バイアグラが市販されていない理由

「風邪薬のように気軽に買えないのはなぜ?」その答えは、バイアグラが医師の診断と管理のもとで使われるべき「医療用医薬品」だからです。

もし自己判断で使えば、思わぬ健康被害につながる可能性があるのです。
その背景にある理由を、一つずつ解説します。

効果と表裏一体の「副作用」や「禁忌」があるため

効果と表裏一体―バイアグラの副作用と禁忌

バイアグラはEDに対して非常に高い治療効果を持ちますが、それは体に意図的に変化を及ぼす「薬」だからです。

効果の裏側には、専門家による慎重な判断が不可欠なリスクが存在します。

副作用が起こるメカニズム

バイアグラは、血管を広げて血流を良くすることで勃起をサポートします。

この「血管を広げる」作用が、陰茎だけでなく全身に及ぶことで、顔のほてり、頭痛、鼻づまりといった副作用が起こることがあります。

これらは薬が効いている証拠ともいえますが、医師はあなたの健康状態を診察し、これらの副作用が許容範囲内であるか、安全に使えるかを事前に判断する役割を担っています。

命に関わる「併用禁忌薬」との危険な関係

薬には飲み合わせがあり、バイアグラも例外ではありません。

特に、狭心症の治療薬である硝酸薬(ニトログリセリンなど)との併用は禁止されています。
バイアグラと硝酸薬は、どちらも血管を広げる作用を持つため、一緒に服用すると血圧が急激に下がり、命を落とす危険性さえあるのです。

あなたが服用している薬が安全かどうかを判断できるのは、専門的な知識を持つ医師だけです。

バイアグラを服用できない「禁忌」

健康状態によっては、バイアグラの服用自体が危険な場合があります。

例えば、重度の心臓病を抱えている方が服用すれば、心臓に過度な負担がかかります。
コントロールされていない重度の高血圧や低血圧の方、過去6ヶ月以内に脳梗塞や心筋梗塞を経験した方も同様です。

こうした禁忌に当てはまらないかを確認することは、安全な治療の第一歩であり、医師の診察が不可欠なのです。

日本の法律で「医療用医薬品」として厳しく管理されているため

法律で「医療用医薬品」として厳しく管理

日本で流通する医薬品は、その効果とリスクのバランスによって、法律で厳しく分類・管理されています。

「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の違い

医師の診断に基づき、特定の患者のために処方されるのが「医療用医薬品」です。
バイアグラはこちらに属し、高い効果が期待できる一方、副作用などのリスク管理を専門家が行う必要があります。

対して、ドラッグストアなどで購入できるのが「一般用医薬品(OTC医薬品)」です。
これは、比較的リスクが低く、薬剤師からの情報提供のもと、消費者が自己判断で使用できる軽度な症状に対応する薬です。

法律が市販を認めていないという事実

この法律上の分類により、バイアグラは医師の処方箋がなければ販売も譲渡もできません。

したがって、マツモトキヨシやウエルシアといったドラッグストア、Amazonや楽天などの大手通販サイトであっても、正規のバイアグラを販売することは法律で固く禁じられているのです。

個人輸入・通販には「偽造品」という深刻な罠があるため

個人輸入・通販は偽造品の危険あり

「それなら、海外のサイトから…」という考えは、最も危険な落とし穴です。

正規ルートで入手できない(したくない)人々の需要を狙い、インターネット上には偽造品の販売サイトが溢れています。

偽造品はもはや見分けがつかない

製薬会社の調査では、ネットで売られているED治療薬の半数以上が偽造品であったと報告されています。
具体的には、国際性医学会で報告された調査では、インターネットで「Viagra 正規品」と称して売られていた製品の 77 % が偽造だったとされています。

これらは本物のパッケージや錠剤を精巧に模倣しており、専門家でさえ見た目での判別は困難です。

偽造品に潜む本当の危険性

中身がただの偽物(有効成分ゼロ)ならまだしも、有効成分が過剰に含まれていたり、全く関係のない危険な成分(例えば、血糖降下薬や不純物)が混入していたりする事例が後を絶ちません。

健康になるために薬を求めたはずが、逆に深刻な健康被害を被る可能性があるのです。

誰もあなたを守ってくれないという現実

万が一、個人輸入した薬で健康被害が起きても、それは国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外です。
すべてが自己責任となり、高額な治療費も補償も受けられません。

» (厚生労働省)医薬品等を海外から購入しようとされる方へ

あなたの健康を守るため、そして危険な市場に加担しないためにも、安易な個人輸入は絶対にやめてください。

バイアグラを安全に入手する2つの正規ルート

では、どうすれば安全にバイアグラを手に入れられるのでしょうか。日本国内における正規の入手方法は、以下の2つしかありません。

医療機関での対面診療

最もオーソドックスで確実な方法は、医療機関を受診し、医師の診察を直接受けて処方してもらうことです。

どこで受診すれば良いか

ED治療に特化した専門クリニックや泌尿器科、一部の内科でも相談が可能です。

特に私たちのような専門クリニックでは、プライバシーへの配慮が徹底されており、「多くの男性が同じ悩みで来院されている」という環境が、心理的な負担を和らげてくれます。

診察から処方までの流れ

診察は、主に問診が中心です。
あなたの症状や健康状態、服用中の薬などを確認し、安全にバイアグラを処方できるかを判断します。

処方方法は、その場で薬を受け取る「院内処方」と、処方箋を発行してもらい調剤薬局で薬を受け取る「院外処方」があります。

費用の目安

ED治療は保険適用外の自由診療となります。

費用はクリニックによって異なりますが、薬代の他に初診料や再診料が必要な場合があります。

バイアグラの価格相場は1錠あたり1,300円~2,000円程度ですが、詳しくは受診するクリニックにご確認ください。 

オンライン診療

「通院する時間がない」「対面での診察には抵抗がある」という方に、現在最も選ばれているのがオンライン診療です。

オンライン診療の具体的な流れ

  1. まず、スマートフォンやPCから、クリニックの公式サイトで都合の良い日時を予約します
  2. 予約時間になると、医師とビデオ通話が繋がります。画面越しに、対面と同じように丁寧な問診が行われます
  3. 診察後、クレジットカードなどで料金を支払うと、処方された薬がプライバシーに配慮された梱包で自宅などに郵送されます

オンライン診療の利点と注意点

誰にも会わずに診察から薬の受け取りまで完結できるのが最大のメリットです。

ただし、触診などの物理的な検査はできず、薬が手元に届くまで少し時間がかかるという点は理解しておきましょう。

当院では、初診からオンライン診療に対応しております。
スマホ一つで予約から診察、お薬の処方まで完結し、最短で翌日にはご自宅のポストへお薬をお届けします。

「まずは話だけでも聞いてみたい」という方も、お気軽にご相談ください。

バイアグラのジェネリック医薬品も市販では購入不可

ジェネリック医薬品も市販では購入不可

費用を抑えたい方にとって心強いジェネリック医薬品ですが、これもバイアグラ同様、市販では購入できません。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)の仕組み

新薬(先発医薬品)の開発には莫大な費用がかかるため、特許で一定期間その権利が保護されます。

その特許が切れた後、他の製薬会社が同じ有効成分で製造するのがジェネリック医薬品です。
開発コストを大幅に削減できるため、安価な価格で提供できるのです。

先発品(バイアグラ)との違いは価格だけ?

バイアグラのジェネリックである「シルデナフィル錠」は、有効成分、効果、安全性においてバイアグラと全く同等であることが国によって保証されています。

唯一異なる可能性があるのは、錠剤のコーティング剤などの「添加物」ですが、これは治療効果に影響しません。

そして最も重要なことは、ジェネリックもバイアグラと全く同じ「医療用医薬品」であるため、入手には必ず医師の処方が必要だという点です。

市販の精力剤はバイアグラの「代用品」にはならない

ドラッグストアに並ぶ「活力サプリ」や「滋養強壮ドリンク」は、バイアグラの代わりになるのでしょうか。

答えは「No」です。両者は目的も作用も全く異なります。

「治療」と「栄養補給」という根本的な違い

バイアグラの目的は、勃起を妨げる酵素(PDE5)の働きをブロックし、直接的に勃起を「治療」することです。

これは医学的根拠に基づいた明確な作用であり、即効性があります。

一方、市販の精力剤の目的は、あくまで「滋養強壮」や「栄養補給」です。

マカや亜鉛といった成分は、体全体の活力を高めたり、健康維持をサポートしたりしますが、EDを直接治療する効果は証明されていません。
体質改善を目指すものであり、即効性は期待できません。

市販品も「効いた気がする」理由

精力剤を飲んで「何となく効いた気がする」と感じることがあるかもしれません。

それは、栄養補給による体調の改善や、「効くはずだ」という思い込みによるプラセボ効果の可能性があります。

しかし、それは医学的な治療とは全くの別物です。
根本的な解決を目指すなら、専門医のもとで効果が証明された治療薬を選ぶことが賢明です。

バイアグラの市販化がされる可能性がある?

バイアグラの市販化がされる可能性がある?

「将来的には、バイアグラは日本でも市販される日が来るの?」、EDに悩む方が気になるこの点についても回答していきます。

なぜ今、ED治療薬の市販化が議論されているのか

この議論の背景には、国が推進する「セルフメディケーション」の流れや、医療機関への受診をためらう人々を危険な個人輸入から守りたいという狙いがあります。

特に、作用時間が長く比較的副作用がマイルドとされる「シアリス」から検討が始まったのは、自己判断で使う薬としての適性が見込まれたためと考えられます。

市販化への高いハードルと今後の見通し

しかし、実現への道のりは険しいのが現状です。

専門家の間では、「併用禁忌薬や持病の確認を、薬剤師の問診だけで本当に安全に行えるのか」という慎重論が根強くあります。

安全性の確保が最優先されるため、現時点(2025年)でバイアグラの市販化に関する具体的な予定はなく、議論がまとまるにはまだ数年単位の時間が必要と見られています。

ED治療は安全な医療機関で

この記事では、バイアグラの市販に関する皆様の疑問にお答えしてきました。

最も重要なことは、バイアグラを含むED治療薬は、医師の処方箋がなければ入手できない「医療用医薬品」であるということです。

薬局やドラッグストア、通販サイトでは購入できません。
安易な個人輸入は深刻な健康被害を招きます。

安全で確実な治療への道は、医療機関で医師に相談することだけです。

EDは、自信を失わせ、パートナーとの関係にも影を落とす辛い悩みです。
しかし、それは適切な治療によって改善できる症状です。

勇気を出して一歩を踏み出すことで、失いかけていた自信を取り戻すことが可能になります。

通院に抵抗がある方は、プライバシーが完全に守られるオンライン診療から始めてみてはいかがでしょうか。専門医が、あなたの悩みに寄り添います。

著者・監修者:

(プライベートクリニック高田馬場 院長)

順天堂大→東京医療センター→大手美容外科を経て独立。2017年プライベートクリニック高田馬場を開院。全国対応のオンライン診療(ピル・性感染症・ED/AGA)を軸に、美容皮膚科・医療脱毛を中心とした美容医療にも注力。公式LINE登録者40万人超。「より良い医療を、もっと身近に」が信条。日本遠隔医療学会・日本美容皮膚科学会所属。

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