男性の淋病(淋菌)発症時に起こる症状

男性が淋病(淋菌)に感染すると部位によって様々な症状を引き起こします。
<尿道・精巣>
- 尿道の違和感・痛み・かゆみ
- 尿道から乳白色のドロドロした膿が出る
- 排膿による性器周囲の臭い
- 睾丸(金玉)の痛み・違和感
- 排尿時の痛み
- 発熱 など
<咽頭(ノド)>
- 喉の違和感・痛み
- 発熱 など
<直腸>
- 肛門周囲の痛み・違和感など
- 出血
<眼>
- 目の充血・目やに・目の痒み など
男性が淋病(淋菌)感染に気づくタイミング
- 風俗店に行って体液(唾液を含む)の接触があった。
- 性器に違和感や痛み・かゆみがある
- 尿道から白い膿が出る
- 性器が臭う
- パートナーに症状がある、パートナーが検査をして陽性だった。
- 不特定の方と性的な接触があった。
- 性交渉の後から風邪のような症状が続く
- 新しいパートナーができて念の為検査をしたら陽性だった。
などで気付かれる方がいらっしゃいます。
ただし、感染していても発症しないで何年も気づかずに放置されてしまうことがあります。
自覚症状がなくても心当たりがあればまずは医療機関を受診しましょう。
尿道や男性器にあらわれる淋病(淋菌)の症状

男性の尿道や性器にあらわれる淋病(淋菌)の症状
男性が淋病(淋菌)に感染すると比較的症状が出やすく、有症状の場合は、尿道の痛みや排尿時痛や尿道からドロドロした乳白色の膿が出てくることが特徴的です。
ただし、自覚症状がなく、無症状のこともあるので注意が必要です。
淋病(淋菌)は放置していると尿道から体の奥に侵入し、前立腺や精巣へ感染を拡大します。
精巣周囲に感染することで精管狭窄や無精子症など、不妊症の原因にもなります。
疑わしい場合は検査・治療を行うことが大切です。
男性の尿道や性器にあらわれる淋病(淋菌)の写真・画像

淋病(淋菌)感染に特徴的なドロドロした乳白色の膿が尿道から出ている
https://stdcenterny.com/gonorrhea-vs-chlamydia.html

少し乳白色の膿が出てくる
(写真参照)
『アトラスでみる 外陰部疾患プライベートパーツの診かた』
男性の尿道や性器淋病(淋菌)の感染経路・原因

セックス・アナルセックス・オーラルセックス(フェラ・クンニ)など、あらゆる性行為で感染する可能性があります。
心当たりなく感染するのか
全く心当たりがなく感染することはある?
日常生活での感染は基本的にはほとんどないといえます。
(文献によっては極めて稀にトイレやバスタオル、お風呂や湯船の共有など、感染するとの記載もあります)
男性の尿道や性器淋病(淋菌)の潜伏期間

男性の淋病(淋菌)の潜伏期間はどれくらいか
淋病(淋菌)の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)は、数日〜1週間程度といわれています。
健康状態によっては即発症することもあり得るので、上記の期間は絶対的なものではなく目安とお考えください。
男性は無症状でも相手に感染させるのか
淋病(淋菌)は無症状であっても他人に感染させてしまう可能性があります。
無症状でも菌を保有しているため、知らず知らずのうちに感染を蔓延させることがあります。
男性における咽頭淋病(淋菌)
男性における咽頭淋病(淋菌)の症状

咽頭淋病(淋菌)の症状は、無症状であることが非常に多く、症状がないから大丈夫とはいえません。
有症状の場合
- ノドの違和感、痛み
- イガイガがずっと続く
- 喉風邪のような症状
- 発熱
- 咽頭、扁桃の赤み、腫れ
などを認めます。
男性にあらわれる咽頭淋病(淋菌)の写真・画像
ほとんど所見がないことも多く、見た目だけで淋病(淋菌)感染を判断するのは困難です。
【写真】咽頭淋病(淋菌)感染による扁桃咽頭炎

<参考>
https://stdcenterny.com/articles/std-sore-throat.html
男性の咽頭淋病(淋菌)の感染経路
オーラルセックス(フェラ・クンニ)などで感染します。
キスでも多量に病原体との接触があれば感染する可能性はあります。
男性における目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)

男性にあらわれる目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)の症状
淋病(淋菌)が目・眼・結膜に感染すると充血したり目やにが出てくることがあります。
成人型の淋病(淋菌)性結膜炎は感染から1週間ほどで発症します。
男性の目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)の写真・画像
【写真】膿性分泌物で目が開けにくい状態。

男性の目・眼・結膜淋病(淋菌)(淋病(淋菌)性結膜炎)の感染経路
成人の場合は性行為による接触が原因になります。
男性における直腸淋病(淋菌)

男性における直腸淋病(淋菌)の症状
軽い下痢、肛門周囲の痛み、出血を認めることがありますが、70%は無症状といわれています。
男性における直腸淋病(淋菌)の感染経路
オーラルセックス、アナルセックスのほか、尿からの分泌液が直腸へ流入することでも感染する可能性があります。
男性の淋病(淋菌)感染で引き起こされる病気

尿道炎
尿道(おしっこの通り道)に病原体が感染することで炎症を起こし、痛みや膿の分泌などを引き起こす病気を尿道炎と呼びます
精巣上体炎
睾丸の中にある「精巣上体」という組織で炎症を起こす病気を精巣上体炎と呼びます。精巣上体炎が長期間放置されることで不妊の原因になることがあります。
前立腺炎
膀胱の直下にある「前立腺」という臓器に炎症を起こす病気を前立腺炎と呼びます。前立腺まで感染をすると排尿時痛や頻尿などの症状を認めます。
直腸炎
淋病(淋菌)がアナルセックスなどで肛門から直腸粘膜に感染すると直腸炎を引き起こします。症状がないことが多いですが、肛門痛や下血などの症状を認めることがあります。
咽頭炎・扁桃炎
淋病(淋菌)が喉の粘膜に感染すると咽頭炎や扁桃炎を引き起こします。有症状の場合は、風邪のような症状が続くことが多い傾向にあります。
淋病(淋菌)の検査方法と検査ができる時期

淋病(淋菌)の検査は感染が疑われるタイミングからすぐに行うことができます。
検査方法は
① 精度の高い核酸増幅法(1-2営業日で結果判定)
② 30分以内に結果の出るイムノクロマト法検査(当日中に結果判定)
の2種類があります。
核酸増幅法
精度の高い検査で郵送検査でもこの方法で検査を行っています。
メリット | 無症状、心当たりの性行為直後から高い精度の検査を行うことができます。 即日検査のイムノクロマト法よりも検査費用が抑えられます。 |
デメリット | 結果判定まで1~2営業日かかります。 |
イムノクロマト法
ご来院いただき30分で即日結果が確認できます。
メリット | 当日ご来院いただければ即日30分以内で結果をお伝えできます。 |
デメリット | 核酸増幅法に比べて検査精度が低く、特に陰性判定を目的で行う場合には推奨していません。 |
部位別の検体採取の方法
尿道(男性)
- 拡散増幅法:尿を採取して検査を行います。
- イムノクロマト法:尿道粘膜をスワブで擦過して検体を採取します。痛みが生じることもあります
喉
- 生理食塩水でうがいをしてうがい液で検査または咽頭粘膜をし擦って検体を採取します。
男性の淋病(淋菌) 治療方法

淋病(淋菌)は薬で治療できる
咽頭淋病は、薬で治療できます。
ただし、耐性菌が多いため、使用するお薬の種類・容量について、経験値のある医療機関で処方してもらう必要があります。
特に日本ではニューキノロン系の「クラビット」が尿道炎症状に対して乱用されており、治療効果が期待できにくい状況です。
当院では主にセフェム系抗菌薬の筋肉注射・点滴、またはマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)テトラサイクリン系抗菌薬(ビブラマイシン)の内服などで治療を行っています。
セフェム系抗菌薬の筋肉注射は淋病に対して高い治療効果が期待できるメリットがある反面、淋病以外の性病には効果が期待できず、実際にご来院いただく必要があることがデメリットです。
アジスロマイシンは1度内服すると1週間効果が継続するため、飲み忘れの心配がない点に大きなメリットがあり、クラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマなどの性病にも効果が期待できます。
ただし、淋病治療に必要な容量を間違えると効果が得られないため注意が必要です。
ご注意
咽頭淋病のお薬は、市販されていません。
咽頭淋病の治療で使われる「抗菌薬(抗生物質)」の処方は、医師の判断が必要です。
インターネットの通販で、「淋病の治療薬」として抗菌薬が販売される様子が散見されますが、お身体への安全性が不明であったり、治りきらないままになってしまう、ということも考えられます。自己判断での服用はお控えください。
淋病(淋菌)の薬は何日で効くか

薬を使用してから1週間以内にほとんど症状は改善します。
一方で、感染していることに気づかず放置してしまっていた場合、淋病(淋菌)がお腹の中に広がってしまっている時には治療が長引く場合があります。
淋病(淋菌)治療中に性行為はできるか
治療中の性行為は厳禁です。
性行為再開は原則的に再検査で陰性が確認できてからとなります。
治療後の検査
お薬を内服後2週間以上経過してから治療の効果判定の検査を推奨しています。
2週間以内に検査すると淋病(淋菌)の死骸に反応することで『偽陽性』となってしまうことがあります。
男性の淋病(淋菌)患者数の推移・トピックス

2020年以降、淋病(淋菌)の感染者数は増えている
淋菌感染症の定点当たり報告数は、2002-2003年をピークに減少し、2016年以降はほぼ横ばいでしたが、2020年以降、男女とも増加してきています。

若い男性で多いが、全年齢で増加傾向
男性では2017年以降20代前半が最多です。
多くの年齢階級で2011年以降横ばいから減少傾向でしたが、2018年から20代で、2020年から25-34歳で増加を認め始め、2021年には全ての年齢階級で増加に転じています。

<国立感染症研究所>
https://www.niid.go.jp/niid/ja/gonorrhea-m/gonorrhea-idwrs/12089-gonorrhoeae-16jun.html
男性から淋病(淋菌)の症状に関してよくある質問
-
感染からどのくらいで症状が認められますか?
通常発症には数日~1週間程度かかります。
男性の性器感染では比較的症状が出やすいものの無症状のこともあり得ます。 -
検査はいつごろからできますか?
感染の機会からすぐに調べられます。
-
自然治癒することはないのでしょうか?
お薬で治療しない限り自然治癒することはありません。
放置していると感染が拡がり、男性不妊の原因になるので自覚症状がなくても心当たりがあれば必ず医療機関を受診しましょう。 -
治療にはどの程度時間がかかりますか?
お薬を内服していただくと数日で症状が改善することがほとんどですが、耐性菌や他の病気を重複している場合など治癒しないことがあります。
治療の効果判定のために2週間以上あけて再検査してください。 -
検査はどのように行いますか?
男性では尿を採取して行います。
院内にてご自身で採取していただきます。 -
検査結果を知るために再度来院する必要はありますか?
Webから検査結果が確認できるので、ご来院していただく必要はございません。
-
パートナーが感染していたためお薬の処方だけしてほしいのですが可能ですか?
医師が診察させていただいた上で問題なければお薬のみ処方することも可能です。
-
パートナーの分の淋病(淋菌)治療薬をもらうことは可能ですか?
代理処方は出来かねますが、パートナーへの治療を含めて最善のご提案をさせていただきます。
参考文献
厚生労働省ホームページ(性感染症)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou
国立感染症研究所所ホームページ(性器淋病(淋菌)感染症とは)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/chlamydia-std.html
日本性感染症学会(性感染症 診断・治療 ガイドライン)
https://jssti.jp/guideline_c.html