アフターピルが妊娠を防ぐ2つの仕組み

「どうして避妊できるのか」というご質問は、診察の場で多く寄せられます。
アフターピルは主に「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を主成分とした薬で、主に2つの作用によって妊娠の成立を防ぎます。
- 排卵を抑制・遅延させる
- 受精卵が子宮内膜に着床するのを防ぐ
妊娠が成立するためには、「射精→排卵→受精→着床」というプロセスが必要です。
アフターピルは、このプロセスの複数の段階に作用して妊娠を防ぎます。
排卵の抑制・遅延
妊娠成立のためには、まず卵巣から卵子が排出される「排卵」が起こる必要があります。
排卵がなければ、精子が子宮内にあっても受精は起こりません。
アフターピルを排卵前に服用した場合、ホルモンの働きによって排卵のタイミングを5日ほど遅らせることができます。
精子の寿命は約3〜5日のため、排卵を遅らせることで、精子が寿命を迎えた後に排卵が起こるように仕向け、受精そのものを防ぐのです。
この作用が、アフターピルの主な避妊の仕組みです。
排卵前の服用は特に避妊効果が高いとされており、72時間(3日)以内に服用することで妊娠の心配は大きく減らすことができます。
受精卵の子宮内膜への着床阻害
もしタイミング的に排卵後であったり、すでに受精が起こってしまったりした場合でも、アフターピルは次の段階で妊娠成立を防ぎます。
受精卵が成長するためには、子宮の内側にある「子宮内膜」に着床する必要があります。
この子宮内膜は、しばしば「ふかふかのベッド」に例えられます。
着床には、このベッドのように厚みのある状態が不可欠です。
アフターピルを服用すると、子宮内膜の増殖が抑制され、厚くなるのを防ぎます。
そのため、たとえ受精卵が子宮に到達しても、ベッドの準備ができていないためうまく着床できず、妊娠は成立しません。
着床しなかった受精卵や、不要になった子宮内膜は、やがて血液とともに体外へ排出されます。
これが後述する「消退出血」です。
アフターピルの種類と避妊率
アフターピルは100%妊娠を防げるわけではありません。
しかし、決められた時間内に正しく服用すれば、限りなく100%に近い確率で妊娠を防ぐことが可能です。
日本国内のクリニックで主に取り扱われているアフターピルは、以下の3種類です。
それぞれに特徴と避妊率の違いがあるため、ご自身の状況に合わせて選択することが重要です。
種類 | 一般名(商品名) | 服用時間 | 特徴 |
レボノルゲストレル法 | レボノルゲストレル(ノルレボなど) | 性交後72時間以内 | WHOも推奨する緊急避妊の標準薬副作用が比較的少ない1回の服用で済む |
ヤッペ法 | 中用量ピル(プラノバールなど) | 性交後72時間以内 | 古くからある方法価格が比較的安い吐き気などの副作用が強い傾向12時間あけて2回服用 |
ウリプリスタール法 | ウリプリスタール(エラなど) | 性交後120時間以内 | 72時間を超えても高い効果を維持排卵抑制効果が高い副作用が少ない |
経験上、レボノルゲストレル(ノルレボ)は12時間以内に服用すれば99%以上の確率で、ほぼ100%に近い割合で避妊できることがわかっています。
それでも100%と言い切れないのは、ごく稀に妊娠が成立するケースがあるためです。
服用時間と避妊率の関係は以下の通りです。
いかに早く服用するかが、避妊成功の鍵を握っていることがお分かりいただけるでしょう。
服用までの時間 | レボノルゲストレル法 | ヤッペ法 | ウリプリスタール法 |
24時間以内 | 99% | 77% | 99%以上 |
72時間以内 | 97% | 31% | 99% |
120時間以内 | 効果低下 | 効果低下 | 85%以上 |
※避妊率はあくまで目安です。
現在、日本では副作用が少なく効果も高い「レボノルゲストレル法」が主流となっています。
ヤッペ法は安価ですが、吐き気が強く出てしまう方が多く、避妊率も劣るため、積極的にはおすすめしていません。
また、72時間を過ぎてしまった場合には「ウリプリスタール法」という選択肢もあります。
ご自身の状況がどの薬に適しているか分からない場合は、速やかに医師にご相談ください。
アフターピルの種類について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
アフターピルの効果を確実にするための注意点

正しく服用すれば、妊娠の可能性を限りなくゼロにできるのがアフターピルです。
その効果を十分に発揮するために、以下の2点は必ず守ってください。
できる限り早く服用する(72時間以内、または120時間以内)
アフターピルは、とにかく早く飲めば飲むほど避妊効果が高まります。
多くのクリニックで処方されるレボノルゲストレル法のアフターピルは、性交後72時間(3日間)以内に服用する必要があります。
もし72時間を過ぎてしまった場合でも、120時間(5日間)以内であればウリプリスタール法(エラ)という選択肢があります。
諦めずに、まずはクリニックへご相談ください。
服用後2時間以内は嘔吐しない
アフターピルの成分が体内に吸収されるまでには、約2時間かかります。
そのため、服用後2時間以内に嘔吐してしまうと、薬の成分が十分に吸収されず、避妊に失敗してしまう可能性が高くなります。
副作用として吐き気を感じることがありますが、この2時間だけはできるだけ我慢しましょう。もし万が一、2時間以内に嘔吐してしまった場合は、ためらわずに処方されたクリニックへ連絡してください。
状況に応じて、追加で薬を服用する必要があります。
アフターピルの副作用は?いつまで続く?

