アフターピルの効果は「時間」が命

アフターピルの効果を語る上で、最も重要な要素は「時間」です。
これは紛れもない事実であり、性交渉から服用までの時間が短ければ短いほど、その効果は飛躍的に高まります。
服用時間ごとの具体的な妊娠阻止率
実際の妊娠阻止率の目安を、時間経過に沿って詳しく見ていきましょう。
まず、性交渉から12時間以内に服用できた場合、これが最も効果的なタイミングです。
妊娠阻止率は99.5%と報告されており、ほぼ確実に妊娠を回避できると考えられます。
次に、13時間から24時間以内に服用した場合でも、その確率は98.5%と、依然として極めて高い数値を維持します。
その後、時間は経過するごとに少しずつ確率は下がっていきますが、それでも高い効果は続きます。
25時間から36時間以内では98.2%、37時間から48時間以内では97.4%、そして49時間から60時間以内では96.9%というデータがあります。
そして、一般的にタイムリミットとされる61時間から72時間(3日)以内に服用した場合でも、妊娠阻止率は95.9%と、非常に高い有効性が保たれています。
もし72時間を過ぎてしまっても、諦めるのはまだ早いです。
120時間(5日)以内であれば、妊娠阻止率は約63%と低下はしますが、何もしないより遥かに望まない妊娠の可能性を下げることができます。
なぜ薬で妊娠が防げるのか?その仕組みを詳しく解説

アフターピルは、高用量の黄体ホルモン(女性ホルモンの一種)を体内に取り込むことで、妊娠の成立に必要なプロセスに強制的に介入します。
その働きは、大きく分けて二つあります。
一つ目は「排卵を抑制、または遅延させる作用」です。
もしあなたの体がまだ排卵をしていなければ、アフターピルは排卵そのものを遅らせたり、止めたりします。
卵子がなければ、精子は相手と出会うことができず、受精は起こりません。これが最も強力な作用の一つです。
二つ目は「受精卵の着床を阻害する作用」です。
もしすでに排卵後で、万が一受精してしまっていたとしても、アフターピルは子宮内膜(受精卵が根を下ろす、ふかふかのベッドのようなもの)が増殖するのを抑え、受精卵が着床しにくい状態に変えてしまいます。
ベッドの準備ができていなければ、受精卵はそこで成長を始めることができません。
重要なのは、アフターピルはすでに着床し、成立した妊娠を中断させる「中絶薬」とは全く異なる、ということです。
あくまで妊娠の成立そのものを防ぐお薬であり、だからこそ、着床が完了する前に、一刻も早く服用する必要があるのです。
最新のアフターピルの副作用は「軽度」かつ「一時的」
まず知っておいてほしいのは、現在日本で処方されている主流のアフターピル(レボノルゲストレル製剤)は、副作用が大幅に軽減されている、ということです。
かつて使われていた「ヤッペ法」という古い方法では、服用者の半数、実に50%もの人に吐き気などの強い副作用が現れましたが、現在のアフターピルで同様の吐き気が起こる確率は10%未満です。
そして、もし副作用が出たとしても、そのほとんどは服用後24時間以内には自然におさまる、一過性のものです。
アフターピルの副作用の症状と、それが起こる確率

国内の臨床試験で報告されている、主な副作用の症状と、その発生確率を一つずつ詳しく見ていきましょう。
吐き気(悪心)
アフターピルによる吐き気(悪心)の発生確率は、約9.2%です。
心配される方が最も多い症状ですが、実際に吐き気を感じる人は1割にも満たないのが実情です。軽いムカムカ感で済むことがほとんどで、嘔吐までしてしまうケースはさらに稀です。
あくまで一時的な症状ですが、つらさを感じる場合は、クリニックによっては吐き気止めをセットで処方してくれることもあります。
頭痛
アフターピルによる頭痛の発生確率は、約12.3%です。
副作用の中では比較的報告が多いですが、その多くは普段経験するような軽い頭痛や、低用量ピルの服用初期に見られる頭痛と似た程度のものです。
市販の頭痛薬で十分に対処可能です。
倦怠感・眠気
「生理中の、あの独特な眠気やだるさが、いつもより強く出た感じ」「フワフワとした眠気に襲われた」と表現される方が多い症状です。
これは、高用量の女性ホルモンが体内で作用することで起こる自然な反応であり、薬が体に合わないといった心配は不要です。
日常生活に支障が出るほどの眠気に驚く方もいますが、通常は24時間以内に回復します。
不正出血
アフターピルを服用すると、生理ではない時期に出血が起こることがあります。
これは「消退出血」と呼ばれるもので、薬の作用で一時的に子宮内膜が剥がれ落ちるために起こります。
服用後3日目以降から数週間以内に見られることが多く、避妊に成功した際の一つのサインとも考えられています。
出血の色は、鮮血のこともあれば茶色っぽいこともあり様々で、量は通常の生理より少なく、2日から3日程度で終わることが多いです。ホルモンバランスが一時的に不安定になることで起こる現象です。
下痢
急激なホルモンバランスの変化が胃腸に影響し、お腹がゆるくなることがあります。
ですが、アフターピルの成分は胃や小腸ですぐに吸収されるため、服用から数時間以上経ってからの下痢であれば、薬の効果に影響はありませんのでご安心ください。
安静に一日過ごせばほとんどの場合症状は落ち着きます。
めまい・乳房の痛みなど
その他、体がフワフワするような浮遊感のあるめまいを感じたり、胸が張って痛むといった症状が出たりすることもあります。
体がグラグラ揺れる感じ、立ち上がった瞬間にクラッとする感じなどが出やすく、倦怠感や吐き気と同時に感じる人もいます。
これらもホルモンの影響による一時的なもので、重症化することはほとんどありません。
アフターピルで副作用が出たときの対処法

