まずは落ち着いて。飲み忘れで体に起こりうること

「低用量ピルを飲み忘れた」と気づくと焦ってしまいますが、まずは落ち着いて、なぜ対処が必要なのかを理解しましょう。
ピルを飲み忘れると、体の中では主に2つの変化が起こる可能性があります。
一つ目は、避妊効果の低下です。
低用量ピルは、毎日一定量の女性ホルモンを体に取り入れることで、脳に「妊娠している」と錯覚させ、卵巣をお休み状態にしています。
この働きによって、排卵が抑制され、高い避妊効果が維持されます。
しかし、飲み忘れによってホルモンの供給が途切れると、お休みしていた卵巣が目を覚まし、再び排卵の準備を始めてしまう可能性があるのです。
二つ目は、不正出血です。
ピルによってコントロールされていたホルモンバランスが、飲み忘れによって急に崩れると、子宮内膜が不安定になり、はがれやすくなります。
これが、生理(正しくは消退出血といいます)以外のタイミングで起こる少量の出血、つまり不正出血の原因です。
多くの場合、出血は少量ですぐに収まりますが、飲み忘れが続くと出血量が増えたり、長く続いたりすることもあります。
でも、大丈夫です。
これらのリスクは、飲み忘れに気づいた時点ですぐに正しく対処すれば、最小限に抑えることが可能です。
次の章で、最も大切な「具体的な対処法」を見ていきましょう。
【ケース別】飲み忘れた時間・日数で変わる対処法
ここが一番知りたいポイントだと思います。
ご自身の状況がどれに当てはまるか、確認しながら読み進めてください。
ケース1:24時間以内の飲み忘れ

想定される状況
- 「昨日の夜に飲むはずだったのを、今日の朝思い出した」
- 「いつもは朝だけど、飲み忘れて夜に気づいた」
など、定刻から24時間以内に気づいた、最もよくあるケースです。
対処法
- 気づいた時点ですぐに、飲み忘れていた1錠を服用してください。
- そして、その日の分のピルは、いつも通りの時間に通常通り1錠服用します。
結果的に、その日は合計で2錠飲むことになります。
「2錠も飲んで大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、体に害はありませんのでご安心ください。
避妊効果はどうなっているのか
この時点では、まだ避妊効果はきちんと維持されています。
そのため、追加でコンドームを使うなどの避妊法は基本的に必要ありません。
1日(24時間)以内の飲み忘れであれば、避妊効果はしっかり保たれるので、過度に心配しなくても大丈夫です。
「気づいたときにすぐ1錠、そしていつもの時間に1錠」と、呪文のように覚えておきましょう。
ただし、飲み忘れたのがシートの第1週目(飲み始め)や第3週目(休薬期間の直前)の場合は、ホルモンが不安定になりやすい時期です。
念のため、その後7日間連続で正しく服用できるまでは、コンドームなど他の避妊法を併用すると、より万全で安心です。
ケース2:24時間以上~48時間未満の飲み忘れ

想定される状況
「一昨日と昨日の分、2日続けて飲んでいないことに今日気づいた…」 …など、丸1日以上、2日未満の間隔が空いてしまったケースです。
対処法
- 気づいた時点で、直近に飲み忘れた1錠(昨日分)をすぐに服用してください。 それ以前の飲み忘れた錠剤(一昨日分)は、効果が期待できないため破棄します
- その後は、元のスケジュール通り、1日1錠の服用を再開します
避妊効果はどうなっているのか
残念ながら、低下している可能性が高いです。
なぜなら、ホルモンが供給されない時間が24時間を超えると、卵巣が活動を再開し始めるリスクがあるからです。
そのため、服用を再開してから7日間、連続で正しく飲み続けられるまでは、必ずコンドームを使用するか、性交渉を避けるようにしてください。
7日間きちんと服用を継続できれば、卵巣は再びお休みモードに入り、避妊効果も元に戻ります。
ケース3:48時間以上の飲み忘れ

想定される状況
「気づけば、もう3日以上ピルを飲んでいなかった…」というケースです。
対処法
この場合、一度リセットするのが最も安全で確実です。
- 今飲んでいるシートの服用は、直ちに中止してください。 残っている錠剤はすべて破棄します。中途半端に続けると、ホルモンバランスが乱れ、かえって不正出血などのトラブルにつながる可能性があります
- 一度、出血(生理のような消退出血)が来るのを待ちます。 おそらく数日以内に出血が始まるはずです
- 出血が始まった日を「リセット日(生理1日目)」として、その日から新しいシートのピルを飲み始めてください
避妊効果はどうなっているのか
残念ながら、完全に失われています。
新しいシートを飲み始めてからも、排卵が抑制される確実な状態に戻るまでには、最低でも7日間かかります。
そのため、新しいシートを飲み始めてから7日間連続で服用できるまでは、必ず他の避妊法を併用してください。
偽薬(プラセボ)の飲み忘れ
28錠タイプのピルで、最後の週に飲むホルモン成分の入っていない錠剤(偽薬)を飲み忘れた場合。これは、全く心配いりません。
偽薬は、休薬期間中も飲む習慣を維持するためのものですので、避妊効果には何の影響もありません。忘れた偽薬は捨ててしまい、予定通り新しいシートを開始すればOKです。
ただし、偽薬を飲まないことで休薬期間が8日以上に延びてしまわないように、次のシートの開始日だけはしっかり守ってくださいね。
アフターピルは必要?不安になったときの判断基準

