自由診療各種治療の注意事項と限定解除要件
当院では、以下の自由診療(保険適用外)の治療を提供しております。
各治療カテゴリごとに、使用目的と概要、国内承認状況、主な薬剤名(商品名)、副作用・リスク(医師の監督のもと使用する必要あり)、使用できない方(禁忌)、入手経路などの注意事項をまとめました。
効果には個人差があり、いずれの治療もその効果を断定するものではありません。
また、本ページの記載内容は医療広告ガイドラインに基づく広告可能事項の限定解除要件を満たした情報提供となっています。
1. ピル(低用量・超低用量・ミニピル・中用量ピル〈プラノバール〉・アフターピル)
使用目的と概要
ピルは女性の体内ホルモンを調整する経口薬で、主に避妊(経口避妊薬)の目的で使用されます。エストロゲンとプロゲスチンの合成ホルモンを含む配合剤で、排卵の抑制や子宮内膜の変化を起こし妊娠を防ぎます。
また、生理痛や月経不順の改善、月経周期の調整などの目的で処方されることもあります。ピルには含有ホルモン量により低用量ピル(LEPとも呼ばれ一般的な避妊用ピル)、超低用量ピル(より低用量のタイプ)、ミニピル(黄体ホルモンのみ含有のピル)、中用量ピル(従来型でホルモン量がやや多いピル)などの種類があります。
いずれも自由診療での処方となり、保険適用はありません(避妊目的の場合)。適切に服用すれば高い避妊効果が期待できますが、効果には個人差があり、正しく飲み忘れなく服用することが重要です。
国内承認状況
低用量ピル(エストロゲン約0.02~0.04mg含有)は1999年に日本で避妊用途として承認され、現在国内で処方可能な低用量ピルは多数の種類があります。
例えばレボノルゲストレルを含む「トリキュラー®」や、デソゲストレルを含む「マーベロン®」「アンジュ®」などが代表的で、いずれも医薬品医療機器等法上で承認された医薬品です。超低用量ピル(エストロゲン含有量0.01mg台)は、日本ではドロスピレノンを含む「ヤーズ®配合錠」などが承認されています。
ミニピル(黄体ホルモン単剤ピル)については、海外では一般的に使用されていますが日本では長らく未承認でした。中用量ピルは、有効成分量の多い古いタイプのピルで、日本では「プラノバール®配合錠」が医療用医薬品として1970年代から使用されてきました。プラノバール自体は国内承認薬ですが、生理日を移動する目的での使用など避妊以外の用途では適応外使用となり、やはり保険は効かず自由診療扱いです。アフターピル(緊急避妊薬)については、日本では2011年にレボノルゲストレル錠(商品名「ノルレボ®」など)が承認され、性交後72時間以内の緊急避妊に用いられています。一方、性交後120時間以内まで有効なウリプリスタル酢酸エステル錠(商品名「エラワン®」等)は日本ではまだ未承認であり
、必要な場合は医師の判断で輸入薬を用いるケースもあります。このように一部未承認の薬剤も含まれますが、その場合は後述のように適切な情報提供と手続きを経て使用しています。
主な薬剤名と商品名
低用量ピル: 有効成分と主な製品例
レボノルゲストレル+エチニルエストラジオール: 「トリキュラー®21/28」など
デソゲストレル+エチニルエストラジオール: 「マーベロン®21/28」「アンジュ®28」(マーベロンの後発医薬品)など
超低用量ピル:
ドロスピレノン+エチニルエストラジオール: 「ヤーズ®配合錠」「ヤーズフレックス®」
(※上記は月経前症候群治療などの目的でも承認されています)
ミニピル(黄体ホルモン単剤ピル):
デソゲストレル製剤: 「セラゼッタ®」(海外での製品名、日本未承認)
中用量ピル:
ノルゲストレル+エチニルエストラジオール: 「プラノバール®配合錠」
アフターピル(緊急避妊薬):
レボノルゲストレル: 「ノルレボ®錠」「レボノルゲストレル錠0.75mg×2(各社ジェネリック)」
ウリプリスタル酢酸エステル: 「エラ®錠」(海外名:EllaOne®)※国内未承認
※上記の商品名は代表例です。国内未承認薬については医師の管理下で適切に輸入・処方します。
副作用・リスク(要医師管理)
ピル全般の主な副作用として、吐き気、頭痛、乳房の張り、不正出血、食欲変動などが報告されています。これらの多くは服用開始後数か月以内に体が慣れることで改善することが多いです。一方、稀ではありますが注意すべき重篤な副作用に血栓症(血の塊が血管を塞ぐ症状)があります。血栓症のリスクは、特にエストロゲンを含むタイプのピルで高まり、長時間動かない状況や喫煙習慣がある場合に相乗的に増加します。このため、35歳以上で1日15本以上の喫煙者の方には低用量ピルは禁忌とされています。中用量ピルは低用量に比べホルモン量が多いため、副作用(特に吐き気や頭痛、血栓傾向)の発現リスクがより高い傾向があります。アフターピル(緊急避妊薬)は高用量のホルモンを単回服用するため、一時的な強い吐き気や頭痛、倦怠感などが副作用として出る場合があります。いずれのピルも医師の指示に従い正しく服用することで安全性は概ね確保されていますが、少しでも異常を感じた場合はすみやかに医療機関へ相談してください。特に足の痛みやむくみ、息切れ、胸痛など血栓症を疑う症状が出現した場合は緊急の対応が必要です。
使用できない方(禁忌)
以下のいずれかに該当する方は、基本的にピルの使用が禁忌または慎重投与とされています。
35歳以上で大量喫煙者(1日あたり15本以上の喫煙習慣がある方)
血栓症の既往がある方、またはリスクが高い方(例:高度肥満、高血圧、糖尿病で血管合併症がある方など)
