病院に行くべき?生理痛(月経困難症)をセルフチェック

生理痛(月経困難症)をセルフチェック

ひとくちに「生理痛」といっても、そのつらさには個人差があります。
まずはご自身の症状がどの程度なのか、客観的に把握してみましょう。

ご自身の状態が「月経困難症」に当てはまるかどうかの目安になります。

  • レベル1(軽度): 痛みはあるが、日常生活にほとんど支障はない。鎮痛剤なしでも我慢できるか、飲んでも1日程度で済む
  • レベル2(中等度): 痛みのせいで時々横になりたくなる。鎮痛剤を飲まないとつらく、期間中に2日程度は服用する。仕事や学業のパフォーマンスが落ちる
  • レベル3(重度): 激しい痛みで1日以上寝込んでしまう。市販薬が効かず、3日以上鎮痛剤が手放せない。毎月のように仕事や学校を休んでしまう

もしあなたの痛みがレベル2以上に当てはまるなら、それは「月経困難症」の可能性が高いサインです。我慢せず、専門的なケアを検討することをおすすめします。

「生理痛くらいで…」とためらう必要はまったくありません。

生理痛(月経困難症)が起こる2つのタイプについて

生理痛が起こる2つのタイプについて

生理痛の原因は、大きく分けて2種類あります。
どちらのタイプかによって、対処法や治療法が異なります。

タイプ1:病気が原因ではない「機能性月経困難症」の痛み

特定の病気があるわけではなく、生理の仕組みそのものによって起こる痛みです。特に10代〜20代前半の若い女性に多く見られます。

痛みの犯人「プロスタグランジン」のしわざ

主な原因は「プロスタグランジン」という痛み物質です。

この物質は、子宮を収縮させて経血を体の外に押し出す働きをしますが、分泌量が多すぎると子宮の収縮が過剰になり、陣痛のような強い痛みや腰痛を引き起こします。

さらに、プロスタグランジンが血液に乗って全身に巡ると、頭痛や吐き気、下痢といった子宮以外の症状を招くこともあります。

10代に多い「子宮の未熟さ」による痛み

10代のうちは子宮の出口(子宮頸管)がまだ硬く狭いため、経血がスムーズに通りにくく、押し出そうとする力が強まることで痛みを感じやすくなります。

見過ごせない「ストレスや冷え」の影響

不規則な生活や睡眠不足、精神的なストレスは、ホルモンバランスや自律神経を乱し、血行不良を招きます。体の冷えは痛みをさらに悪化させる大きな要因です。

タイプ2:病気が隠れている「器質性月経困難症」の痛み

子宮や卵巣などに何らかの病気が隠れており、それが原因で痛みが起こるタイプです。

20代後半から増え始め、年々痛みが強くなる、経血量が増えるといった特徴があります。

また、生理期間が終わった後も痛みが続くことがあるのも特徴です。

注意したい病気①子宮内膜症

本来は子宮の内側にあるはずの内膜組織が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖・出血を繰り返す病気、子宮内膜症があります。

癒着や炎症を引き起こし、生理のたびに激しい痛みを伴います。不妊の原因になることもあります。

注意したい病気②子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。

筋腫ができる場所や大きさによっては、生理痛の悪化や過多月経(経血量が異常に多い状態)を引き起こします。

注意したい病気③:子宮腺筋症

子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉の中にもぐり込んで増殖する病気(子宮腺筋症)です。

子宮全体が硬く大きくなり、激しい生理痛や過多月経を招きます。

「年々生理痛がひどくなっている」「鎮痛剤が効かなくなってきた」と感じる方は、器質性月経困難症の可能性があります。
特に子宮内膜症は、放置すると進行してしまう病気です。

ご自身の痛みの原因がどちらのタイプなのかを正しく知ることが、適切な治療への第一歩です。
少しでも不安があれば、ためらわずに婦人科を受診してください。

あなたの生理痛の原因、きちんと調べてみませんか?