飲み忘れた後の性交渉で、「もしかして妊娠…?」という不安がよぎったとき、緊急避妊薬(アフターピル)を飲むべきか、とても迷いますよね。
当院では、患者さまにこうお伝えしています。
- 原則として、24時間以内の飲み忘れであれば、避妊効果は維持されていますのでアフターピルは必要ありません
- 24時間以上(2錠以上)飲み忘れた後に、避妊具なしの性交渉があった場合は、妊娠の可能性がゼロではないため、アフターピルの服用を検討するべきです
特に、飲み忘れが排卵のリスクを高めやすいシートの第1週目に起こった場合や、3錠以上の飲み忘れがある場合は、妊娠のリスクが相対的に高まります。
また、24時間以上飲み忘れたからといって、すぐに妊娠するわけではありません。
確率は決して高くはないのです。
しかし、それは「ゼロ」ではない、ということです。
「万が一」を避けたい、そのための確実な手段がアフターピルです。
少しでも「どうしよう」と不安な気持ちがあるのなら、それはアフターピルを飲むことを考えて良い、というご自身の心からのサインです。
どうか、そのお気持ちを大切にしてください。
当院では、対面診療はもちろん、オンライン診療でもアフターピルの処方を行っています。
診察後、最短で翌日にはお薬がお手元に届くように手配いたします。
不安なまま時間を過ごすのは、精神的にも辛いものです。
できるだけ早く、私たち専門家にご相談ください。
▼緊急避妊薬(アフターピル)が必要だと感じたら
性交渉から72時間(3日)以内の服用が推奨されます。
時間が経つほど効果は下がりますので、一刻も早く、当院のオンライン診療にご相談ください。
もう忘れない!ピルの飲み忘れを防ぐための5つの工夫

ここまで対処法をお伝えしてきましたが、一番良いのは、やはり「忘れないこと」ですよね。
でも、完璧を目指すと疲れてしまいます。
ここでは、今日からできる簡単な工夫をいくつかご紹介します。
ご自身に合った方法を、一つでも試してみてはいかがでしょうか。
毎日の習慣とセットにする
「朝の歯磨きの後」「夜寝る前のスキンケアの後」など、毎日必ず行う行動とセットにすると、生活リズムに自然と組み込まれて忘れにくくなります。
スマホのアラーム・リマインダーを設定する
最も手軽で効果的な方法です。
毎日決まった時間にアラームが鳴るように設定しましょう。
「ピル!」という直接的な言葉でなく、「お守り」など自分だけが分かる言葉に設定するのも良いですね。
ピルケースをお守りにする
可愛いピルケースに入れて、お財布やポーチに常備しましょう。
外出先や旅行先での「家に忘れてきた!」という事態を防げます。
「飲んだこと」を見える化する
飲んだらピルのシートにチェックを入れたり、カレンダーにシールを貼ったり。
「今日もOK!」と確認できると、達成感もあって続けやすくなります。
信頼できる人に協力をお願いする
もし可能であれば、パートナーやご家族に「今日飲んだ?」と声をかけてもらうのも良い方法です。
一人で抱え込まず、周りを頼るのも大切なことです。
不安なときは、一人で悩まず専門家にご相談ください
低用量ピルの飲み忘れは、けっして珍しいことではありません。
この記事を読んで、まずはご自身の状況と、それに合った正しい対処法がご理解いただけたなら幸いです。
- 24時間以内なら:気づいてすぐ1錠、いつも通りに1錠
- 2日忘れたら:気づいてすぐ1錠飲み、7日間は他の避妊法を併用
- 3日以上忘れたら:服用を中止し、次の生理からリセット
この基本を覚えておけば、ほとんどのケースに落ち着いて対応できます。
それでも、記事を読んでもご自身のケースで判断に迷う場合や、不正出血が長引くなど、いつもと違う症状があって不安な場合は、決して一人で悩まないでください。
私たちプライベートクリニック高田馬場は、ピルの種類のことから低用量ピルの副作用のことまで、ピルに関するあらゆるお悩みや不安に寄り添います。
医師があなたの状況を丁寧にお伺いし、最も適切な対処法を一緒に考えます。
対面でのご相談はもちろん、ご自宅からスマートフォン一つで気軽に相談できるオンライン診療も受け付けております。
あなたの健康と安心のために、ぜひ私たち専門家を頼ってください。
ピルの飲み忘れ、[アフターピル]のご相談、[生理移動ピル]のご希望、その他[生理不順]や[PMS]など婦人科のお悩みまで、どんなことでもお気軽にご相談ください。