心臓病や脳血管障害のある方、重度の高血圧症の方
重度の肝障害がある方(ホルモン代謝に影響するため)
エストロゲン依存性腫瘍(乳がん、子宮体がんなど)のある方
妊娠中または妊娠の可能性がある方(そもそも服用の必要がありません)
授乳中の方(ミニピルを除き、母乳分泌への影響や乳児への影響が懸念されるため)
偏頭痛持ちで前兆(オーラ)のある方(脳卒中リスクのため)
※この他にも細かな禁忌事項があります。医師が問診・検査の上で適否を判断します。ミニピルはエストロゲンを含まないため血栓症リスクが低く上記の一部に該当する方でも使用可能な場合がありますが、それでも医師の監督下で慎重に評価する必要があります。
入手経路
国内承認されているピル(低用量ピル、ヤーズなど超低用量ピル、プラノバール等)は、医療機関を通じて国内の正規流通ルートで入手しています。製薬会社から卸業者を経てクリニックに供給される医薬品を使用しておりますので、品質が保証された正規品です。国内未承認の薬剤(例えば従来の未承認ミニピルやエラ緊急避妊薬など)を用いる場合は、医師が厚生労働省の定める手続きに則り個人輸入により入手しています。具体的には、海外の信頼できる製薬企業の製品を、医療機関向けの輸入代行業者等を通じて調達し、安全性情報を確認した上で患者様に提供します。国内未承認薬を使用する際には、海外での承認状況や使用実績、副作用情報についても患者様に説明し、同意を得てから処方しています。アフターピルのレボノルゲストレル錠(ノルレボ®)は産婦人科等で医師の処方箋により入手できます。
当院の方針
ピルの処方は自由診療(公的医療保険適用外)となります。当院の提供するピル治療は、医療広告ガイドラインに沿った情報開示を行い、広告可能事項の限定解除要件を満たしています(治療内容・費用・主なリスク等の明示)。
効果や副作用について十分説明を行った上で処方しております。
2. ED・早漏治療薬
使用目的と概要
ED(勃起不全)治療薬および早漏(早発射精)治療薬は、男性の性機能の悩みに対処する自由診療薬です。ED治療薬は陰茎への血流を改善し勃起を促す効果があり、適切な性的刺激と併用することで性交時に十分な勃起を得られない状態を改善します。一方、早漏治療薬は射精までの時間を延ばす効果を持ち、必要に応じて服用することで性交の持続時間を向上させます。いずれも性機能改善を目的とする薬剤であり、治療効果が期待できますが効果の現れ方には個人差があります。根本的な治療というより症状を一時的に改善・コントロールする対症療法的なお薬であり、継続して悩みを軽減するためには必要なタイミングで服用を続けることになります(医師の指示に従ってください)。
国内承認状況
ED治療薬(PDE5阻害薬)は複数の有効成分が国内承認されています。代表的なものにシルデナフィル(商品名「バイアグラ®」)、バルデナフィル(「レビトラ®」)、タダラフィル(「シアリス®」)があります。バイアグラは日本で1999年に承認され、ED治療薬として広く普及しました。現在これらの薬剤には国内製造のジェネリック医薬品も存在し、国内承認済みの薬剤として入手可能です。ED治療薬はいずれも医師の処方が必要な医療用医薬品であり、国内承認薬は安心して使用できます。早漏治療薬については、唯一経口薬として効果が確認されているダポキセチン(商品名「プリリジー®」)がありますが、日本国内では未承認です。プリリジー(ダポキセチン)は世界60か国以上で認可されており、多くの国で早漏症の治療に用いられています。日本でも2012年より一部医療機関が厚生労働省の許可を得て輸入し処方を行ってきた経緯があり、現在も国内未承認ながら医師の判断で自由診療として使用されています(後述のとおり適切な情報提供のもと)。このほか、早漏の治療には薬剤以外に行動療法やカウンセリング等もありますが、薬物療法ではダポキセチン以外に正式承認された内服薬はありません。
主な薬剤名と商品名
ED治療薬(PDE5阻害薬):
シルデナフィルクエン酸塩: 「バイアグラ®錠」(先発品)、「シルデナフィル錠」(後発医薬品)
バルデナフィル塩酸塩水和物: 「レビトラ®錠」(先発品)
タダラフィル: 「シアリス®錠」(先発品)、「タダラフィル○○錠」(後発医薬品)
早漏治療薬:
ダポキセチン塩酸塩: 「プリリジー®錠」(海外先発品)※国内未承認
(当院では有効成分が同一の海外ジェネリック医薬品を医師管理下で輸入・処方する場合があります)
副作用・リスク(要医師管理)
ED治療薬の主な副作用には、ほてり(顔の紅潮)、頭痛、鼻づまり、動悸、血圧低下などがあります。これは薬の血管拡張作用によるもので、多くの場合一過性で軽度です。しかし一部の方にはめまいや視覚の変化(青く見える感じ)が出ることも報告されています。稀に重篤な副作用として持続勃起症(長時間勃起が収まらない)が起こる可能性がありますが極めてまれです。絶対に併用禁止なのは硝酸薬(ニトログリセリンなど狭心症の薬)で、これらとED薬を併用すると急激な血圧低下が生じ命に関わる危険があります。その他、降圧剤やα遮断薬との併用時も注意が必要です。早漏治療薬(ダポキセチン)の副作用では、吐き気、めまい、頭痛、下痢などが比較的多く見られます。一時的な血圧低下や失神が起こる例も報告されており、服用後は急に立ち上がらない等の注意が必要です。また、まれにうつ症状や自殺念慮が報告されたことがあるため、精神疾患の既往がある方は慎重に投与する必要があります。ダポキセチンはいわゆるSSRI系の薬剤であり、他の抗うつ薬や一部の薬剤との相互作用にも注意が必要です。いずれの薬剤も必ず医師の指導のもと正しい用法用量で使用してください。