ここからは、アフターピルの副作用について解説します。
近年のアフターピル(レボノルゲストレル法)は副作用が起こる頻度は低いですが、体質によっては症状が出てしまう方もいます。
代表的な副作用
代表的な副作用は以下の通りです。
- 吐き気(最も注意すべき副作用)
- 不正子宮出血
- 頭痛
- 倦怠感、眠気
- めまい
- 下痢
- 乳房の張り
この中で特に注意すべきは、やはり「吐き気・嘔吐」です。
先述の通り、服用後2時間以内の嘔吐は避妊効果を失わせる原因になります。吐き気への対策として、あらかじめ吐き気止めを一緒に処方してもらうことも可能です。
市販の乗り物酔い止めなどでも代用できますので、心配な方は医師にご相談ください。
なお、お腹がゆるくなって下痢をしても、薬の成分は胃や小腸で吸収されているため、避妊効果に影響はありません。
副作用はいつまで続く?
つらい副作用がいつまで続くのか不安になるかと思いますが、通常は24時間以内に治まることがほとんどです。
眠気や吐き気といった症状はあくまで一時的なもので、多くの場合、服用から数時間後に現れ、1日安静にしていれば落ち着きます。
もし24時間経っても副作用が見られなければ、その後で症状が出る可能性は低いでしょう。
アフターピルは、市販の頭痛薬や解熱剤、胃腸薬などと併用しても基本的に問題ありません。
症状がつらい場合は、我慢せずに対処薬を服用してください。
ただし、あまりにも症状が重い、または長引く場合は、副作用以外の原因も考えられます。
不安な時は、処方を受けた医療機関を受診しましょう。
副作用については、下記の記事でも詳しく解説しています。
アフターピル服用後の経過と避妊成功のサインについて

アフターピルを服用した後、多くの場合は数日〜3週間以内に「消退出血」と呼ばれる出血が起こります。
これは、薬の作用で剥がれ落ちた子宮内膜が排出されるもので、通常の生理とは異なります。
- 期間:2〜3日程度続くことが多い
- 出血量:通常の生理より少ないことが多い(個人差あり)
この消退出血が確認できれば、避妊に成功した一つの目安と考えることができます。
ただし、消退出血がない場合や、通常の生理予定日から1週間以上遅れる場合、または出血量がいつもと極端に違う場合は、妊娠の可能性も否定できません。
その際は、市販の妊娠検査薬を使用するか、必ず医療機関を受診して妊娠の有無を確認してください。
アフターピルの入手方法と価格

アフターピルを安全に手に入れる方法は、「医療機関で医師の診察を受け、処方してもらうこと」です。
医療機関(産婦人科など)で処方してもらう
日本国内では、アフターピルは医師の処方が必要な「処方箋医薬品」です。
性交後72時間以内という時間制限があるため、妊娠の可能性がある場合は、ためらわずに当院などにお越しください。
オンライン診療を利用する
「対面での診察は恥ずかしい」という方には、オンライン診療がおすすめです。
スマートフォンやPCを使い、ご自宅から医師の診察を受け、薬を処方してもらうことができます。
当院「プライベートクリニック高田馬場」でも、オンライン診療によるアフターピルの処方に対応しております。
最短で翌日にはご自宅のポストに薬が届くため、お急ぎの方でも安心してご利用いただけます。
なお、厚生労働省の指針に基づき、オンライン診療でアフターピルを処方できるのは、産婦人科医または指定の研修を受けた医師に限られます。
当院では、経験豊富な医師が丁寧に対応いたしますのでご安心ください。
通販(個人輸入)での購入は絶対にNG!
インターネットで検索すると、海外からアフターピルを安く購入できると謳う個人輸入代行サイトが見つかりますが、利用は絶対にやめてください。
海外からの輸入品には、有効成分が全く入っていない偽造薬や、健康に害を及ぼす不純物が混入した粗悪品が紛れている危険性があります。
偽造薬を服用して避妊に失敗したというケースは後を絶ちません。
また、配送に数日以上かかり、いざという時に間に合わないという問題もあります。
リスクを冒して得られるメリットは何もありません。
ご自身の体を守るためにも、アフターピルは必ず国内の正規の医療機関で処方を受けてください。
価格の目安
アフターピルの価格は、薬の種類や医療機関によって異なり、およそ6,000円~20,000円が相場です。
- レボノルゲストレル法:12,000円~20,000円程度
- ヤッペ法:6,000円~10,000円程度
- ウリプリスタール法:15,000円~20,000円程度
ヤッペ法は安価ですが、前述の通り副作用や避妊率の観点から、当院では確実性の高いレボノルゲストレル法をおすすめしています。
アフターピルが必要になったら、すぐにオンライン診療へご相談を

もしもの時、最後の避妊手段となるのがアフターピルです。
性交後24時間以内の服用であれば極めて高い避妊率が期待できるため、とにかく「早く行動すること」が重要です。
アフターピルの購入には必ず医師の診察が必要ですが、現在は「オンライン診療」という便利な選択肢があります。
- 24時間いつでもスマホから問診予約が可能
- 誰にも会わずに医師の診察を受けられる
- 最短翌日に薬が届く
一人で悩み、時間が過ぎてしまうことが最も避けるべき事態です。
望まない妊娠の可能性に気づいたら、その瞬間に専門家へ相談してください。
プライベートクリニック高田馬場では、お急ぎの方のためにLINEでのご予約も受け付けております。
経験豊富な医師が、あなたの不安に親身に寄り添います。
どうか一人で抱え込まず、今すぐご相談ください。