超低用量ピルとは

「ヤーズ」や「ドロエチ」に代表される超低用量ピルは、エストロゲンの含有量が0.03mg未満と従来の低用量ピルよりも少なく、体への負担がさらに軽減された製品です。
1日1錠を毎日服用するだけで、以下のような女性特有の悩みにも対応します。
- 生理痛やPMSの軽減
- 生理の回数を極力減らしたい
- 生理日をコントロールしたい
- 肌荒れや大人ニキビを改善したい
日本では主に月経困難症(生理痛がひどい症状)や子宮内膜症の治療目的で開発・承認されており、健康保険が適用できる場合もあります。
超低用量ピルの仕組み

超低用量ピルも基本的な作用は低用量ピルと同じで、排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑えて受精卵が着床しにくい環境を作ります。
これにより高い避妊効果が期待できますが、日本では避妊目的の臨床試験が行われておらず、避妊目的での使用は推奨されていません。
実際、国内では避妊目的で処方することは認められておらず、避妊が主目的の場合は通常の低用量ピル(OC)の服用が推奨されています。
超低用量ピルはあくまで生理痛やPMSの治療薬として処方されるのが一般的です。
なお、エストロゲン量が少ないことで副作用が出にくいのも大きな特徴です。
吐き気や頭痛などのホルモンによる副作用が抑えられるため、「低用量ピルだと副作用がつらかった」という方にも試す価値があります。
また、国内外の研究ではエストロゲン20μg程度の超低用量ピルでは乳がんリスクの上昇が認められなかったとの報告もあり、従来のピルより安全性が高い可能性があります。
超低用量ピルはどんな人におすすめか
超低用量ピルは以下のようなニーズを持つ方に適しています。

生理痛・PMSがつらい方
排卵を抑えてホルモンバランスを整えることで、生理痛やPMS(月経前症候群)の症状緩和が期待できます。
月経に伴う腹痛や頭痛、イライラなどが軽減し、毎月のつらさを和らげます。
生理周期を安定させたい方
ピルを正しく服用すれば月経周期を規則的にコントロールできます。
ピルを飲んでいない期間に消退出血(疑似的な生理)が起こるため、生理周期が整いやすくなります。
さらに「ヤーズフレックス」のような製剤を使えば最長120日連続服用も可能で、年間の生理回数を約3回まで減らすこともできます。
旅行やイベントに生理を重ねたくない方にもメリットがあります。
肌荒れ・ニキビを改善したい方
ホルモンバランスの乱れによる皮脂分泌過多を抑える作用があり、ニキビや肌荒れの改善が期待できます。
実際に、生理前になるとホルモンの影響で皮脂が増えニキビが悪化しがちですが、ピルでホルモンを一定に保つことで過剰な皮脂分泌を抑制し、美肌効果を得られる場合があります。
超低用量ピルの飲み方と注意点
服用方法

超低用量ピルも基本的な飲み方は他のピルと同じです。
1日1回、同じ時間に服用するのが基本です。
食前・食後など特定のタイミングは指定されていませんので、自分が続けやすい時間帯を決めて服用してください。
例えば「毎晩就寝前に飲む」「朝起きて歯を磨いた後に飲む」など、日課に組み込むと良いでしょう。
ピルには21錠タイプ(21日間服用し7日間休薬)や28錠タイプ(24日間実薬+4日間プラセボ)などがあります。処方されたシートの指示に従い、順番どおりに連続で服用します。
一例として「ヤーズ配合錠」は24日間ホルモン剤入り錠を飲み、残り4日は偽薬(プラセボ)を飲むことで28日を1サイクルとします。
いずれの場合も休薬期間を除き飲み忘れないことが重要です。
飲み忘れた場合の対応

万一ピルの服用を飲み忘れてしまった場合は、経過時間に応じて以下のように対処してください。
- 24時間以内:気づいた時点で服用すれば問題ありません(一日2錠服用しても問題ありません)。
- 24時間以上経過:この場合、ピルによる効果(避妊効果や月経コントロール効果)は一度リセットされると考えます。
いったん服用を中断し、次の出血のタイミングから新しいシートで再開してください。
生理周期と消退出血について