使用できない方(禁忌)
ED治療薬の禁忌:
硝酸剤やNO供与剤を服用中の方(ニトログリセリンなど)‐【重大な禁忌】併用すると重度の低血圧を引き起こすため
重度の心疾患がある方(不安定狭心症、重度心不全など性行為自体を禁止されているような場合)
最近心筋梗塞や脳梗塞を発症した方(一定期間は使用不可)
重度の肝障害のある方(薬の代謝ができない可能性)
低血圧の方(収縮期血圧90mmHg未満など)やコントロール不十分な高血圧の方
網膜色素変性症の方(遺伝性の網膜疾患、PDE5阻害薬により悪化の報告あり)
早漏治療薬(ダポキセチン)の禁忌:
重度の心臓病のある方(心不全、うっ血性心疾患など)
うつ病などでMAO阻害剤や他のSSRI/SNRIを服用中の方(相互作用のため)
抗精神病薬やリチウムを服用中の方(併用注意。禁忌とまではいかないが慎重投与)
肝機能障害が中等度以上の方(血中濃度が上がり副作用リスク増)
てんかん発作既往のある方(閾値変動の可能性)
※上記は主な禁忌条件です。医師が総合的に判断します。また、ダポキセチンは国内未承認のため国内で使用実績が少ないことも踏まえ、処方にあたっては特に慎重に適応を判断します。
入手経路
ED治療薬(バイアグラ、シアリス等)の国内承認品は、正規の医薬品流通ルートで入手しています。製薬メーカー(ファイザー社、バイエル社、イーライリリー社他)から供給される正規品およびそのジェネリック医薬品を使用しております。患者様には医師の処方箋に基づき院内もしくは提携薬局でお渡しします。早漏治療薬(ダポキセチン)は日本では国内未承認医薬品の扱いとなります。当院では厚生労働省への必要な届出を行った上で、海外の製薬企業が製造するダポキセチン製剤を医療機関向け輸入代行業者を通じて個人輸入しています。具体的には、欧米やアジア諸国で承認・流通しているプリリジー錠(またはジェネリック品)を、品質証明書等を確認のうえ輸入し、適切に保管管理しています。未承認医薬品を処方する際には、海外での承認状況や使用者数、副作用報告など最新の情報を日本語で分かりやすく説明し、重大なリスクがまだ十分に解明されていない可能性があることも含めて注意喚起しています。また、国内で同等の承認医薬品が存在しないことを明示し、医薬品副作用被害救済制度の対象外であることもお伝えした上で同意をいただいております。
当院の方針
ED治療薬・早漏治療薬の処方は全て自由診療(保険適用外)です。
当院のウェブサイト上の情報は、医療広告ガイドラインの限定解除要件(自由診療に関する治療内容・費用・リスク等の明示)を満たしています。薬剤の効果や副作用、費用について十分な説明を行い、患者様自身が適切な選択ができるよう情報提供に努めています。
3. 性感染症治療薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬)
使用目的と概要
性感染症(STI: Sexually Transmitted Infections)とは、主に性行為を介して感染する疾患の総称で、代表的なものにクラミジア感染症、淋菌感染症、梅毒、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、HIV感染症などがあります。性感染症治療薬は、原因となる病原体(細菌・真菌・ウイルス)に対応した薬剤を用いて感染症を治療する目的で使用されます。例えば抗菌薬(抗生物質)は細菌性の性感染症(クラミジアや淋菌、梅毒など)に対して、抗真菌薬はカンジダ症(性器カンジダなど真菌性の感染)に対して、抗ウイルス薬はヘルペスウイルス感染症やHIVなどウイルス性疾患に対して用いられます。これらの治療薬は感染症を根本的に治癒させたり症状を緩和させることが目的ですが、感染症により治療期間や方法は異なります。性感染症は適切な薬剤を十分な期間使用することで治癒が期待できますが、確実に治すためには医師の指示通りに治療を完遂する必要があります。不十分な治療は症状の再燃や耐性菌の出現につながるため注意が必要です。
国内承認状況
性感染症の治療に使われる薬剤の多くは国内で承認済みです。以下に主な疾患と薬剤の承認状況を示します。
クラミジア感染症: 第一選択薬はアジスロマイシンで単回高用量服用により治療します。アジスロマイシン錠は国内承認されています。代替としてミノサイクリンやビブラマイシンなども使用します。
淋菌感染症: 抗生剤の耐性化が問題となっていますが、現在はセフトリアキソンの筋注または点滴が第一選択で国内承認されています。経口薬ではビブラマイシンが使われることもあります。
梅毒: ペニシリン系抗生が第一選択です。外来ではミノサイクリンやビブラマイシン経口投与を行うこともあります。
尖圭コンジローマ(HPV感染症): ウイルスそのものを殺す飲み薬はありませんが、病変部位に塗布するイミキモドクリーム(免疫応答修飾剤、商品名「ベセルナクリーム®」)が国内承認されています。
性器ヘルペス: 原因の単純ヘルペスウイルスに対して抗ウイルス薬のアシクロビルなどの経口薬が国内承認されています。これらで症状を緩和・抑制できますが、ウイルスを体内から完全に排除することは難しく再発する場合があります。
カンジダ症(性器カンジダ): 抗真菌薬のオキナゾールはカンジダ膣炎の治療に有効で承認されています。
