です。
-
淋病(淋菌)治療中に性行為してしまったら、どうすればよいでしょうか?
治療中の性行為は相手に感染させるリスクを孕んでいるので控えてください。
もし行ってしまった場合は再度追加でお薬を使用されるか適切なタイミングでパートナー共に再検査をしていただくことを推奨します。 -
検査結果を知るために再度来院する必要はありますか?
Webからお知らせいたしますので、ご来院していただく必要はございません。
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治療をしましたが完治していない気がします
再検査にて陰性であることを確認できます。
症状が緩和されない場合も含め、治療終了後に改めて再検査にお越しください。 -
パートナーが感染していたためお薬の処方だけしてほしいのですが可能ですか?
医師が診察させていただいた上で問題なければお薬のみ処方することも可能です。
参考文献
厚生労働省ホームページ(性感染症)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou
国立感染症研究所所ホームページ(性器淋病(淋菌)感染症とは)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/chlamydia-std.html
日本性感染症学会(性感染症 診断・治療 ガイドライン)
https://jssti.jp/guideline_c.html