当院では、生理痛改善の第一選択としてピルの使用をご提案させていただいております。

つらい症状を一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。

つらい生理痛(月経困難症)を軽くするセルフケア習慣

つらい生理痛を軽くするセルフケア習慣

病院での治療も大切ですが、日常生活の中で少し工夫するだけでも、つらい痛みを和らげることができます。

基本は「温める」。体と心をほぐす温活

生理痛対策の基本は「温める」こと。

下腹部や腰にカイロや湯たんぽを当てたり、腹巻きをしたりして、骨盤周りの血行を良くしましょう。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのも効果的です。

食事で内側からケアする

体を温める食材(生姜、根菜など)を積極的に摂りましょう。

血行を促進するビタミンE(ナッツ、アボカド)や、子宮の過剰な収縮を抑える働きが期待されるEPA(青魚)もおすすめです。

逆に、体を冷やす冷たい飲み物や、痛みを強める可能性があるカフェイン、白砂糖は控えめに。

無理のない運動で血行を促す

痛みがつらい時は無理禁物ですが、動ける範囲で軽いウォーキングやヨガ、ストレッチを行うと、骨盤内の血流が改善して痛みが和らぎます

特に、股関節周りをほぐすストレッチはおすすめです。

生理が始まる1週間ほど前から軽い運動を習慣にすると、痛みの予防にもつながります。

睡眠と休息で体をリセット

睡眠不足は自律神経を乱し、痛みに敏感にさせます。

生理中は特に、意識してリラックスする時間を作り、十分な睡眠を確保しましょう。

痛みを感じたら少し横になる、家事の手を抜くなど、自分をいたわることが大切です。

香りや音楽でリラックスタイムを

ストレスは痛みを増幅させます。

アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたり、ハーブティーを飲んだり。
自分が「心地よい」と感じる時間を作って、心と体の緊張を解きほぐしましょう。

こうした工夫は、PMS(月経前症候群)や生理中のメンタル不調の緩和にもつながります。

痛みに効くツボを優しく刺激

生理痛に効くとされるツボを優しく押してみるのも良いでしょう。

「三陰交(さんいんこう):内くるぶしの最も高いところから指4本分上」や「合谷(ごうこく):手の甲で、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ」などが有名です。

鎮痛剤は「タイミング」がカギ

市販の鎮痛剤(カロナールやロキソニンなど)を利用する際は、「痛みが我慢できなくなってから」ではなく、「痛くなりそうだな」というタイミングで早めに服用するのがポイントです。

痛みの原因物質であるプロスタグランジンの生成を抑えるタイプの鎮痛薬(NSAIDs)は、痛みが本格化する前に飲むことで、より効果を発揮しやすくなります。

生理痛(月経困難症)で受診すべき5つのサイン

生理痛で受診すべき5つのサイン

セルフケアを試しても改善しない、痛みが日常生活の妨げになっている…そんな時は、専門医の力を借りるタイミングです。

  • 市販の鎮痛剤が効かない、または飲む量が増えている
  • 痛みのせいで毎月、学校や仕事を休んでしまう
  • 年々、生理痛がひどくなっている気がする
  • 経血の量が異常に多い(レバー状の塊が混じるなど)
  • 生理期間以外にも下腹部や腰に痛みがある

これらのサインは、背景に子宮内膜症などの病気が隠れている可能性を示唆しています。

「生理痛くらいで…」とためらわず、ぜひ一度私たちにご相談ください。
早期発見・早期治療が、将来のあなたの健康、そして妊娠・出産を考える上でも非常に重要になります。

つらい症状は、体からの大事なメッセージです。

当院では、患者様一人ひとりのお話にじっくりと耳を傾け、不安な気持ちに寄り添いながら診察を進めます。
どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。

生理痛(月経困難症)の治療について

生理痛(月経困難症)の治療について

婦人科では、痛みの原因や重症度、そしてあなたのライフプランに合わせて、様々な治療法を提案します。

これらは月経困難症の治療として行われます。

まずは「低用量ピル」という選択肢

現在の月経困難症治療において、中心的な役割を果たすのが低用量ピルです。

ピルと聞くと避妊のイメージが強いかもしれませんが、月経困難症の治療目的で処方されるピル(LEP製剤)は保険が適用されます。

ピルは排卵を一時的に止め、ホルモンバランスの波を穏やかにします。

これにより、子宮内膜が厚くなるのを抑え、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの産生を根本から減らすことができます。
これが低用量ピルの効果の仕組みです。