HIV感染症: 抗HIV薬は多数承認されていますが、HIV治療は専門的領域であり公的支援のもと保険診療で行われます(自由診療ではありません)。HIV陽性が判明した場合、速やかに専門医療機関へご紹介します。なお、HIV予防目的の内服薬(PrEP:エムトリシタビン・テノホビルなどの合剤)は日本では現時点で予防適応は未承認で、必要に応じ医師の判断で自費処方されます。
以上のように、一般的な細菌・真菌・ウイルス感染症に対する治療薬はその多くが国内承認済みです。一部、梅毒治療の筋注薬やHIV予防目的薬など承認外のものもありますが、その場合も医学的に実績ある治療を行います。
主な薬剤名と商品名
クラミジア感染症治療: アジスロマイシン、ミノサイクリン、ビブラマイシン など
淋菌感染症治療: セフトリアキソン、ビブラマイシン など
梅毒治療: ビブラマイシン、ミノサイクリン、アジスロマイシン など
尖圭コンジローマ: ベセルナクリーム
性器ヘルペス: アシクロビル、バラシクロビルなど
性器カンジダ: オキナゾールなど
HIV感染症: 抗HIV薬各種(※専門医療機関での保険診療)
HIV予防内服 (PrEP): エムトリシタビン・テノホビル配合剤(ツルバダ®錠 等)
※国内では予防適応未承認
副作用・リスク(要医師管理)
抗菌薬(抗生物質)の副作用として多いのは、胃腸障害(吐き気、下痢、腹痛)や発疹(薬剤アレルギー)です。マクロライド系のアジスロマイシンでは時に腹部不快感や下痢が起こります。テトラサイクリン系(ミノサイクリン)では吐き気やめまいが生じることがあります。また、抗菌薬全般に言えることですが、人によってアナフィラキシーのような重篤なアレルギー反応が起きる可能性がゼロではありません。ペニシリン系やセフェム系で特に注意です。抗真菌薬のフルコナゾールやイトラコナゾールでは、胃部不快感や肝機能値の変動が見られることがあります。服用期間が長くなる場合は肝機能検査など経過観察が必要です。抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)の副作用では、頭痛やめまい、眠気、吐き気などが報告されています。腎機能の低下した方ではアシクロビルで腎機能悪化が起こり得るため注意が必要です。いずれの薬剤も医師が適切な用量・期間を設定しますので指示通りに服用してください。症状が改善しても自己判断で途中でやめず、指示された期間きちんと飲み切ることが重要です。不十分な服用は感染症が治りきらず再発したり、病原体が薬剤に耐性を持つ原因となります。また、性感染症はパートナーへの感染可能性も考慮し、必要に応じパートナーも同時に治療を受けることが推奨されます。治療期間中は性的接触を控えるなどの配慮も求められます。
使用できない方(禁忌)
各薬剤ごとに禁忌事項がありますが、一般的な注意点を挙げます。抗菌薬では、
重篤なアレルギー歴がある方(特定の抗菌薬でショックを起こしたことがある等)は同系統薬剤は禁忌です。例えばペニシリンアレルギーのある方にペニシリン系や一部セフェム系は避けます。
腎機能が重度に低下している方には腎排泄型の抗菌薬は減量または禁忌となる場合があります。
妊娠中の方には一部禁忌の抗菌薬があります(テトラサイクリン系は胎児への悪影響があるため妊婦禁忌、ニューキノロン系も基本的に妊婦には避けます)。妊娠の可能性がある場合は必ず事前に医師に伝えてください。
抗真菌薬・抗ウイルス薬では、
フルコナゾール等は妊娠中は禁忌です(高容量では催奇形性の報告があるため)。
イトラコナゾールは一部の心不全のある方には禁忌です(陰性変力作用があり心機能に影響するため)。
抗ヘルペスウイルス薬は基本的に禁忌は少ないですが、高度の腎不全では使用できない場合があります。
それぞれの薬剤について詳細な禁忌事項は医師・薬剤師が確認し、該当があれば別の治療法を検討します。自己申告していただきたいことは、これまでに薬で重大な副作用を起こした経験や持病(特に肝臓・腎臓の病気、心疾患、妊娠の有無)などです。
入手経路
性感染症治療に用いる薬剤は、国内承認された医薬品を正規のルートで入手しています。院内処方の場合は当院が医薬品卸会社から直接仕入れた医薬品をお渡しします。品質の確かな医薬品を使用しておりますのでご安心ください。梅毒治療の際に入院が必要な場合や、HIV治療が必要と判明した場合などは、適切な専門医療機関へご紹介し、そちらで治療薬を入手・治療していただくことになります。また、昨今インターネット上で抗生物質などを購入する例がありますが、自己判断で薬を入手・服用することは非常に危険です。症状が似ていても原因が異なる可能性もあり、誤った薬では効果がないばかりか副作用のリスクだけを負うことになります。必ず医師の診断のもと、適切な薬を正規に入手してください。
当院の方針
性感染症の診療・治療は自由診療(保険適用外)で行っております(症状や疾患によっては保険診療の対象となる場合もありますが、その際は適宜ご案内します)。本ページの記載内容は、医療広告ガイドラインに基づき自由診療に係る治療内容・費用・リスク等を十分に記載し、広告可能事項の限定解除要件を満たした情報となっています。患者様に正確な情報を提供し、安心して治療を受けていただけるよう努めています。
4. ダイエット治療薬
使用目的と概要