超低用量ピル使用中は「消退出血」と呼ばれる出血が、偽薬(ホルモンを含まない錠剤)を服用する期間に起こります。
これは服用を休止した期間(またはプラセボ服用期間)にホルモンが抜けることで起こる出血で、生理とほぼ同様のものですが、子宮内膜が薄く保たれているため経血量は通常の生理より少なめになることが多いです。
また、ピルをきちんと服用している限り原則として休薬期間にしか出血は起こりません。これにより、生理周期を28日間で安定させることができます。
また、超低用量ピル一部(ヤーズフレックスなど)は最⼤120⽇間の⻑期投与ができ、⽣理を4ヶ⽉に1回に調整することも可能です。
出血しやすさには個人差がありますが、うまくいけば4か月に1回だけ生理を起こすペースにできるわけです。生理に伴う痛みや体調不良の頻度を減らせるため、月経困難症やPMSに悩む方には大きな利点となります。
やめる・再開するタイミング

やめる場合
超低用量ピルはご自身の判断でいつでも中止が可能です。
特別な減薬の必要もなく、飲むのをやめれば数日~数週間で自然のホルモン分泌が回復し排卵が再開します。
一般的には最後に飲んだ錠剤から2~3日後に消退出血が起こり、それ以降は通常の生理周期が戻ってきます。
長期間ピルを飲んでいても将来の妊娠のしやすさに影響はありませんので、「妊娠したい」と思ったタイミングで遠慮なく中断してください。
再開する場合:
過去に一度ピルの服用を中止していて、再度始める場合も特に制限はありません。
産後すぐは血栓症リスクが高まっているため通常産後4~6週はピル禁止とされます。また、授乳中は低用量・超低用量ピルとも服用できません(母乳の量や質に影響する可能性があるため)。
そのため、出産後は授乳中であればミニピルを、授乳が終われば超低用量ピルを選択できます。
超低用量ピルのメリット

生理周期の安定化を図れる
ここまでご紹介の通り、ピルを利用すれば毎月の生理を予定通りにコントロール可能です。
通常は28日周期になりますが、忙しい時期には生理をずらすこともできます。さらに長期連続服用することで、生理そのものの回数を減らすことも可能です。
生理痛やPMSの軽減ができる
排卵抑制によって子宮の過剰な収縮が抑えられ、ひどい月経痛が軽減します。またホルモンの急変動をなくすことでPMSやPMDDの症状(イライラ、不安感、頭痛、むくみ等)が和らぐ効果もあります。
毎月憂鬱だった生理前後の不調が改善されることで、日常生活の質が向上するでしょう。
美容効果を期待できる
ホルモンバランスを整える副次的な効果で皮脂分泌が抑えられ、肌荒れや大人ニキビを改善します。
実際、ピル内服中は「生理前にいつもできるニキビができなくなった」「肌の調子が安定した」という声もあり、美容目的で服用する人もいます。
がんのリスク軽減が期待できる
子宮体がんや卵巣がん、大腸がんの発症リスクを低減する効果があります。
ピル服用により排卵回数が減少し卵巣への負担が軽くなるため、卵巣がんの発症リスクは使用5年で約30%減少し、10年以上で約40%減少すると報告されています。
また子宮内膜を薄く保つことで子宮体がんの発症リスクも低下するとされます。
<参考>
日本産婦人科学会編 OC・LEPガイドライン 2020年度版
これらの効果は、服用中止後も長期間持続することが知られています。
超低用量ピルのデメリット・副作用