結果として、「生理痛が劇的に楽になった」「経血量が減って貧血が改善した」「生理周期が安定して予定が立てやすくなった」といった声を、当院の患者様からも数多くいただきます。

さらに、ホルモンバランスが整うことで、ニキビや肌荒れが改善するといった嬉しい美容効果も期待できます。

体質から整える「漢方薬」

「冷えが強い」「疲れやすい」「イライラしやすい」など、体質に合わせた漢方薬を処方することもあります。

血行を改善したり、心身のバランスを整えたりすることで、痛みを和らげます。
ピルと併用することも可能です。

ピル以外のホルモン療法

子宮内膜症が原因の場合、生理そのものを止めて痛みをなくす「ジエノゲスト」という黄体ホルモン剤や、子宮内に装着して5年間効果が持続する「ミレーナ(IUS)」なども有効な選択肢となります。

原因の病気に対するアプローチ、手術療法

子宮筋腫や子宮内膜症が進行している場合は、薬物療法と並行して、あるいは薬物療法で効果が見られない場合に、手術を検討することもあります。

現在では、体への負担が少ない腹腔鏡手術などが主流となっています。

つらい生理痛(月経困難症)は、我慢しなくていい時代です

生理痛は多くの女性が経験しますが、その痛みは決して「普通」のことではありません。
日常生活に支障が出るほどの痛みは「月経困難症」という、治療によって改善できる症状です。

まずはご自身でできるセルフケアを試しつつ、もし「つらい」と感じるなら、どうか一人で抱え込まないでください。

現在では、低用量ピルをはじめとして、安全で効果的な治療の選択肢がたくさんあります。
専門医に相談することで、長年の悩みだった痛みから解放され、仕事やプライベートをもっと楽しめる毎日を取り戻すことは、決して難しいことではありません。

プライベートクリニック高田馬場では、女性の皆さまが健やかで快適な日々を送れるよう、全力でサポートいたします。
この記事が、あなたが勇気を出して一歩を踏み出すきっかけになることを、心から願っています。

生理痛の「ウソ?ホント?」気になる疑問にお答えします

  • ピルを長く飲むと、将来妊娠しにくくなりますか?

    いいえ、そのようなことはありません。 

    これは非常によくある誤解です。
    ピルの服用が将来の妊娠に悪影響を及ぼすという医学的根拠はなく、むしろ生理痛の原因となる子宮内膜症の進行を抑えることで、将来の妊孕性(にんようせい:妊娠する力)を守る効果が期待できると考えられています。
    服用をやめれば、体は自然な排卵周期に戻ります。

  • 出産すれば生理痛は治りますか?

    軽くなる人もいますが、全員ではありません。
    出産によって子宮頸管が広がり、痛みが緩和されるケースは確かにあります。

    しかし、変わらない人や、逆に悪化する人もいます。
    「いつか出産すれば治るから」と痛みを何年も我慢している間に、病気が進行してしまうリスクもあります。
    痛みがあるなら、その時点で適切な対処をすることが大切です。

  • 鎮痛剤はクセになるから、飲まない方がいいですか?

    用法用量を守れば問題ありません。 

    鎮痛剤に、いわゆる「クセになる」ような依存性はありません。痛みを我慢しすぎると、かえって体が敏感になり、痛みを強く感じてしまうことがあります。つらい時は無理せず、薬を上手に活用して快適に過ごすことがQOL(生活の質)の向上につながります。

    ただし、市販薬が効かない場合は、薬が合っていないか、別の原因が考えられるため、医師にご相談ください。

著者・監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

順天堂大→東京医療センター→大手美容外科を経て独立。2017年プライベートクリニック高田馬場を開院。全国対応のオンライン診療(ピル・性感染症・ED/AGA)を軸に、美容皮膚科・医療脱毛を中心とした美容医療にも注力。公式LINE登録者40万人超。「より良い医療を、もっと身近に」が信条。日本遠隔医療学会・日本美容皮膚科学会所属。

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