サクセンダ®(一般名: リラグルチド)は、肥満症の治療を目的とした自己注射式の治療薬です。GLP-1受容体作動薬と呼ばれる糖尿病治療薬の一種ですが、高用量では食欲抑制と体重減少効果が期待できることから肥満治療(メディカルダイエット)に応用されています。サクセンダは1日1回、ペン型の自己注射器で皮下に投与します。作用機序としては、食欲を抑制し、摂取カロリーを減らす効果があります。具体的には、満腹中枢を刺激して空腹感を感じにくくし、また胃の運動を緩やかにして食物の消化・吸収をゆっくりにするため少量の食事で満足しやすくなります。その結果、適切な食事療法・運動療法と併用することで体重減少を促します。海外の臨床試験では、サクセンダ投与群でプラセボ群より有意な減量効果が確認されており、肥満治療薬として一定のエビデンスがあります。ただし減量効果には個人差があり、また薬に頼るだけでなく食事・生活習慣の改善も並行して行うことが成功の鍵となります。
国内承認状況
サクセンダ(リラグルチド高用量)は日本国内では肥満症治療薬として未承認です。リラグルチド自体は糖尿病治療薬「ビクトーザ®」として1日最大1.8mgまでの用量で厚生労働省に承認されています。しかし肥満症に対する3.0mgの高用量製剤であるサクセンダは、2025年1月現在、日本では医薬品医療機器等法上の承認を取得していません。一方、米国FDAでは2014年に肥満治療薬として承認され、欧州でも2015年に承認されるなど、世界的には40か国以上で肥満症治療に使われている実績があります。日本で承認された同成分・同等効果の医薬品は他に存在せず、現在のところ肥満治療目的で公式に使用できる内服・注射薬はありません
(医師の裁量で糖尿病薬を適応外で用いるケースはあります)。そのため、サクセンダによる治療は自由診療であり、医師の判断で未承認薬を用いる形となります。本治療を受ける患者様には未承認であること、そして医薬品副作用被害救済制度の対象外であることを事前に説明しております。
主な薬剤名と商品名
サクセンダ18mg製剤: (Novo Nordisk社の製品。国内未承認)
参考: リラグルチド1.8mg製剤(糖尿病薬): 「ビクトーザ®皮下注」※こちらは国内承認済(2型糖尿病適応)
※この他、同系統の肥満症治療薬として週1回注射のセマグルチド(商品名:Wegovy®)が米国で承認されていますが、日本では未承認です。現時点で当院では扱っておりません。
副作用・リスク(要医師管理)
サクセンダ(リラグルチド)の主な副作用は消化器症状です。多くの患者様が悪心(吐き気)を訴えます。その他、嘔吐、下痢または便秘、腹部の膨満感や胃部不快感などが見られることがあります。これらの症状は投与初期に出やすく、徐々に体が慣れることで軽減する場合があります。対策として、開始用量を少なめにして段階的に増量することで副作用を和らげる工夫をします。まれに報告されている重篤な副作用として膵炎があります。急性膵炎を起こすと激しい腹痛や嘔吐が出現しますので、そのような症状が出た場合は直ちに受診してください。また動物実験で甲状腺C細胞腫瘍の発生が報告されたことから、ヒトにおける長期の甲状腺腫瘍リスクは不明ですが注意喚起されています(ヒトでの明確な因果関係は確認されていません)。このため甲状腺に腫瘤がある方や甲状腺のがんの家族歴がある方は慎重に適応を検討します。低血糖は単独療法では起こりにくい薬ですが、他の糖尿病薬と併用中の場合などは血糖降下による低血糖症状(冷や汗、手指の震え、意識もうろう等)に注意してください。そのほか、注射部位の発赤・硬結、頭痛、倦怠感、動悸などが副作用として報告されています。サクセンダは比較的新しい薬剤であり、重大な副作用がまだ明らかになっていない可能性もあります。治療中は定期的に経過観察を行い、安全に十分配慮します。
使用できない方(禁忌)
以下に該当する方は原則として本剤を使用できません(禁忌)。
妊娠中・授乳中の方(胎児や乳児への安全性が確立していないため)
重度の消化管障害がある方(胃の運動を遅らせる作用があるため、重度の胃腸病には不向き)
膵炎の既往がある方(膵炎リスクのため原則禁忌)
甲状腺の髄様癌の本人・家族歴がある方(動物試験での甲状腺C細胞腫瘍発生との関連から)
重篤な腎障害や肝障害のある方(薬物の代謝・排泄に問題があるため慎重投与)
18歳未満の未成年者(肥満症に対する有効性・安全性が未確立)
また、現在他の肥満症治療薬を服用中の方や、重度のうつ病などがある方は慎重な判断が必要です。適応については医師が詳細に問診・診察した上で決定いたします。
入手経路
サクセンダは国内未承認のため、医師が個人輸入により入手しています。具体的には、製造販売元であるデンマークのノボノルディスク社をはじめ、海外で正式に流通しているサクセンダ製剤を信頼できるルートで輸入しています。厚生労働省の定める医薬品輸入規程に則り、関東信越厚生局に必要書類を提出の上で輸入しております。輸入時には製品のロットごとの品質証明・分析証明を確認し、適切な温度管理下で保管しています。なお、サクセンダと同成分のビクトーザ(国内承認薬)を肥満症に適応外処方する方法もありますが、減量目的で最大3.0mgまで増量する場合は結局未承認用量となるため、当院では正規のサクセンダ製剤を用いて治療します。未承認薬の使用にあたっては、患者様に対し海外での承認状況、国内未承認である旨、代替となる国内承認医薬品が無いこと、そして医薬品副作用被害救済制度の対象外であることを説明しています。費用についても全額自己負担となります。
当院の方針
サクセンダによるGLP-1ダイエット治療は自由診療です。当院では医療広告ガイドラインに従い、当該自由診療について通常必要とされる治療内容・期間・費用・リスク等の情報を十分に開示しております。本ページの記載は限定解除要件を満たしており、安全で適切な選択につながる情報提供を心がけています。治療開始前には必ず医師が診察・検査を行い、適応を確認の上で詳しく説明し、ご納得いただいた場合に治療を行っています。効果を保証するものではありませんが、医師の指導のもとで正しく使用すれば減量が期待できる新しい治療法です。
5. AGA治療薬
使用目的と概要
AGA治療薬とは、男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia)の進行を抑えたり、発毛を促進する目的で使用される薬剤です。AGAは主に男性ホルモンに起因する髪の毛の薄毛・脱毛症で、額の生え際や頭頂部の髪が徐々に細く短くなっていくのが特徴です。AGA治療薬には内服薬と外用薬がありますが、ここでは主に内服薬(飲み薬)について説明します。代表的なAGA内服治療薬にはフィナステリドとデュタステリドがあります。これらは5α還元酵素阻害薬という種類で、脱毛の原因となるジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンの産生を抑制することで抜け毛を減らし、毛周期を正常化させます。その結果、細かった毛髪が太く長く成長しやすくなり、発毛・育毛効果が期待できます。個人差はありますが、一般に6か月以上の継続内服で毛量の維持・増加効果が現れるとされています。ただしAGAの進行を完全に止めたり永久に治すものではないため、効果を維持するには長期的な治療継続が必要です。また、外用薬のミノキシジル(頭皮に塗布する薬剤。代表商品:リアップ®)もAGA治療の基本薬として広く使われています。ミノキシジルは血流改善などを通じて発毛を促進します。最近ではミノキシジルの内服(低用量ミノキシジルタブレット)を処方することもありますが、こちらは国内未承認であり注意が必要な治療です。AGA治療薬はいずれも自由診療で保険は効きません。
国内承認状況
AGA治療薬の中で、フィナステリド(プロペシア®)は日本で2005年に男性型脱毛症の治療薬として承認されました。現在では国内で複数のジェネリック医薬品(「フィナステリド錠」など)も承認され、広く処方されています。デュタステリドももともと前立腺肥大症治療薬(アボルブ®)として承認されていましたが、2015年に男性型脱毛症への効果が認められ、AGA治療薬「ザガーロ®」として承認されています。これもジェネリック(デュタステリド○○カプセル)が存在します。ミノキシジル外用については1999年に「リアップ®」(大正製薬)が一般用医薬品(第1類医薬品)として承認され、市販されています(女性用は濃度2%、男性用は5%まで)。医療用としても「ザガーロ®ローション」(デュタステリド外用)など新しい外用薬が承認されつつあります。ミノキシジル内服(いわゆるミノタブ)は、発毛効果があることは知られていますが高血圧治療薬として承認された経緯しかなく、脱毛症に対しては国内未承認の適応外使用となります。そのため当院では内服ミノキシジルは安全面を考慮し通常は処方していません(どうしても希望される場合はリスクを説明の上で医師の判断により検討します)。以上のように、主要なAGA治療薬(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル外用)は国内承認済みであり、安心して使用いただけます。
主な薬剤名と商品名
フィナステリド(5α還元酵素II型阻害薬): 「プロペシア®錠」(先発品、MSD社)、「フィナステリド錠」(後発品各社)
デュタステリド(5α還元酵素I・II型阻害薬): 「ザガーロ®カプセル」(先発品、GSK社)、「デュタステリドカプセル」(後発品)
ミノキシジル外用(発毛刺激薬): 「リアップ®」(OTC医薬品、大正製薬)※一般名ミノキシジル5%液
ミノキシジル内服: (※国内未承認:海外ではLoniten®等。発毛目的では適応外)
副作用・リスク(要医師管理)
フィナステリドやデュタステリドの主な副作用は性機能に関する症状です。具体的には性欲減退、勃起機能の低下、射精量の減少などが報告されています。頻度は高くありませんが、こうした症状が出る場合があります。またごく稀に、服用を中止した後もしばらく性機能低下が持続するとの報告もあります(いわゆるPost-Finasteride Syndromeと呼ばれるものですが、因果関係は明確ではありません)。その他の副作用としては、抑うつ症状(気分の落ち込み)やめまい、肝機能値の上昇が指摘されることがあります。しかしこれらは頻度的には少なく、多くの方は副作用なく継続できています。女性に対してはこれらの薬は原則使用しません(禁忌、後述)ので、女性に副作用が及ぶことは通常ありません。ミノキシジル外用の副作用は局所のかぶれ、かゆみ、発赤などの皮膚症状です。まれに全身に作用が及ぶと多毛(体毛が濃くなる)が起こることがあります。ミノキシジル内服の場合、副作用として血圧低下、頻脈、むくみ、めまい、心悸亢進などが出る可能性があり、本来高血圧治療薬であるため循環器系への影響が強く出るおそれがあります。そのため内服は医師の厳重な管理下でも慎重を要します。AGA治療薬は基本的に長期間継続する治療なので、定期的に経過と副作用チェックを行いながら進めます。不安な症状があればすぐご相談ください。
使用できない方(禁忌)
フィナステリド・デュタステリドの禁忌:
女性および小児(これらの薬は男性型脱毛症にのみ適応。女性や未成年者には処方しません。特に妊娠中の女性は触れることも禁止されています。有効成分が皮膚からわずかでも吸収され胎児(男児)の生殖器発育に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
重度の肝機能障害がある男性(薬の代謝ができない可能性)
有効成分に対し過敏症(アレルギー)の既往がある方
ミノキシジル外用薬の禁忌:
頭皮に傷や炎症がある部位(頭皮疾患がある場合はまず治療優先)
ミノキシジルやアルコール、プロピレングリコールに対するアレルギーがある方
ミノキシジル内服薬の禁忌(高血圧薬としての禁忌を含む):
重篤な心疾患のある方(心不全、狭心症など)
低血圧の方(さらに血圧が下がるリスク)
妊娠中・授乳中の方(適応がないため)
AGA治療薬は基本的に健康成人男性向けの薬剤です。女性や子どもには使用禁止であり、取り扱いにも注意が必要です。特に妊婦さんが誤って触れることのないよう、家族に妊娠中の方がいる場合は薬の保管にもご注意ください。処方を受ける際に、妊娠の可能性のあるパートナーがいる場合などは医師にお知らせください。女性の薄毛治療にはミノキシジル外用やパントガール®(女性向け内服薬、サプリメント)など別のアプローチを検討します。
入手経路
フィナステリド(プロペシア等)およびデュタステリド(ザガーロ等)は、国内承認品を製薬メーカー(MSD社、GSK社)から正規に仕入れています。後発医薬品を扱う場合も国内の信頼できる製薬会社の製品を使用します。院内処方にてお渡しする場合、正規ルートで入荷した未開封の医薬品をお渡ししています。ミノキシジル外用薬については市販薬を患者様ご自身で購入いただく場合もありますが、医療機関で処方する際は医療用の外用剤(薬局で調剤するミノキシジル外用液など)を処方することもできます。当院で扱うミノキシジル外用調剤も国内原薬を用いて薬剤師が調製する正規品です。ミノキシジル内服をもし処方する場合は、国内未承認のため海外から原薬または製剤を取り寄せる必要があります。その際は医師が個人輸入の手続きを行います。ただし前述の通り副作用リスクから当院では原則推奨しておりません。AGA治療薬は巷でも個人輸入代行サイト等で入手できてしまう状況にありますが、偽造薬が非常に多い分野でもあります。実際に有効成分が含有されていなかったり、異物が混入した粗悪品も報告されています。安全・確実に治療効果を得るためにも、医療機関で正規品を入手することが重要です。
当院の方針
AGA治療は自由診療(保険適用外)です。当院では治療薬の効果や副作用、費用について十分に説明し、患者様の同意を得た上で処方を行っています。本ページの情報は医療広告ガイドラインの規定に則り、自由診療に関する広告の限定解除要件(治療内容・費用・副作用リスク等の明示)を満たす形で提供しています。治療効果には個人差がありますが、専門医の管理のもと安全に配慮しながら適切な治療を進めてまいります。
6. 美容内服薬
使用目的と概要
美容内服薬とは、皮膚のシミ・そばかすの改善、美白、ニキビ改善、アンチエイジングなど、美容上のお悩みに対して用いられる内服薬の総称です。美容クリニックでは、美容点滴や外用薬と並んで、体の内側から美容効果をサポートする目的で各種ビタミン剤や抗酸化剤、抗炎症剤などの飲み薬を処方することがあります。代表的な美容内服薬として、トラネキサム酸(シミ・肝斑〈かんぱん〉の改善目的)、ビタミンC(美白や抗酸化)、ビタミンE(血行促進や抗酸化)、グルタチオン(解毒作用や美白補助)などが挙げられます。これらは医療用医薬品として本来別の適応症で承認されていますが、美容目的で自由診療として処方されるケースが一般的です。例えば肝斑(かんぱん)という女性の頬の両側に現れるシミに対して、トラネキサム酸内服が有効な場合があります。トラネキサム酸は本来、止血剤や抗炎症剤として承認されていますが、肝斑治療への有効性が経験的に知られており、適応外処方ながら美容皮膚科で広く用いられています。また、ビタミンCとビタミンEの併用も色素沈着の改善に寄与するとされ、これらをまとめて美白内服セットとして処方することもあります。さらにニキビや肌荒れに対して抗酸化作用やホルモン調整作用のある薬(例えば漢方薬や低用量ピルなど)を内服することもあります。美容内服薬は飲むスキンケアとも言われ、外からのケアと合わせて内側からもアプローチすることで相乗効果を狙います。即効性は限定的ですが、継続することで緩やかに効果が現れることが期待できます(ただし個人差があります)。
国内承認状況
美容内服に用いられる薬剤は、成分自体は国内承認済みである場合が多いです。ただし、その美容目的(美白効果等)の効能については承認されていないケースがほとんどです。具体的に見てみましょう。
トラネキサム酸: 止血剤・抗炎症剤(商品名: トランサミン®)として承認。適応症は蕁麻疹や咽喉頭炎症、出血傾向の是正などで、肝斑に対する適応はありません(肝斑治療目的での処方は保険適用外)。しかし肝斑治療の第一選択肢として多くの皮膚科・美容クリニックで自由診療処方されています。
ビタミンC(アスコルビン酸): ビタミンC製剤(シナール®配合錠など)は壊血病や脳出血後の紫斑改善などで承認。美容目的(美白やコラーゲン生成促進)は適応外ですが、シミ治療の補助として用いられます。OTCでもハイチオールC®プラスなどビタミンC含有の美白サプリが市販されています(こちらは医薬部外品)。