初期に副作用が出ることがある
ピルを飲み始めた最初の1~2ヶ月(特に最初の数週間)に、軽い吐き気や頭痛、乳房のハリを感じることがあります。
これは体がホルモンに慣れるまでの一時的な反応(マイナートラブル)で、多くの場合は飲み続けるうちに自然に治まります。
実際、1〜2週間ほどで改善するケースがほとんどです
また少量の不正出血(いわゆる「茶おり」程度の出血)が起こることもありますが、これも服用継続で落ち着く場合がほとんどなので過度に心配はいりません。
ただし症状がどうしても我慢できない場合は医師に相談しましょう。当院にも相談できます。
血栓症のリスクがある
非常に稀ですが、血管を塞ぐ血栓症(血の塊が血管を詰まらせる症状)のリスクがわずかに高まる可能性があります。
頻度は低いものの、起きると足の痛み・腫れ、息苦しさ、胸痛など重篤な症状につながることもあるため注意が必要です。
特に喫煙者や35歳以上の女性は注意が必要です。
超低用量ピルが使用できないケース(禁忌事項)

超低用量ピルは以下の条件に該当する方には使用できません。
- 35歳以上で1日15本以上喫煙する方
- BMIが30以上の肥満体型の方
- 血栓症、肝疾患、乳がんの既往がある方
35歳以上で1日15本以上喫煙する方
年齢が高く大量に喫煙する方は血栓症や心筋梗塞のリスクが著しく上昇するため、ピルの処方はできません(45歳以上の喫煙者は特に禁忌)。
BMIが30以上の肥満体型の方
肥満自体が血栓や高血圧などリスク因子となるため、体重過多の方へのピル処方は慎重に判断されます。
血栓症、肝疾患
過去に血栓性静脈炎や肺塞栓、脳卒中、心筋梗塞などを起こしたことがある方は再発防止のためピルは禁忌です。
同様に重度の高血圧や糖尿病で血管合併症がある場合も使用できません。
乳がんの既往がある方
現在これらの癌に罹患している場合はもちろん、過去に治療歴がある場合も再発リスクを考慮してピルの服用は避けます。
特にホルモン感受性の乳がんはピルで腫瘍増殖の可能性があるため禁忌とされています。
超低用量ピルの処方までの流れ
オンライン診療で処方するまでの流れ

- 診療予約をする
LINEチャットの手順に沿って進め、事前問診後にご希望の診療日時を選択して予約してください。
- 医師が診察・処方
医師とチャットメッセージまたはビデオ通話で診察し、患者様に合わせたお薬を処方します。診療時間は最短で5分ほどです。
- お薬の受け取り
診察後に当院運営のECサイトから処方薬を購入してください。当日17時までの購入で即日発送します。
来院診療での処方までの流れ

- 診療予約・受付
待ち時間のない診察をご希望の方はWEBまたはお電話で事前予約してください。予約なしでも当日15分ほどで診察できます。
- 医師が診察・処方
医師が診察し、患者様に合わせたお薬を処方します。所要時間はご予約の方は最短で5分ほどです。
- お薬の受け取り
お薬はお会計時に院内ですぐにお渡しするため、薬局へ行く必要がなく、待ち時間や移動の負担がありません。
超低用量ピルの種類・料金

- ヤーズ、ヤーズフレックス、ドロエチ
副作用を抑えた製品で、生理周期の調整やPMS改善に適しています。
料金は医療機関によりますが、1シートあたり4,000円~10,000円程度が一般的です。
超低用量ピルに関してよくある質問
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超低用量ピルはドラッグストアで購入できるの?
超低用量ピルの処方は医療機関でのみ可能です。
ドラッグストアなどでは購入できないので気をつけてください。 -
超低用量ピルを使うのに検査は必要?
超低用量ピルを使用するには一般的な健康診断を受診していれば医療機関で別途検査をする必要は基本的にありません(乳房検査・内診・血液検査は産婦人科学会のガイドラインでもルーチンで行うことを推奨していません。)
ただし、学校や会社などの健康診断を受診されてない場合は、各医療機関で各種検査を行なってから使用を始めることを推奨します。
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超低用量ピルを処方してもらうのに大切なことは?
当院ではご使用に際して詳細な問診項目に回答いただくことで、ピルを使用いただけるか否か判断させていただいております。
特別な既往歴や内服歴などがなければご使用いただけますが、ご不明点などあればカウンセリング時にお気軽にご相談ください。
<参考>
日本産婦人科学会 低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf