ドキシペップ(Doxy PEP)とは

ドキシペップとは

ドキシペップとは、性病予防ができなかった性行為から72時間以内にビブラマイシン(成分成分ドキシサイクリン)という抗菌薬(抗生物質)を200mg内服することで

  • 梅毒
  • クラミジア
  • 淋病

の感染リスクを下げる、新しい性病予防法です。

ドキシペップで使うお薬そのものは、ニキビ治療で使われるような一般的な抗生物質です。
他の抗菌剤と同様に吐き気や下痢といった副作用が生じる場合がありますが、飲み続けたり食後の後に服用することで軽減することができます。

ドキシペップの根拠・効果

ビブラマイシンは予防薬?治療薬?

ドキシペップは2022年7月に国際エイズ学会で発表された比較的新しい予防方法です。

海外での研究データになりますが、ドキシペップを行わない調査対象と比較して以下の予防効果があることが確認されました。

<予防効果>

  • 梅毒 87%
  • クラミジア 88%
  • 淋病 55%

国内での研究は進んでおらず、日本人を含むアジア人に対して同様の効果やメリットデメリットがあるかについては今後の研究結果が待たれますが、概ね同様の効果が得られると推測します。

<参考>
Doxycycline post-exposure prophylaxis for STI prevention among MSM and transgender women on HIV PrEP or living with HIV: high efficacy to reduce incident STI’s in a randomized trial
https://programme.aids2022.org/Abstract/Abstract/?abstractid=13231
Postexposure Doxycycline to Prevent Bacterial Sexually Transmitted Infections
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2211934

ドキシペップのお薬の飲み方

ドキシペップは、性病予防ができなかった性行為の72時間以内にビブラマイシン100mg(ドキシサイクリン)を2錠、合計200mg内服します。

ビブラマイシンは吐き気などの副作用が出ることがあるので、食後の内服を推奨します。

ビブラマイシンは予防薬?治療薬?

ビブラマイシンはドキシペップという使用方法では予防薬という立ち位置ですが、症状がある場合・感染してしまった場合の治療薬としても非常に有効なお薬です。

治療目的で使用する場合は、原因疾患や症状などで用法容量が変わるので、自己判断で使用せず必ず医療機関を受診するようにしましょう。

ドキシペップの対象

  • 年齢や性別は問いません
  • 性病予防をせず性行為をされてしまった方
  • 性病予防をせず性行為される可能性のある方

ビブラマイシン(ドキシサイクリン)またはテトラサイクリン系の抗菌薬(抗生物質)に対してアレルギーのある方は使用できません。

また、ビブラマイシンには以下の併用注意薬があります。
ご確認ください。

<参考>
ビブラマイシン添付文書
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054327

当院でのドキシペップの扱いについて

当院でのドキシペップの扱いについて

ドキシペップの処方を行っています

  • 性行為中にコンドームが外れてしまった
  • やむを得ずコンドームを使用せずに性行為をしてしまった
  • 風俗店で勤務していてコンドームの使用を拒否されてしまった
  • アレルギーなどでコンドームが使用できない など

性病予防ができない場面を考慮し、ドキシペップの取り扱いを行っています。

※診察・問診時に上記のような事情を詮索することはないのでご安心ください。
既往歴や内服歴からご使用の可不可を診察で判断させていただきます。

近年の梅毒感染者数の減少に貢献できればと期待できる反面、耐性菌を助長する可能性も無視はできないので、国内でガイドラインなどの整備ができ次第、それに準じた対応ができればと考えております。

<参考>
日本性教育協会
https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_202304.pdf

【ドキシペップ料金】

  • 1回分:税抜2,000円(税込2,200円)
  • 7回分:税抜9,000円(税込9,900円)

利用方法

処方をご希望の方は性病診察のご予約をいただき、「ドキシペップ希望」とお伝えください。

ドキシペップの副作用について ・注意点 デメリット

ドキシペップの副作用について

ドキシペップによる大きな副作用やアクシデントは報告されていませんが、内服に伴って吐き気や下痢などの消化器症状を認めることがあります

また、残念ながら予防効果は100%ではなく、梅毒・クラミジア・淋病以外の例えばHIVやヘルペス、尖圭コンジローマなどのウイルス性の疾患への効果は期待できません

公衆衛生的な観点で見ると特定の抗菌薬の使用頻度が増すことで耐性菌(そのお薬が効かない菌)を生み出してしまうリスクがあります。

※「耐性菌」という言葉を誤解をされている方もいらっしゃいますが、「あなた」に対してビブラマイシンが効かなくなるのではなく、ビブラマイシンが効かない『病原体(クラミジアなど)』を耐性菌と呼びます。

人間と病原体は耐性菌が生まれては新しい抗生物質(抗菌薬)を開発する、というイタチごっこの歴史を繰り返していますが、ドキシペップについてもそのリスクをはらんでいます。

ドキシペップの注意点

①ドキシペップを行った後、再度使用する場合は2日間(30時間以上)間隔をあけてください。
②出来るだけ定期検査を実施するようにしましょう。
③あくまでも予防目的なので、すでに症状がある場合は別で診察を受けるようにしてください。

ドキシペップについてよくある質問

  • 性行為の前に事前に内服してはいけないの?

    結論から言えば事前に内服すること自体NGではなく、絶対的に制限はしておりません。

    ただし、ドキシペップは基本的にやむを得ない状況で事後的に選択する方法です。

    ドキシペップとは「Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis」の意味で、「ドキシサイクリンを事後的に使用する」という訳になります。

    事前に内服する場合は、プレップ「PrEP(Pre-exposure prophylaxis:曝露前予防内服」という概念になり、こちらはHIVで確立されている予防方法です。

  • ドキシペップはどのような薬ですか?

    ビブラマイシンという抗生物質です。

  • ドキシペップを食前に飲むとどうなりますか?

    食前に内服いただいても効果に変わりはありませんが、吐き気などの副作用が出やすいので出来るだけ食後に内服しましょう。

  • (ビブラマイシン)ドキシサイクリンと併用してはいけない薬はありますか?

    併用禁忌、絶対NGのお薬はありません。

    以下のお薬を使用ている場合は効果が減弱することがあります。

    カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄剤などのサプリメント。

  • ドキシペップは通販やSNSで手に入らないか?

    [ドキシペップ 通販]で検索すると、医療機関ではない個人輸入の通販サイトで海外製のビブラマイシンが購入できるECショップがまれに見られたり、「X(旧Twitter)」などでも性病予防薬と称して転売されていたりすることがあります。

    このようなお薬の成分や品質に関して何ら保証もなく、健康被害に繋がる危険性があるので絶対に利用されないようにしてください。

著者・監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

順天堂大→東京医療センター→大手美容外科を経て独立。2017年プライベートクリニック高田馬場を開院。全国対応のオンライン診療(ピル・性感染症・ED/AGA)を軸に、美容皮膚科・医療脱毛を中心とした美容医療にも注力。公式LINE登録者40万人超。「より良い医療を、もっと身近に」が信条。日本遠隔医療学会・日本美容皮膚科学会所属。

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