副作用は我慢するしかない、と思っていませんか。全くそんなことはありません。
ごく簡単な方法で、つらい症状を和らげることができます。
吐き気には「市販の吐き気止め」を迷わず使う
少しでも吐き気を感じて「このままだと吐いてしまうかも」と思ったら、我慢せずに市販の吐き気止め(乗り物酔い止め薬など)を服用してください。
アフターピルの効果に影響を及ぼすことはありません。
ここで最も重要なのは、何としても「服用後2時間以内」の嘔吐を避けることです。
薬の有効成分が体内に完全に吸収される前に吐いてしまうと、避妊に失敗してしまう可能性が非常に高くなります。
吐き気止めを飲んででも、この2時間を乗り切ることが大切です。
万が一2時間以内に嘔吐してしまった場合は、すぐに処方を受けた病院に連絡し、指示に従ってください。
頭痛や腹痛には「普段使っている鎮痛薬」を
つらい頭痛や、生理痛のような下腹部痛には、普段からご自身が使っている市販の鎮痛薬を服用して構いません。
薬の飲み合わせを心配する必要はありません。
強い眠気やだるさには「休息」が一番の薬
もし可能であれば、予定を調整し、横になって体を休めましょう。
特に精神的なストレスや寝不足は、副作用を実際よりも強く感じさせてしまう原因になります。
リラックスして過ごすことを心がけてください。
眠気を覚ますためにコーヒーなどを飲むことも問題ありませんが、胃を刺激しないよう、飲み過ぎには注意しましょう。
特に注意すべき薬や食品について
アフターピルの効果を弱めてしまう可能性があるため、以下のものには注意が必要です。
現在、結核の薬、てんかんの薬(抗けいれん薬)、抗HIV薬、慢性C型肝炎の治療薬などを服用中の方は、医師に必ず申し出てください。
また、サプリメントにも注意が必要です。
特に、セイヨウオトギリソウ(別名:セント・ジョーンズ・ワート)という成分は、アフターピルの効果を著しく下げる可能性があるため、絶対に併用しないでください。
飲み物については、アルコールや炭酸飲料は薬の吸収に、グレープフルーツジュースは薬の代謝に影響を及ぼすと考えられているため、必ず水か白湯で服用するようにしましょう。
アフターピルに関する「3つの大きな誤解」を解く

世の中には、アフターピルに関する根拠のない噂や誤った情報が溢れています。
ここで、その代表的な誤解を、専門家として明確に否定します。
誤解1:「アフターピルを飲むと、将来不妊になる」
「アフターピルを飲むと、将来不妊になる」というのは100%、完全な間違いです。
「これを飲むと、体に悪いものが残って、将来赤ちゃんが欲しくなった時に妊娠できなくなるのではないですか?」このようなご質問もいただきますが、全く心配いりません。
アフターピルが将来の妊娠能力に悪影響を及ぼすことは、医学的に一切報告されていません。
薬の成分は短期間で体外に完全に排出され、あなたの体にダメージを残すことは決してありませんので、どうかご安心ください。
誤解2:「副作用が全くない、魔法のようなアフターピルがある」
残念ながら、副作用の可能性がゼロの薬は、この世に存在しません。
しかし、繰り返しになりますが、現在日本で認可されている「ノルレボ」やそのジェネリック医薬品である「レボノルゲストレル」は、副作用が起こる確率が非常に低く、安全性の高いお薬です。
誤解3:「もしアフターピルが効かずに妊娠したら、赤ちゃんに障害が出る」
万が一、アフターピルを服用したにもかかわらず妊娠が成立した場合でも、薬の成分が胎児の成長に影響を与え、奇形などの原因になることはないとされています。
アフターピル服用後の流れと、避妊成功を確認する方法

アフターピルを飲んだら、あとは落ち着いて体の変化を見守ります。
服用後、数日から3週間以内に「消退出血」と呼ばれる少量の出血があれば、避妊に成功した可能性は非常に高いと考えられます。
しかし、この消退出血は不正出血である可能性もゼロではなく、これだけでは100%確実とは言えません。
本当の意味での避妊成功の最終確認は、「次の生理が普段の予定通りに来ること」です。
もし、生理予定日を1週間以上過ぎても生理が来ない場合は、妊娠検査薬で確認するか、医師に相談してください。
ご自身での判断に迷う場合や、結果が不安な場合は、当院のオンライン診療でご相談いただくことも可能です。
私たちが最後までサポートします。
あなたの不安を、確かな安心へ
ここまで、アフターピルの副作用について、考えられる全ての情報を詳しく解説してきました。
アフターピルは、あなたの未来を守るための、非常に安全で有効な科学的な選択肢です。
効果は時間との勝負であり、とにかく早く行動することが何よりも大切です。
そして、副作用の多くは軽度かつ一時的なもので、正しい知識があれば恐れるに足りません。
将来の妊娠への影響も全くありません。
たった一度の失敗で、望まない結果を一生背負うことのないように。
どうか、一人きりで悩み、インターネットの不確かな情報に振り回されることなく、正しい選択をしてください。
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