監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

ED(勃起障害)とは?インポテンツとの違い

ED(勃起障害)とは?

ED(勃起障害)とは、医学的には「満足のいく性行為を行うために十分な勃起が得られない、または維持できない状態」が持続または反復することと定義されています。

以前は「インポテンツ(インポ)」という言葉が一般的に使われていましたが、この言葉には性的な不能者といった否定的なニュアンスや曖昧さが含まれるため、現在では医学的な用語として「ED(Erectile Dysfunction)」が用いられるようになりました。

EDは、単に勃起しない状態だけを指すのではなく、勃起するまでに時間がかかる、硬さが足りない、勃起を維持できないといった状態も含まれます

加齢に伴って起こりやすくなるイメージがあるかもしれませんが、実際には生活習慣の乱れ、精神的なストレス、あるいは何らかの病気など、様々な要因が複合的に絡み合って発症することが分かっています。
ご自身だけで悩まず、正しい知識を得ることが大切です。

なお、日本では40歳以上の男性のおよそ3人に1人がEDに該当すると推定されており、約1,130万人もの男性が何らかのED症状を抱えていると報告されています。

また世界規模では、年齢と共にEDの頻度が増加する傾向が指摘され、2025年には全世界で3億人以上の男性がEDを経験すると予測する研究もあります。

勃起しない原因は何?EDの主な原因とメカニズム

EDの基本的なメカニズム

なぜED(勃起不全)は起こるのでしょうか。加齢によるものと考えているかもしれませんが、それだけが原因ではありません。

勃起という現象は、脳からの指令が神経を通り、陰茎の血管が拡張して血液が流れ込むという、神経、血管、そしてホルモンなどが関わる非常に複雑なプロセスを経て起こります。

そのため、これらのいずれかの機能に問題が生じると、十分な勃起が得られにくくなるのです。

ここでは、EDを引き起こす主な原因とそのメカニズムについて、少し詳しく見ていきましょう。
実際には、複数の要因が組み合わさってEDを引き起こしているケースも少なくありません。

EDの基本的なメカニズムとは?

まず、勃起がどのようにして起こるのか、基本的な仕組みを理解することが大切です。

性的興奮を感じると、脳から神経を通じて信号が送られ、陰茎の動脈が拡張します。
これにより、スポンジ状の組織である陰茎海綿体に大量の血液が流れ込みます

同時に、海綿体からの静脈が圧迫されて血液の流出が抑えられることで、陰茎は硬く、大きくなった状態、つまり勃起した状態を維持します。

しかし、この一連の流れのどこかに問題が生じると、EDが起こりやすくなります。

EDの原因は、大きく以下の3つのタイプに分類されることがあります。

  • 血管性ED動脈硬化や高血圧などにより、陰茎への血流が悪くなることで起こります。
  • 神経性ED糖尿病による神経障害や脊髄の損傷などにより、脳からの勃起指令がうまく伝わらなくなることで起こります。
  • 心理的ED: 日常生活のストレスや性行為に対する不安、うつ病などが原因で、精神的な要因が勃起を妨げます。

これらは単独で原因となることもありますが、複数の要因が組み合わさってEDを引き起こしているケースも少なくありません。

血管の問題が引き起こすED(血管性ED)

血管の問題が引き起こすED(血管性ED)

勃起には、陰茎への十分な血液の流れ込みが不可欠です。
そのため、血管の健康状態が悪化していると、EDの直接的な原因となることがあります。

特に注意が必要なのが動脈硬化です。

動脈硬化は、血管の内側の壁にコレステロールなどが溜まってプラークと呼ばれる塊ができ、血管が硬く、狭くなってしまう状態です。

陰茎の血管は心臓や脳の血管に比べて非常に細いため、動脈硬化の影響を早期に受けやすく、EDが全身の動脈硬化や心血管疾患(心臓病や脳卒中など)の初期サインとして現れることもあると考えられています。

「EDは体の血管状態を映す鏡」ともいわれ、40代以降で突然EDを発症した場合は、生活習慣病のチェックが推奨されます。

また、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)といった生活習慣病も、血管に悪影響を与え、EDのリスクを高めることが知られています。

  • 高血圧は、血管に常に高い圧力がかかることで血管を傷つけ、硬くしてしまいます。これにより、勃起に必要な血流が十分に得られなくなることがあります。
  • 糖尿病は、高血糖の状態が続くことで血管だけでなく神経にもダメージを与えます。血管障害による血流低下と神経障害による信号伝達の不具合の両方が、EDの原因となり得ます。
  • 脂質異常症は、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が増えすぎる状態で、血液がドロドロになりやすく、動脈硬化を進行させる要因となります。これも陰茎への血流を悪化させ、EDを引き起こす可能性があります。

当院の経験からも、加齢に伴うEDのご相談では、このような血管性の要因が関係しているケースが多く見られます。

血管の状態はED治療薬の効果にも影響を与えるため、診察時には生活習慣病の有無なども詳しくお伺いしています。

神経の問題が関与するED(神経性ED)

神経の問題が関与するED(神経性ED)

脳からの性的興奮の信号を陰茎に伝える神経の働きも、勃起には欠かせません。
この神経系に何らかの問題が生じると、信号がうまく伝わらず、EDの原因となることがあります。

代表的なものとして、糖尿病性神経障害が挙げられます。

糖尿病によって高血糖の状態が長く続くと、末梢神経がダメージを受け、感覚が鈍くなったり、信号が伝わりにくくなったりします。
これが陰茎の神経に及ぶと、性的刺激を感じても勃起に繋がりにくくなります。

また、事故などによる脊髄損傷や、脳卒中(脳梗塞・脳出血)の後遺症によって、脳からの指令が陰茎まで届かなくなるケースもあります。
骨盤内の手術(前立腺がんや直腸がんなど)で、勃起に関わる神経が損傷した場合も同様です。

その他、パーキンソン病多発性硬化症といった中枢神経系の疾患もEDを引き起こす可能性があります。

さらに、特定の薬剤(降圧薬や抗うつ薬など)の副作用によってもEDが起こる場合があり、喫煙や多量の飲酒、運動不足といった生活習慣が勃起力の低下を招くことも指摘されています。

神経に大きな損傷がある場合は、残念ながらED治療薬を使用しても、期待されるような効果が得られないことがあります。

そのため、原因を特定することが治療方針を決める上で重要になります。

心理的要因が引き起こすED(心理的ED)

心理的要因が引き起こすED(心理的ED)

意外に思われるかもしれませんが、精神的なストレスや不安といった心理的な要因も、EDの大きな原因の一つとなります。

特に若年層から中年層の男性で、身体的な原因が見当たらない場合に多いとされています。

私たちの体は、ストレスを感じると交感神経が優位になります。
交感神経は血管を収縮させる働きがあるため、勃起に必要な陰茎への血流増加を妨げてしまうのです。
仕事や人間関係の悩み、経済的な不安など、日常生活における様々なストレスが、知らず知らずのうちに勃起機能に影響を与えている可能性があります。

また、性行為そのものに対する不安やプレッシャーも、EDを引き起こす要因となります。

「また失敗したらどうしよう」という予期不安が強くなると、それがかえって勃起を困難にし、悪循環に陥ってしまうことがあります。

過去の性行為での失敗体験がトラウマとなり、自信を失ってしまうケースも少なくありません。
パートナーとの関係性の問題や、性行為に対する罪悪感なども影響することがあります。

うつ病や不安障害などの精神疾患を抱えている場合も、性欲そのものが低下したり、気分の落ち込みが勃起機能に影響したりして、EDを併発しやすくなります。

特に、若い方で身体的な原因が見当たらない場合のEDは、このような心理的な要因が強く関わっていることが多いです。

うつ病などの精神疾患が背景にある場合は、まず精神科的な治療を優先する必要があります。

一方で、一時的な不安や過度な緊張が原因であれば、ED治療薬を適切に使用することで自信を取り戻し、症状が改善に向かうケースも多く見られます
自分だけで悩まず、専門家に相談することが解決への第一歩です。

その他の原因(内分泌性・薬剤性・生活習慣)

その他の原因(内分泌性・薬剤性・生活習慣)

その他にも、いくつかEDの要因となるものがあります。

一つはホルモンによる「内分泌性ED」で、男性ホルモン(テストステロン)の低下が、性欲減退とともに勃起力の低下を引き起こすことがあります。
加齢や特定の疾患(下垂体機能低下症など)が原因となる場合があります。

また、「薬剤性ED」とよばれる、特定の薬剤の副作用としてEDが起こることがあります。
降圧薬(特に一部の利尿薬やβ遮断薬)、抗うつ薬、抗精神病薬、抗アンドロゲン薬などが知られています。
服用中の薬がある場合は医師に相談しましょう。

さらに、生活習慣によって生じる場合もあります。

喫煙、過度の飲酒、運動不足、肥満、睡眠不足などは、血管や神経の健康を損ない、EDのリスクを高めます
生活習慣の改善はEDの予防・改善にも繋がります。

EDの診断方法 – セルフチェック

「もしかして自分はEDかもしれない」と感じても、実際に病院を受診するのはためらわれる、という方もいらっしゃるかもしれません。

EDは非常にデリケートな問題であり、誰かに相談しにくいと感じるのも無理はありません。
しかし、EDは適切な診断と治療によって改善が期待できる症状です。

ここでは、ご自身がEDの可能性があるかどうかを判断するための、簡単なセルフチェック方法についてご紹介します。
まずはご自身の状態を客観的に把握してみましょう。

EDの診断基準とは?

そもそも、どのような状態が医学的にEDと診断されるのでしょうか。

EDの定義は、「満足のいく性行為を行うために十分な勃起が得られない、または維持できない状態が持続または繰り返されること」とされています。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、実はご自身が『うまく勃起できなくて困っている』と感じている状態であれば、それはEDと診断できるのです。 

重要なのは、ご本人が性生活において支障を感じているかどうか、という点です。
硬さが十分でない、勃起が維持できない、といった具体的な症状だけでなく、ご自身の満足度が低下していると感じる場合も、EDの可能性があります。

医師による診察では、問診(症状の期間、頻度、状況など)、身体診察、必要に応じて血液検査(血糖値、コレステロール値、ホルモン値など)や血流検査が行われることがあります。(当院では原則的に問診のみでお薬の処方を行っております)

簡単にできるEDセルフチェックリスト

ご自身の勃起の状態をより具体的に把握するために、いくつかのセルフチェック方法があります。
これらは自宅で簡単に行うことができ、EDの可能性を判断する目安となります。

まず試していただきたいのが、勃起の硬さスケール(EHS: Erection Hardness Score)を用いた評価です。

勃起の硬さスケール(EHS: Erection Hardness Score)

簡単にできるEDセルフチェックリスト①

これは、ご自身の勃起時の硬さを以下の4つのグレードに当てはめて評価するシンプルな方法です。

  • グレード4: 完全に硬く、十分な硬さがある状態。
  • グレード3: 性行為は可能だが、完全には硬くない状態。
  • グレード2: 硬さはあるが、挿入するには不十分な状態。
  • グレード1: 陰茎は大きくなるが、硬くはない状態。

この評価で、グレード2以下の状態が続いている場合は、EDの可能性が高いと考えられます。
ご自身の感覚で、どのグレードに当てはまるかを確認してみてください。

もう一つ、国際的に広く用いられている質問票にIIEF-5(国際勃起機能スコア)があります。

 IIEF-5(国際勃起機能スコア ※短縮版)

簡単にできるEDセルフチェックリスト②

これは、過去6ヶ月間におけるご自身の状態について、5つの簡単な質問に答えることでEDの重症度を評価する方法です。

各質問に1点から5点(または0点から5点の場合もある)をつけ、合計点で評価します。

【IIEF-5の質問例】(各質問に点数をつけます)

  • 勃起して、それを維持することに、どのくらいの自信がありましたか?
    (1点: 全くない 〜 5点: 非常に大きい)
  • 性的刺激によって勃起した時、何回挿入可能な硬さになりましたか?
    (1点: 全く、またはほとんどない 〜 5点: ほとんどいつも、またはいつも)
  • 性交中、挿入後に何回勃起を維持できましたか?
    (1点: 全く、またはほとんどない 〜 5点: ほとんどいつも、またはいつも)
  • 性交を終えるまで勃起を維持するのは、どのくらい困難でしたか?
    (1点: 極めて困難 〜 5点: 困難ではない)
  • 性交を試みた時、何回満足できましたか?
    (1点: 全く、またはほとんどない 〜 5点: ほとんどいつも、またはいつも)

各質問への回答(点数)を合計し、その点数によってEDの可能性や重症度を評価します。

【IIEF-5の結果の目安】

  • 22~25点: 正常範囲と考えられます。
  • 17~21点: 軽度のEDの可能性があります。
  • 12~16点: 中等度のEDの可能性があります。
  • 5~11点: 重度のEDの可能性があります。

合計点数が21点以下の場合は、EDの可能性が考えられます。

これらのセルフチェックは、あくまでご自身の状態を知るための目安です。

もしチェックの結果、EDの可能性が考えられる場合や、ご自身の勃起機能について少しでも不安や悩みがある場合は、一人で抱え込まず、一度医療機関に相談してみることを検討してみてください。

専門家である医師に相談することで、原因を特定し、ご自身に合った適切な対処法を見つけることができます。

EDの治療方法について

ED(勃起不全)は治療可能な症状であり、様々な治療法が存在します。

現在、ED治療の第一選択肢は経口のED治療薬(PDE5阻害薬)であり、多くの場合、この薬によって症状の改善が期待できます。

以前は、ED治療を受けるためには必ず医療機関に足を運び、対面で診察を受ける必要がありました。

しかし近年、テクノロジーの進歩により、オンライン診療という新しい選択肢が登場し、ED治療がより身近なものになっています。

オンライン診療を利用すれば、スマートフォンやパソコンを通じて、自宅にいながら医師の診察を受け、必要な薬を処方してもらうことが可能です。

プライバシーを守りながら、時間や場所にとらわれずに治療を開始できるため、「忙しくて病院に行く時間がない」「対面での診察には抵抗がある」といった方々にとって、大きなメリットとなるでしょう。

オンライン診療で受けられるED治療

オンライン診療で受けられるED治療

当院のようなオンライン診療クリニックでは、ED治療に関する専門的な診察と、必要に応じた治療薬の処方を行っています。

オンライン診療で主に処方されるのは、PDE5阻害薬と呼ばれるED治療薬です。
これには、バイアグラ(シルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、ステンドラ(アバナフィル)といった種類の薬剤があります。

これらの薬は、勃起を助ける物質(cGMP)の分解を抑えることで、陰茎への血流を改善し、勃起をサポートする効果が期待できます。

どの薬剤が適しているかは、患者様の健康状態、ライフスタイル、期待する効果などによって異なるため、医師が診察を通じて判断し、適切なものを処方します。

これらのED治療薬は医師の処方が必要な医療用医薬品であり、薬局やドラッグストアでは市販されていません

インターネット等で個人輸入を謳うサイトもありますが、偽造品や粗悪品が多く流通しており、健康被害のリスクがあるため非常に危険です。
必ず医療機関(対面またはオンライン診療)で診察を受け、処方してもらいましょう。

また、EDに悩む方の中には、早漏(PE: Premature Ejaculation)を併発しているケースも少なくありません

早漏とは、挿入前や挿入後すぐに射精してしまう状態を指します。

オンライン診療では、このような早漏のお悩みに対しても、ダポキセチン(商品名:ポゼットなど)という治療薬の処方が可能です。

この薬は、射精に関わる神経伝達物質に作用し、射精までの時間を延長する効果が期待されます。

EDや早漏の悩みは、非常に個人的で話しにくいことかもしれません。

しかし、適切な治療によって多くの場合改善が期待できる症状です。
「歳だから仕方ない」「恥ずかしい」と諦めずに、まずは専門家にご相談ください。

当院プライベートクリニック高田馬場では、ED治療薬を1錠550円から、診察料無料で処方可能です。
オンライン診療ですので、全国どこからでも受診いただけます。

少しでもご心配やご不安があれば、どうぞお気軽に、安心してご相談ください。
専門の医師が丁寧にお話を伺い、あなたに合った治療法をご提案します。

<参考>
日本性機能学会/日本泌尿器科学会 編. ED診療ガイドライン[第3版]. リッチヒルメディカル, 2018. (参照 2025-03-27).
Erectile Dysfunction (ED). Urology Care Foundation (American Urological Association). (参照 2025-03-27). https://www.urologyhealth.org/urologic-conditions/erectile-dysfunction
World Health Organization (WHO). (参照 2025-03-27). https://www.who.int/
オンライン診療に関するホームページ. 厚生労働省. (参照 2025-03-27). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html
ほか