ビタミンE(トコフェロール): ビタミンE製剤(ユベラ®Nなど)は末梢循環障害の治療などで承認。美容目的では血行促進によるくすみ改善や抗酸化作用狙いで使われますが、適応外使用です。
グルタチオン: 医療用医薬品のタチオン®錠(グルタチオン)は肝機能改善薬として承認。美白効果が注目され、美容目的で内服・点滴されることがありますが適応外です。
プラセンタ(ヒト胎盤エキス): 内服薬ではなく注射薬ですが、ラエンネック®などが肝機能改善薬として承認され美容目的で使用されます(自由診療)。内服プラセンタは医薬品ではなくサプリ扱いとなります。
その他美容サプリ・漢方等: ビタミンB群やL-システイン(ハイチオール®)、漢方薬の当帰芍薬散や桂枝茯苓丸など、美肌に良いとされる処方が使われることもあります(これらは主に保険適用内で別適応症で処方されることも可能)。
このように美容内服薬として使われる医薬品は、国内で成分・製剤自体は承認されていますが、その使用目的が適応外(未承認の効能効果)である場合が多い点に注意が必要です。
主な薬剤名と商品名
トラネキサム酸: 「トランサミン錠250mg/500mg」など
ビタミンC: 「シナール®配合錠」「ハイシー®錠」など(アスコルビン酸製剤)
ビタミンE: 「ユベラN®カプセル」など(d-α-トコフェロールニコチン酸エステル製剤)
グルタチオン: 「タチオン®錠50mg/100mg」
抗酸化サプリメント: ビタミンACE含有各種製剤、コエンザイムQ10、プラセンタ内服剤(各種サプリ扱い) etc.
漢方薬: 当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、十味敗毒湯 など(肌質改善やホルモンバランス調整目的で用いることがあります)
副作用・リスク(要医師管理)
トラネキサム酸は比較的副作用の少ない薬ですが、ごくまれに発疹、胃の不快感、吐き気、下痢などが起こることがあります。長期連用する場合、血栓のリスクに注意が必要です。特に血栓症の既往がある方や、ピルとの併用などでリスクが高まる場合は注意深く経過をみます(重大な副作用は極めて稀です)。ビタミンCは高用量を長期間摂取すると、稀に腎結石ができやすくなる可能性がありますが、通常処方量では問題ありません。一時的に胃がむかつく程度のことはあります。ビタミンEも安全性は高いですが、高用量投与で下痢や腹痛を感じることがあります。グルタチオンは副作用はほとんどありませんが、稀に発疹などアレルギー症状が報告されています。サプリメント類も過剰摂取は好ましくなく、適切な範囲で用います。漢方薬も体質によっては胃部不快や下痢など起こることがあります。総じて美容内服薬は重篤な副作用は少ないと考えられますが、医師の管理下で適切な量を守って使用することが大切です。万一体に合わない症状が出た場合は中止してご相談ください。
使用できない方(禁忌)
トラネキサム酸禁忌: 血栓傾向のある方(抗凝固療法中の方など)は禁忌です。また、腎不全のある方はトラネキサム酸の排泄遅延により慎重投与となります。
ビタミンC禁忌: 特に明確な禁忌はありませんが、腎結石のある方は高容量投与を避けます。
ビタミンE禁忌: 特段の禁忌はありません。
グルタチオン禁忌: 特段の禁忌はありません。
漢方薬禁忌: 処方により異なりますが、例えば桂枝茯苓丸は妊娠中禁忌など、一部条件があります。
※妊娠中・授乳中の美容目的薬の使用は基本的にお勧めできません。安全性が確立していないためです。妊娠中はシミが出やすい時期ですが、内服での治療は控え、産後落ち着いてから開始するようにしています。
入手経路
美容内服薬として使用する薬剤は、医療用医薬品については正規のルートで院内に在庫しています。トラネキサム酸錠やシナール配合錠、ユベラNカプセル、タチオン錠など、いずれも国内製薬メーカー(トランサミンは第一三共、シナール・ユベラはエーザイ、タチオンは田辺三菱製薬 など)の製品を卸会社から仕入れております。必要に応じて院内処方でお渡しします。また、L-システインやビタミンCの市販薬を患者様にご案内する場合もあります(薬局で購入可能なものとして)。プラセンタ内服などサプリメント類は、医療機関専売のものを取り寄せることも可能です。海外製のサプリメントや未承認成分については、安全性確認が十分でないため当院では推奨していません。例えば一部で謳われるような強力な美白成分の輸入サプリ等は成分不明なものもあるため注意が必要です。必ず信頼できる成分・メーカーのものを使用することが大前提です。なお、美容内服薬の効果は緩やかでサポート的な位置づけですので、「必ず美白できる」などの過度な期待は禁物です。その点も含め、医師・スタッフより現実的な効果見込みを説明した上で処方いたします。
当院の方針
美容内服薬の処方・販売は自由診療となります。当院では、これらの内服療法について効果やリスクを正しくご理解いただくために、医療広告ガイドラインで求められる限定解除要件(未承認医薬品等である場合の明示、通常必要とされる治療内容・費用・リスクの説明等)を満たした情報提供を行っています。本ページでも、各薬剤の目的や副作用等を網羅的に記載しております。治療効果には個人差がありますので、継続利用による徐々の改善を目指す形になります。また、内服薬だけに頼らず、生活習慣の改善や外用ケアとの併用など包括的な美容治療を提案いたします。安全第一で、美しく健康なお肌づくりをサポートいたします。